第三十三話 世界情報
時は体感時間にして3時間程進み、
ついに女の子が案内する
キャンプの近くまで来た。
道中、
冒険者に遭遇することは無かったが、
スケルトンに遭遇することは何度もあった。
その度に女の子がどのような戦い方を
しているのか見せてもらったり、
数が多い時は俺が助太刀したりした。
戦い方を見せてもらったのは、
先程の冒険者との戦いでは
奇襲をして一気に勝利に持ち込んだため、
人類が戦う時の動きを
よく見ることが出来なかったからである。
今後、また戦う時もあるかも知れないから
と言ったら女の子も了承して見せてくれた。
また、女の子からいくつかの情報を
得ることが出来た。
その情報は大きく分けて3つある。
1つ目はこのダンジョンの位置である。
この世界におけるこのダンジョンの位置は
大陸の最南端に位置しており、
ここは「帝国領内」らしい。
そこから内陸に進むと
大きな谷に挟まれた大砂漠があると言っていた。
それは恐らくものすごく大きなドラゴンが
でてきた谷のことを言っており、
その奥に広がる砂漠のことを
指しているのだろう。
そして2つ目は俺達がいる大陸のことだ。
先程の話でも出てきたが、
ここは島では無い。
今いるこの大陸はラネリア大陸というらしい。
聞いた感じの大陸の形は円形で、
広さは中学の社会の教科書で見た
オーストラリアの面積を2倍したぐらいの
めちゃくちゃ広い面積ということらしい。
だが、具体的な広さはよく分かっておらず、
この面積も本当にそれだけの広さが
あるかと言われたら、
誰も答えられないらしい。
尚、現在人類がこの大陸から出たことは無く、
大陸の外は全て海となっていると
認識されているらしい。
さらに一部の人間からは神の大陸が
あるとか無いとか言われているらしい。
最後にこの近くにある「国」の存在だが、
このダンジョンは先程言った通り
この大陸の最南端であり、
少し北上し、大砂漠の方に行くと
皇帝が治めるルミドレナ帝国があるらしい。
また、帝国がある大砂漠を囲むような形で
緑が豊かなエイドス巨大森林があり
その巨大森林を領土としているのが
エリアドス王国と言う国らしい。
そして今現在、
帝国と戦争が起きるかもしれない
状態にあるらしい。
さらに、
帝国では人間族しか住むことを一般的に
認められておらず、
逆に王国では竜人族と魔人族以外の種族が
住むことを認められているらしい。
戦争が起きるかもしれないと言われているのは、
人間族以外の存在を認めている王国のことが
気に入らない帝国の貴族が、
皇帝の許可を得ずに兵を送ったことが
発端となっているかららしい。
その他にも国はあり、
王国が大陸の最北端の領土を
持っている訳では無いが、
帝国の情報規制や言論規制は厳しく、
他の国のことが書かれている本や情報などが
回らないように徹底されているため、
帝国領内のこの場所では情報が
全く手に入らないらしい。
何故この女の子がこれらのことに
こんなに詳しいのか疑問に思い聞いてみたが、
これくらいは親に教わるものだと言われた。
その他にも聞いたことはあるが、
これらの情報はこれからの俺の行動を
決めるには一番の物だった。
さらに時間が経ちキャンプについた俺達だが、
そのキャンプは洞窟の入り口に位置しており、
微かな光が上から差し込んできた。
この女の子に仲間がいるかもしれないと
思ってさっき聞いてみたが、
どうやら一人でここに入ったらしく
仲間はいないらしい。
それにしても、
いつの間に出口もとい入り口に
到着していたのか…
これまでの洞窟での苦労が思い出されてきた。
俺がキャンプで洞窟の入り口を見て
ボーッとしていると、
女の子が安心したような顔で言った。
「大丈夫ですよ、ここは私しか知らない入り口ですから人が入ってくる事はないです。」
別にそういう事を思っていたのではないのだが、
安全というならば少しくらい
休めそうだなと安心する自分もいた。
そして、俺は女の子に質問をした。
「この入り口はどこに繋がってるの?」
「外は大砂漠の南部に繋がってます。私は帝国から来ましたから。」
俺はいつの間にか大砂漠にいた。
その事実に普通にびっくりしたが、
どうやら嘘はついていないらしい。
しかし、帝国から来たという事実には驚いたな、
人間族以外認めてないんじゃなかったのか。
俺はそのことに関して聞いてみようと思ったが、
やっぱり聞くのはやめた。
恐らく何らかの事情があるんだろう。
それに首を突っ込むほど馬鹿ではない。
「南部というとジャングル?に近かったりする?」
「ああ、デセペル密林ですか。かなり近いですよ、歩いて30分くらいで着きます。」
あのジャングルはデセペル密林っていうのか。
「あ、でも出発するならここで休んでいってくださいね。」
「うん、ありがとう。正直言ってもう動けそうにないからありがたいよ。」
これは素直に嬉しかった。
何しろ何も食べてないし、
寝てもいない。
これはステータスが前より
悲惨な事になっているという自信があった。
ここまで来る道中女の子が
食料に見えたぐらいには腹が減っている。
その度に何度も《飢餓耐性》のLvアップが
鳴り響いたが。
俺はキャンプの近くに座り、
今後のことについて考えた。