第二十七話 キャンプ
「わ、私には名前がないんです…」
女の子はそう言い、俯いてしまった。
名前がないということは
何かしらの事情があるのかもしれない。
俺は、まだこの子以外には
人類に会ったことがない。
そのため、
この女の子に聞きたいことが沢山あった。
だが、ここで質問するのはあまりにも危険だ。
さっきの様なスケルトンがいるような場所に
ずっと居座るわけにはいかない。
かと言って、休めるような場所があるのか?
ここは洞窟の中だぞ?
俺がそう思っていると、
女の子が怖がった顔で俺に質問してきた。
「あ、あなたは…!私をどうするつもりですか!?」
そう言われて気がついた。
俺の姿は魔物そのもの。
このぐらいの女の子では怖がって当然だろう。
しかも魔物が自分を助けたという謎行動と、
何故か人類の言葉を発することが出来るという
あまりにも不可解な特別な条件付き。
それでは疑われて当然である。
なので俺はなるべく不信感を煽らないように
丁寧に、且つ声のトーンに注意して喋った。
「その質問はここでは回答できない。ここは危険だからね。何処かゆっくり会話できる場所をこの近くで知っていたりする?出来ればそこでさっきのことに関して話したいんだけど。」
女の子が今にも質問したそうな顔をすると
渋々、俺の提案に頷いた。
「この近くに私のキャンプがあります…そこなら比較的安全だと思います。」
「じゃあよければそこで話そうか。」
俺も了承する。
しかし、キャンプなんて近くにあるのか。
俺がへえーと思っていると、
女の子が警戒したような顔でこちらを見てくる。
俺は何を警戒しているのか
察して慌てて返す。
「俺は君に危害を加えようなんてしないから安心して。」
「し、信用出来ません!」
だよねぇ。俺でも信用しないもん。
それにしても良くここまで落ち着いてられるな、
俺だったら魔物となんて話したりしないぞ。
ここで立ち往生するのは
とにかく危険極まりないので、
俺は女の子に提案をした。
「じゃあ君が俺を信用出来るまで、もし俺が変な行動をしたように見えたら俺を斬っていいよ。」
「…本当にいいんですね?」
「もちろん。その代わり敵が現れたら俺に倒させてね。」
俺は経験値が欲しいので
そういうことも言ってみた。
「…わかりました。案内します、ついてきてください。」
「ありがとうね。」
俺は礼を言い、
案内してくれる女の子と共に毒沼とは
反対の方向に向かって歩いていった。