第二十二話 前進
俺はゆっくりと目を覚ました。
ここは谷底、毒沼の上である。
はっきりいって、
全く疲れが取れた感じがしない。
むしろ神経をすり減らして疲れた気分だ。
こんなところにずっと居たら、
命がいくつあっても足りない。
俺は落ちないようにヒヤヒヤしながら
上体を起こした。
そして、前へと進み始めた。
…………………………
進み始めて10分ぐらいしただろうか
全く景色が変わらず、
果たしてここから出ることが出来るのか
不安になってきた。
…………………………
進み始めて1時間ぐらいだろうか、
腹が減った。
そして、疲れた。
この同じ景色にはもう飽きた。
…………………………
さらに時がたった。
もうどのくらい時間が経ったのかわからない。
魔法もひねり出しているような感じだ。
いつ尽きるかわからない。
…………………………
………………長すぎる。
ここは一体どの辺なんだろうか。
全く毒沼から抜ける気配がない。
俺はここで死ぬのか?
いつの間にか夜目も効かなくなっている。
既に感覚で足元に魔法を使っている状態だ。
…………………………
お腹すいたなあ。
着かないなあ。
魔法出なくなってきたなあ。
着かないなあ。
体感時間にして一日経っているんじゃないかと
感じていた頃、
流石に魔法が出なくなってきた。
動く気力はもうない。
最後の力を振り絞って
俺は円形の石の足場を作った。
その上で、
回復するかはわからないが
本当に動けないので、
寝た。
ここに来て二度目の睡眠か、
そんなことを思っていると
俺が目指していたと思われる光が現れた。
その光は、
前に見た光よりかなり大きなサイズで
弱い光ではなく、強い光だった。
それを意味するのは、
当初より確実に前進してその光に近づいている
という事実だった。
俺は舞い上がり、
自分が魔法が使いづらくなっているという
事を忘れ、
そのまま無理矢理前進した。
その時の俺は
毒沼から一刻も脱出して、
あの光の元へ行きたいという気持ちが全部で
周りのことなんて全く警戒していなかった。
そして踏み出した右前脚。
何故か踏み出した足に
石化の地面を触ったという感覚が無い。
不思議に思い、
もう少し前足を出してみる。
地面の感覚。
俺の目の前には既に、
石の地面がそこにあったのだ。