第十六話 メーメー。
メー。
俺はそうと決まったら、
とっとと洞窟から出て
大木や谷があった方向とは
別の方向に走り出した。
そして、走り出してから
およそ10分位がたった頃、
俺の前方に平原が見えた。
その平原には恐らく人類が
整備したであろう道があり、
三つ道が別れていた。
一つは俺が来た
ジャングルの中へと続く道。
その他二つは、
それぞれ俺の右と左に広がっており、
丁度三つに別れているところに
木製で今にも壊れそうな看板が立ててあった。
俺はその看板に書いてある言葉を
読もうとしたが、
書いたのが勿論、
日本人なわけもなく
日本語で書かれている訳でも無いため、
全く理解出来なかった。
でも、少なくとも
俺がいたジャングルは
人類によって発見されており、
道を作ることが出来るぐらいには
安全であることがわかった。
そして、この道を辿って右か左に行けば
人類が生存している
町やら国やらに着くことも、
恐らくだが、間違いではないだろう。
まあ行っても殺されるだろうがな。
俺、魔物だし。
さてと、寄り道はこのぐらいにしておこう。
俺の目的は道を見つけることではない。
あくまで食料の確保のために
ここまで走って来たのだ。
俺はこのまま看板を真っ直ぐ通り過ぎるように
道から外れ、再び走り出した。
そして、また走り出してから
10分ほどの時間が経過した頃だろうか、
だだっ広い景色が続いていた
平原の右前方に
少し地面が盛り上がっているところを
見つけた。
俺はその場所に行ってみると、
盛り上がっているところに立った俺の足元は
高さ3mぐらいの崖であることがわかった。
そして、その崖を降りたところには、
羊の頭が付いた亀が沢山いた。
その羊亀達は草むらに隠れて
ムシャムシャと呑気に草を食べていた。
いかにもな食料だった。
食料として頂くため、
まずは、崖から降りてすぐの所に
草むらがあったので、
その草むらに隠れて
羊亀がこちらに
近づいた瞬間を狙って
羊亀の前に飛び出し、
不意をつき
《鑑定》をかけてみた。
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【種族】スモールレッサータートルシープ
【レベル】12/20
【ランク】F
【体力】90/90【魔力】10/10
【状態】驚き
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俺の目の前に表示されたウィンドウは
ここまでの情報しか乗っていなかった。
そして、
俺はこのウィンドウが出現した瞬間に
羊亀からバックステップで離れ、
再び元の草むらに隠れた。
何しろ《鑑定》のスキルレベルが
足りていないせいで、
【物理攻撃力】やら大事な情報が
表示されていないのだ。
もしも羊亀の【物理攻撃力】が高く、
万が一、俺が攻撃されていたら、
死んでいたかもしれない。
こういった考えは戦闘時大いに役に立つ。
これからも常に細心の注意を払っていこう。
突然目の前に飛び出てきた俺にビックリして
冷静さをかいた羊亀。
ものすごくメーメー鳴いてる。
メーメー。メーメー。
ん?
メーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメーメー。
なんだ?やけにうるさいな。
そう思った瞬間、
俺の脳内危険予報が鳴り響いた。
俺はそのまま草むらから横に飛び出し、
直後、堅いものが何かに思いっ切り
ぶつかった音が、
草むらから何十回となった。
最初は何が起きたのか全く分からなかったが、
何が起きたのかを草むらの外から悟った。
最初の羊亀が仲間を呼び、
そのまま仲間全員で草むらを貫通するように
崖に突進して行ったのだ。
草むらに倒れている
羊亀に《鑑定》をしてみると、
全員の【状態】が気絶になっていた。
さて……
この量をどうするかな…
贅沢なことだが、
結構困った俺だった。
メーメー!