第十二話 絶対的強者
ユニーク1200人突破!
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現在の時刻は恐らく7時辺り、
この世界が24時間で回っているかどうかは
俺の知るところではないが、
この世界に来てから
恐らく3日が経過した。
俺の足元には白猪の肉片が
食い散らかされて転がっている。
それをしたのは他の誰でもなく俺だが、
俺には肉片がクラスメイトに
見えていたらしく、
幻覚で見えていた田中の位置には
小さな肉片が放置されていた。
先程のステータスと、
俺の見ていた幻覚について考えると、
飢餓 Ⅱ の状態異常は
かなり危険なものといっていい。
魔力欠乏症 Ⅰ に関しては、
魔力が切れて体がだるくなる程度で
済むと思われるが、
飢餓 Ⅱ は本当に危険だ。
その事を考えると、
今後大事になって来るのは
食料だ。
勿論、ここに転がっている
肉片だけで事足りるなら
《捕食》によって【レベル】も上がるし
それでいいが、
生憎、そこまで残っていない。
飢餓による食い意地で
八割方、既に食べ尽くしてしまった。
食料を集めるには、
魔物が何処に集まりやすいか
魔物が普段何をしているか、
把握する必要がある。
そうでなければ、
闇雲に探しても魔物は見つからないからだ。
幸いな事に、
進化によって狩りはしやすくなったし、
体が大きくなったおかげで
より遠いところにも行くことが可能になった。
なので、とりあえず
飢餓は脱した事だし
魔物の生息地を調べるがてら、
当初、白猪に阻まれて
行くことが出来なかった
水の音の方向に行ってみようと思う。
そうと決まれば移動開始だ。
今はまだ午前中だと思うし、
今から行動すれば、
ここまで戻ってこれるだろう。
俺は洞窟から出て、
白猪を倒したところの大木へと向かった。
大木へと向かう際、
周囲の様子が何かおかしい感じがした。
木々が生命力を吸い取られたように
全体の色が所々、
灰色へと変色している。
それは大木に近づくにつれて、
色が深みを増していった。
そして、
大木のすぐ近くまでくると、
木の色は完全に灰色になり
俺が木に触れてみると、
灰のように崩れ落ちてしまった。
灰は、
風によって何処かへと
運ばれていき、
木があった場所には、
何も残っていなかった。
この事態を引き起こしている
物に勘づきながらも、
俺は気になって
歩みを止めることが出来なかった。
そして、大木の元へとたどり着いた。
そこは以前とは
比べ物にならないぐらいに変化しており、
緑色のシダが生い茂っていた場所は
灰色の土に、
太陽の光は何かに遮られたように
僅かしか届いていなかった。
視界の中央には
光すらも飲み込む黒色の幹、
葉は全て抜け落ちて、
無くなっている大木があった。
最早、白猪が叩き付けられた時のそれとは
別の木と思えるほどに
存在感と威圧感の格と質が違った。
俺はその大木に畏怖しつつも、
今しかチャンスはないと思い、
《鑑定》を使っていた。
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ビッグスティールブラックウッド
【体力】85000/85000
【強度】12000
鑑定不能
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俺は、
目の前に現れた
ウィンドウを見た瞬間、
恐怖の余り、逃げ出した。
あんなのに敵う訳がない。
俺の人間とトカゲとしての本能が
瞬時にそれを理解した。
……『絶対的強者』。
それがあの大木に相応しい称号だ。
同時に理解した事がもう一つ。
恐らくあれが、
このジャングル又はこの付近に
生物があまり存在しない理由だったんだと。
逃げ出した俺が
我に返ったのは、
木の色が緑色に戻った所に着いた頃だった。