第十一話 飢餓
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ここは何処だ……?
柔らかな日差しと、
耳に入ってくる喧騒。
目を開けるとそこには
見慣れた光景。
ここは教室…か。
いつもの昼休みの光景だ。
さっきまで違う場所に居た気がするが、
どうしても思い出せない。
「おーい。司クーン?」
この少しおちゃらけたような声で
俺を呼ぶのは誰だ?
俺は声を出そうとしたが、
何故か何かに喉を潰されたように
声が出ない。
「えぇ…俺だよ俺。た・な・か。」
そう言って、
困ったような顔をしているのか
からかう様な顔をしているのか、
判別が付かない顔をしながら、
俺の席に近づいてくる田中。
田中は左手に提げた、
ビニール袋から何かを取り出した。
「司クーン。これさ、食べる?」
田中が取り出したのは、
いつも完売まで3分と持たない、
購買のメロンパンだった。
「これ、実は司クンの為に
買っておいたんだぜ?」
俺ははっきり言って、
購買のメロンパンに関しては
好きじゃない。
だが、俺の意思と反して動く右手は
既に、メロンパンの袋を捉えていた。
俺は、メロンパンを食べた。
何かがおかしい。
これは本当に購買のメロンパンか?
購買のならこんなに
オイシイ筈が無い。
そう思った瞬間、
なにかに侵食される様に、
頭の中がある思考で埋め尽くされた。
オイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイ
気が付いた時には
俺はメロンパンを食べ終わっていた。
俺は食べてる間
顔すら向けなかった田中に目を向けると、
田中は、ニヤリと顔を歪めていた。
田中を見た瞬間、身体中に悪感が走った。
タベテシマエ。ノコラズ。
また変な思考が頭の中を侵食していく。
教室の人間全員がこちらを向く。
そして大声で顔を歪めながら笑っている。
そうだ、食べちゃえばいいんだ。
俺は、その場に居た人間全員を食い殺した。
彼らは殺されて、
食べられている時も
全員大声で顔を歪めながら
笑っていた。
そして、
彼らの味が口の中で広がる度に、
脳内が染まっていった。
オイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイオイシイ
突然、目の前の景色が
酸をかけられたように溶けていく。
そして、新しい視界が広がる。
目の前には壁。
上には右側から光が漏れている岩の天井。
下には……
食い散らかされた、白猪の肉片。
そこまで来て、
ようやく自分が起こした行動と、
自分が見ていた幻覚について理解した。
俺は急いで「ステータスオープン」と念じた。
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【名前】望月司
【種族】ベビースモールレッサー
インヒューマンリザード
【レベル】7/10
【ランク】F
【体力】20/45【魔力】2/30
【状態】飢餓 Ⅱ 『解除』魔力欠乏症 Ⅰ 『解除』
【物理攻撃力】50
【物理防御力】26
【魔法攻撃力】7
【魔法防御力】6
【状態攻撃力】45
【状態防御力】20
【素早さ】27
【使用可能魔法】
《石化属性:下級三位魔法》
【スキル】《鑑定Lv.6》
《精神耐性Lv.4》UP《絶望耐性Lv.3》
《負荷耐性Lv.6》《石化耐性Lv.2》
《飢餓耐性Lv.3》NEW
《石牙Lv.2》UP《石爪Lv.2》UP
《体当たりLv.1》
《捕食Lv.3》UP《惨殺Lv.4》
《魔力操作Lv.2》NEW《魔力変化Lv.1》NEW
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やっぱりな。
どうやら状態から察するに、
飢餓状態と魔法の長時間の練習による
極度の疲労がきていたらしい。
そしていつの間にスキルを獲得していたんだ。
考えられるのは、練習中だが
集中していたので、全く気が付かなかった。
それにしても…
今、全身がやけに気怠いのは
魔力欠乏症 Ⅰ と言うやつか?
そしてさっきの幻覚は
飢餓 Ⅱ によるものなのか?
いやあれは夢だったのか?
まあどちらにせよ、
今後もこういうことが起こるかもしれない。
空腹を忘れる程集中していたにしても、
何も腹に入れないのは、
今回みたいなことになるかも知れない。
ここは向こうの世界と同じ、
一日三食しっかり食べることにしよう。
この世界にも太陽(仮)があるから、
大体の時間は分かるようだし。
そして今回、
魔力の使いすぎは欠乏症に繋がるということを
身をもって学ぶことが出来たので、
魔力を使う時は残量に注意しながらじゃないと、
使えないなと思った。
どうやら、幸いな事に、
俺が洞窟の入り口付近で倒れていた時、
誰にも襲われなかったらしい。
そう言えば、
俺は魔法の練習している時も
大木のところまで行ったが、
特に強い魔物もいなかった。
もしかしてこのジャングルは
何らかの理由で、
弱い魔物しか居ないのかもしれない。
現に、
これだけ広く生物が存在する
場所に居るのに、
未だに白猪以外、
どんな魔物にも襲われていない。
それはそうと、
今はとりあえずこの状況を
何とかしないといけない。
さてと、これどうするかな…
俺の足元には未だに
ゴロゴロと白猪の肉片が踊っていた。
早くもレベル7ですね。
1章はどんどん進化していくのでよろしくです。