第5話
不定期更新です。
今、椅子のカバーの中に隠れている小動物令嬢ラナです。悪役令嬢時代を覚えてない私は、強気になどなれません。小動物が似合ってます。でも、私……どのくらい残念令嬢だったんだろうか?
「ラナ、シーツの中から出ておいで。お客様に失礼だ」
そう言われても、怖い物は怖い。前世で、男の子達にいじめられた時の事を思い出しました。ブスだ!と言われたり、髪を引っ張られたり物を取られたりしました。不安です。いじめられないかな?もう一度聞く?
「…いじめる?」
シーツから少し顔を出して聞きます。じーっと見られると冷や汗が出てきます。
「「「いじめない!」」」
ほっとしながら、力を抜いていると近くに三人が来ています。
「ひっ!私美味しくないです!」
見ないでください!気が小さいんです。ぷるぷるしながらお願いします。
「本当に違うんだな、悪かったよ」
「前の姿は微塵も感じられない、こうも違うのか不思議だな」
「そうだな。面影さえないようだ」
首を捻りながら三人とも色々また言ってます。どんな事を言われても、本当に覚えてないのでどうにもできませんよ。
「ひとつだけ聞いていいか?今度、キリアンの妹を正妃に迎えるのにランティスの妹を囲っていると、噂になっていて慌ててきたんだが…」
え!王子様に婚約者ー!勇気のある女の人居たんだ。騙されてる?小動物令嬢の私は怖いと思うけど、こんな性格の王子様を好きなんだ。残念な人がいるんですね。
「噂?早いな。彼女は、キリアンに妹の替わりに紹介しようかと思い置いてるんだよ」
身代わり?もしかしたら生贄?嫌ーな予感に小動物令嬢センサーがピクピクします。やっぱり隅っこに移動した方が安全です。
「「「はああーっ⁈キリアンにか!!」」」
椅子の後ろに移動して隠れます。聞いていると何だかまだ知り合いが来そうです。来るのは勝手にですけど、この部屋だけはやめてください。小動物令嬢は心臓が小さいですから衝撃には強くないです。
「今の彼女なら、キリアンの好みに合うだろう。妹を私に盗られると機嫌が悪かったが、他に構う者ができれば私を邪魔するのもやめるだろう」
王子様が物騒な事を話しています。私は防波堤か仕切りにでもされるのですか?
「キリアン対策だったのか、安心したよ。フローリリア姫の友達である妹が、押し掛けて文句を言うと止めるのに大変だったんだ!」
「ははは、すまない。キリアンが鬱陶しかったからね」
ええ〜っ!王子様にも苦手な人がいるんだー!不思議だよね。
「酷い言い草だな、仮にも義兄になる男だろう」
「だから彼女を紹介するんだろう。ふふふ、私に構う暇なんてなくなるさ」
「…キリアンに負けず意地が悪いな」
「姫との仲を、邪魔されてる身としてはこれくらいはさせてもらうよ」
「キリアン達も、こちらに向かって居るだろうから事の顛末を見させてもらうかな」
「皆も人が悪いな。揉め事を見て楽しみたいのか?」
「そんな事はないよ。心配だよ心配!」
「まあいいが、笑える展開になりそうだね。私には予想できるよ。今の彼女なら、キリアンを落としてくれるだろう」
「続きは執務室で話そう。ここは、彼女の部屋だから都合が悪い」
「分かった」
どうやら王子様の、婚約者の義兄が厄介な人らしいです。話の纏まった彼らは、やっと部屋から出て行ってくれる。緊張が解けると、ふにゃふにゃに体がなりそうです。王子様お願いです!私を巻き込むのだけはやめて欲しいと思う現在小動物令嬢ラナでした。