閑話婚約破棄から今までを思い出す、消えたラナの兄ランティスの心情。
ぼちぼち更新してます。名前を間違えてました!お馬鹿ですみません。皆さんの優しい心遣いに感謝です。
引っ越して来たラングランド王国で妹が行方不明になった。罪のない妹が巻き込まれたのだ。フレデリック殿下が謝って来た。訳を聞くとフローリリア王女様に森捨てにされたと聞いている。妹!どこまで運がない!
ラナは私の妹だ。王子を好きすぎて王子の思い人に意地悪をしていたらしい。だがそれは当然の事、婚約者である私の妹を蔑ろにするなど赦せるものか!王家の仕事を一手に引き受けた父も私もぎちぎちだった。
呑気な陛下が仕事をさぼり王子もまともに仕事をしない。上手く隠してる様だったが、そのしわ寄せが我が家に来ていたのにだ!娘の為と王家の仕事を頑張っていた父と私は王子の傲慢な仕打ちに呆然となった。
「父上、大変です!ラナが倒れました!」
「なんだと!どうしてだ!ラナが怪我でもしたのか?大丈夫なのかランティス!」
父上が慌てている、母親を亡くして泣いてる娘に激甘になった。少し我儘で残念なとこは認めるがそれでも可愛い妹だった。
「父上、私が見て来ます。それまでこの書類は片ずけておいてください」
慌てる父上に後を頼み、王宮中央部まで急いで向かった。途中留学時代知り合ったラングランド王国のフレデリック殿下が用事で来ていた。慌てる私を心配して妹の元に一緒にについて来てくれた。場所を教えてくれた幼馴染の騎士に礼をいい焦った私は勢い良くドアを開けた。
「ラナ大丈夫か!」
私達を見て固まったラナがいる。
「…い」
「「「い?」」」
「いじめる?」
ラナか?この可愛い表情とポーズを取ったのが妹!いつも、おーほっほっほーっ!と高笑いしていた妹なのか?ぷるぷる震えながらこちらを見ている。
「いじめる?」
心臓を貫く可愛さだ!小動物の様な感じがいい。血が繋がっていなければ私の妻にできるのに残念だ。
「「「……」」」
「いじめる?」
可愛く聞かれ反射的にそこに居る全員で答えた。
「「「いじめないよ」」」
ほっとした顔の妹から、次の言葉を聞き耳を疑った。
「誰ですか?」
顎が外れる位驚いた。妹は私の事を覚えていなかった。何故だ!どうしてこうなった?父上に知らせなければ!
「覚えてないのか!私は兄だ!」
近くに行き兄であると言うと。
「お兄様?覚えてないです。ここはどこですか?」
頭に特大の岩をぶつけられた気分だ。本当に私の事が分からないようだ。不思議そうにきょろきょろしてる。
「本当に全然覚えてないのか!大変だ父上達に相談しないと!」
動転した私は部屋を飛び出して父上に報せに走った。隣国王子フレデリックを置き去りにして。
「私達は君のお兄さんの友達だ。安心してくれ」
私は父上に妹が記憶を失った事を話した。そして王子が、婚約者であった妹に婚約破棄を告げ言われた妹が倒れた。そのショックから記憶を失くしたようだった。真実を知って妹の為にこの国には居られないと感じた私達はこれ幸いにと、爵位と領地、財務大臣の職を陛下に返上した。
元々ギリギリだったのだ。仕事が忙しく妹に構う時間さえも削られて父も私も限界に近かった。噂に晒された妹を、これ以上苦しめるのは家族として耐えられなかったからだ。それに、これまで頑張っていた私達に王子の仕打ちは地味に堪えた。
「この国に居ても妹さんは不幸になるぞランティス。ラングランド国に来ないか?今、私には君達親子が必要だ」
そうだな、このまま噂に晒され悪者にされる妹を見るより、場所を変えて気分を一新させるのがいいだろう。そう思ってこの国に来たのだ。
「君達が来てくれて本当に助かるよ」
フレデリック殿下が、感謝してくれました。こちらとしても渡りに船で、都合が良かった。
「フレデリック殿下のお陰で、これ以上妹を苦しめずに済みました」
あの国にいても、妹を守れない。母との約束を、胸に誓ってる私には耐えられない。
「こちらこそだよ。汚職の大臣を破滅に追い込んだのは良かったが、後始末を出来る人材に乏しくてね、助かったのは本当だ」
あのバカ王子が、妹に恥をかかせた上に、妹に贈ると宝石類を買った。と払いを財務部に押し付けてきたが、実は男爵令嬢に貢いだ事が分かり父が憤慨していた。宝石代金は妹の物ならと、父が立て替えたのだ。国の税を私物に使う訳にはいかないと。その気持ちを不意にされた父は王子の仕打ちにこの国に見切りを付けた。あの日の事を思い出す。
「それなら丁度いい、私の国に来て財務大臣をやらないか?爵位も今と変わらない物をやろう。処刑した大臣の後を任せられる人を探していた。私は運が良いよ」
私達親子は、フレデリック殿下の勧誘に乗りすぐさま動いた。父は爵位と、領地を返還した。名目は娘が迷惑を掛けてしまった。と言い訳して陛下の前から素早く立ち去った。
「本当に行ってしまうのか?別に気にしなくていい」
第一王子であるカスタム殿下が、私にそう言ってはくれたが、貴方も妹との話断ったのですから信用できませんね。元々父は正妻の第一王子か第三王子に嫁ぐのを望んでいた。しかし、余りにも残念な性格の妹は敬遠されて、側室の子供だった第二王子に白羽の矢が立ち、ラナの婚約者になったのだ。それにしても、嫌なら家の妹に直接言わずに、父親である陛下に言えば問題なく解消できた。
「いいえ、ありがとうございます。そう言って頂きましたが、シリル殿下に迷惑を掛けたのは本当ですから。これで、御前を失礼します」
娘大好き父が、難しく苦労満載の財務大臣を無理して頑張ってきた。父は貴族のままでいても娘は救えないと思い、旅に出ようと息子である私に相談してきた。丁度いいと、フレデリック殿下の話に乗りこの国をでる。どんなに残念な性格でも私には可愛い妹だ。後の事など知るか!私も父もこき使われたのだ!今度は精々自分達で苦労するがいい!
「フレデリック殿下の好意に甘えよう父上、色々言われる盾になってくれそうだ」
「しかし、何もできないぞ」
「それは心配してない。私の国で財務大臣をして欲しい。前の大臣が汚職ばかりで国が潰れるところだった。来てもらえれば、同じ爵位と領地を授ける」
フレデリック殿下が仕事と爵位と領地までくれるそうだ。多分粛清して没収した領地だろうがラナには知らない土地で暮らす方がいいだろう。
「ラングランド国陛下は私達の事を良く思ってないだろう。財務大臣など無理ではないか?」
私から見ても父は優秀だ仕事も早い、普通の量ならば大丈夫だったが故郷の国は仕事をしない人間が多かった。
「いいや、大丈夫だ。父上にも了承済みだ。むしろ来てもらわないと財務が回らない」
流石フレデリック殿下の父親だ。私の父の事も知っているのだろう。
「それでは、フレデリック殿下お世話になります」
父が返事をした後急いで準備をしてラングランド王国に向かった。待遇はいい様だ。妹の為にもなる。記憶を失っているので領地経営と財務の仕事をある程度終わるまで、妹は王宮にその身を守ってもらう手筈になっていた。この選択が後になって妹にさらなる試練を与えるとは知らないままだった。
「父上ここの財務も酷いですね。王子が頼むはずです」
書類を見比べ明らかにかかるはずのない予算が消費されています。どこにこの金が!と言う物ばかりです。この分だと資金を回収すれば大金に成りそうです。犯罪者を大量に生産しそうだとため息が出ます。
「粛清されたと聞いていたが、これなら納得だな。酷すぎるしばらくかかるな」
父も納得して大変そうだ。と言う顔で私と同様ため息が出ています。
「ラナの為です、父上頑張りましょう。2人で片付ければ早く終わりますよ」
とにかく頼まれた仕事をある程度片付けて、親子3人の穏やかな暮らしをしたい。父も望む生活を手に入れる為しばらくは我慢だ。
「そうだな、ラナの為だ」
そう思い仕事を頑張って来た私の元にラナが王宮から消えたと報せが来た時は驚きでカップを落としてしまった。理由を聞こうと訪れた王子の執務室で、私と父の顔を見たフレデリックに土下座をされた。
「済まない!ランティス!今、ラナの行方を捜している」
理由を聞けば、ラナがフレデリック王子の浮気相手と誤解した婚約者のフローリリア王女様に森に連れて行かれたと聞いた。後から聞かされたフレデリック王子が急いで騎士を捜しに向かわせたがまだ見つかっていないと謝っている。
「ラナを守る為に王宮に置いていたはずだ!どうしてこうなる!」
「ラナ、無事でいてくれ!」
父の悲痛な声が部屋に響く。男泣きな父の後ろ姿に何も言えない。ただ、この不始末の責任はきちんと取ってもらおう!フレデリック殿下を睨み付けながら心の中にで誓った。
捜索を始めて10日以上すぎた頃、リスティー王国から国印入りの手紙が届いた。私達親子は知り合いもいないとリスティー王国からの手紙に困惑しながら父が読んでいる。
「父上、何が書いてあったのですか?」
手紙を読み進む父の顔が固まり最後まで読んだ時に手紙が手から落ちた。急いで拾い読むと驚愕の事実が書いてあった。
「ラナが皇太子妃!森でリスティー国王子に拾われたのか!」
ラナが誓約書にサインをしてくれたと。挨拶とラナが寂しがっているから会いに来てください。との旨が書いてある手紙だった。ラナ、幸せならいいが騙されてないか?心配だ。何方にしても、ラナに会いにすぐ向かう事が決まり手紙の返事を送った。急いで準備して、父と2人不安になりながらも馬車でリスティー王国に向かった。




