第9話
少し時間ができたので書きました。不定期更新です。すみません。
行き先を聞けないまま困っている、意気地なしの小動物令嬢ラナです。
何処へ行くとも分からないまま流されてます。今更聞くこともできず、隅の方でぼーっと外の景色を眺めています。
悪役令嬢を廃業してからも、運の悪さに付きまとわれているようです。助かったのだから幸運だろうと思う人もいるでしょうが、どうも私の小動物センサーが不運ですよー!と囁いているので楽観視できません。
「どうかしたのか?気分でも悪いのか?」
いいえ、ただ…黄昏てるだけです。こんな事にどうしてなったのかなぁ。くすん。
「え?泣くな、どうしたらいいんだ…クラウス!ハインツ!教えてくれ!」
お付きの人の名前(クラウスとハインツって言うんだ)を呼んで、おおきい身体でおたおたするイケメン(名前忘れた)さんが面白いです。溢れそうだった涙が引っ込みました。
「お菓子をあげますよ。そうだ!お土産に買ったこの人形どうぞ」
お付きの人が言ったと思ったら、血のりをいっぱい付けた物と、お菓子を一緒に顔に突き付けられました。
「ひっ!いやああああーっ!」
人形⁉︎あれを作る人の気持ちが分かりません。可愛さがちっともありません。グロテスクな死体人形ですか?女の子が欲しがる物体では無いです。近付けないで!頭に弓矢が刺さり心臓に剣が刺してあります。気持ち悪いので、素早く椅子の後ろの荷物置き場に隠れました。
「ああ〜!隠れたよ。クラウスの所為だぞ。グロテスクな人形を欲しがる訳ないだろう」
その通りです。ホラー好きならともかく、私は普通(この世界の記憶なし)の、小動物令嬢ですのでそんな物は要りません!
顔を横にブンブン振りながら、要りませんと思いました。
「ハインツ、私の従姉妹には好評な物なんですがね」
これがお気に入り?ホラー少女ですか!変人ですか?人の趣味に、ケチは付けたくないですが私には理解不可能です。それと誰か助けてください。怖くて涙が出そうです。
「お前の従姉妹と一緒にするなよ!しばらくは隅から出てこないと思う」
人形は見たくないので、陰から顔を出して思いっきり頷いておきました。
「…クラウス、恨むぞ」
え?イケメン(名前は忘れた)さん顔が怖いです。どうして?私何もしてないですよ。
やっぱり、隅っこにいる方が小動物令嬢の私には似合ってて安心します。
「残念ですね。気に入ってもらえると思ったのですが」
要らないです、遠慮します。お気持ちだけ頂きます。私は可愛い普通の物が好きです、癒されたい。
切実に癒されたいです。このままだと心が疲弊しそうです。
「クラウスの所為で、怖がって半分しか顔だしてないぞ」
その人形を近付けないで下さい。持ち方がおかしいです、足から逆さずりでプラプラさせるのは、いくらグロテスク人形だとしても扱いが雑で、お土産とは思えない可哀想です。
見てるこっちの心臓が持ちません。
「そうですか?この人形高かったのですが、従姉妹達に頼まれたのですよ。そこを通るなら買って来てくれと」
変わった人の従姉妹は、やっぱり同じで変わってるのですね。
でも、一緒にしないで欲しかった。今夜夢に出演されそうです。
森捨てにされて(誰も助けに来なかった)流されてここまで来てしまいましたが、付いてないと思う小動物令嬢のラナでした。




