第8話
不定期更新です。
今、助けてもらった人の馬車に乗せてもらっています。記憶を無くし、悪役令嬢廃業中の現在小動物令嬢ラナです。隅っこに座らせてもらっています。
この頃、隅っこが定位置になりました。この馬車は、もの凄く大きくて立派な馬車です。重いので契約魔獣に引かせているそうです。初めて見た時はびっくりしました。
「ラナちゃん、隅にいないでこっちで食べるといい。珍しいお菓子あげよう」
ちゃん呼び!身体の大きくがっしりした、一番偉そうで威厳のありそうなイケメン(名前は馬車に乗る前に自己紹介で聞いた。でも、忘れた)の人が、猫撫で声で言ってきます。前世の、幼児誘拐犯のような口ぶりです。助けてはもらいましたが、私は騙されないわ!と思いました。
でも、お菓子に罪がないです。食べれる時に食べておかないと逃げる時困ります。ですので遠慮なくもらいます。
珍しい、美味しそうで可愛いお菓子でした。甘いお菓子は好きです。非常食のお菓子を、増やすのもいいですね。まだ沢山ポケットに入ってます。お皿を、素早くもらって隅っこに戻ります。
「…んっ!おいし!」
一口食べると、ふわふわクリームの上にベリーソースがかかってて美味しいです。ポケットに入れられないのが残念です。一番大きいのを取ってきたので食べがいがあります。前世でも、お菓子もスイーツも好きでした。私がお菓子を食べている時、こっちを見ながら小声で話しをしていましたが、お菓子を食べるのに夢中な、私には聞こえませんでした。
「可愛いな、子供の頃から飼っていたチーリスのラナに似てるぞ。偶然名前も一緒だった。執務室に置いて、側で見てたら仕事がはかどりそうだ」
「アルフォンス殿下がお望みでしたら、執務室の隅に彼女専用の小部屋を作りましょう。隅が好きそうですから喜んでくれますよ。飛びツバメで手紙を先に王国に送ります」
「しかし、彼女は本当に記憶がないようです。前にリスティー国の使者として行った歓迎会で会ったのですが、今とは正反対ですよ」
「そんな事より、旅が短くなって良かった。家に帰れる」
美味しいお菓子を食べ終わりました。こっちを見て笑顔のイケメン達(名前は馬車に乗る前に自己紹介して聞いた。でも忘れた)今度は、果樹ジュースを飲ませてもらえるようです。助けて拾われたにしては待遇いいです。珍しいお菓子や大きく立派な馬車、凄いお金持ちだと思います。
「美味しいから、飲むといい」
ジュースの入ったコップを見せられました。飲みたい、…でも、よし素早くもらって隅っこに戻ればいいわ。
「ありがとう」
受け取ってお礼を言ってから、すぐ隅っこに座りました。広い馬車の中で助かりました。女の人が居ませんからちょっと怖いです。飲みながら、この馬車がどこに行くのか聞いてない事に気が付きました。小動物令嬢の私は弱いですので、聞けなかったのは仕方ないと思います。少なくとも、食べ物だけはもらえそうなので、餓死だけは免れそうで良かったです。




