プロローグ:王ドロボーキング
暖かくてしかも長い目で見てやってください。
「ゴージャスだわ」
ただいまの時刻、午前2時。
とあるお城の一室で、彼女はそうつぶやいた。
歳はおそらく18ぐらいだろう。
ショートヘアーの金髪は外ハネしていて、整った顔に乗っかってる目は大きく鋭い。
多少怖い雰囲気を出しているが、かなりの美人に入るだろう。
悪趣味なコレクションで気分が悪くなるようなその部屋の中心で、彼女はガラスケースの中をジッと見ていた。「【王女の涙】・・・やっぱりこの指輪は、アタシがありがたくもらっとくべきよね」
そんなことをサラッというと、彼女はおもむろにガラスケースに手を伸ばした。
そしてそれを慎重に外すと、指輪を手に取り満足そうにそれをかかげた。
「チョロい仕事だったわ♪」
彼女はそういってまた指輪をジッと見ていた。
その顔はウットリとしていてなんだかアブナイ感じだ。
しかし、指輪はイキナリ爆発した。ボンッ!という心地よい爆発音が響いた。 彼女のキマッていた金髪とかなりの美人に入る顔はチリチリのアツアツになっていた。
「・・・なんで?」
ケホッとかるくケムリを吐いてから、彼女は回りを見渡した。
すると、彼女の少し前に光とともに一つの魔方陣が流れるように浮かびあがっていく。
そしてそれは強く光を放つと、一人の男を出現させた。
「やれやれ。美しい顔が台無しですねぇ」丸メガネをかけ、黒く大きなマントを羽織った男は、ニィっと笑みを浮かべ、メガネを押し上げながら言った。
イキナリうっとーしぃヤツが出たもんね。
彼女は台無しになった顔をフキフキしながら思った。
そしてボサボサになった髪をキッチリ5分ほどかけて外ハネさせてから言った。
見た目にはこだわるのだ。
「アンタ誰よ」
「これは失礼」
顔は笑っている。
「私の名前はウィザード・アルケム。ただのしがない錬金術師ですよ。キングさん」
深々とお辞儀をしたかと思うと、メガネを押し上げニィっと笑ったりしている。
忙しいヤツだ。
「しがない錬金術師なら移送方陣なんて禁忌も、アタシの名前も知らないわよ。フツーは」
「そうですよねぇ」
と、ウィザードは手を広げキングに向けた。
「たしかにただのしがない錬金術師なら、こんな魔法も使えませんよねぇ」
そういうと、ウィザードの足下から青い光が彼を囲うように放たれてきた。
「マジ?」
キングは後ろに振り返ると全速力で逃げ出した。
んだけどちょっと遅すぎたようだ。
「プリズン・ウォール」
ウィザードがそういうと、キングはアッサリ捕まった。
キングの1メートル四方が光の壁に囲われてしまったのだ。
バンバン叩いても壊れそうもない。
けどキングはバンバン叩いてみた。
モチロンムダだった。
「なるほどね」キングは真っ赤になった手を振り回しながらもカッコつけて言った。
「最近、ヤケにスゴ腕の賞金稼ぎが賞金首をかたっぱしから捕まえまくってるって噂を聞いたことがあったわね」
そしてキングはニヤッと笑うと、そのままウィザードを睨み付けた。
「噂によるとその賞金稼ぎはかなり高度な魔法を使いこなす超上級レベルの魔法使いとか」
キングが睨み付けていると、ウィザードはニィッと笑みを浮かべた。
「さすが、ドロボーを仕事としてるだけあって詳しいですねぇ。ちなみにその魔法障壁は普通の物理攻撃ではまず壊れませんよ」
「んな事身にしみてるわよ。特に手にね」
キングはまだ自分の手をさすっていた。そーとー強く叩いていたようだ。
「フフ、潔いですねぇ。では、行きましょうか。賞金を受け取りに、ね」
ウィザードはそういうと、ゆっくりとキングに近付いていく。
しかし、キングは笑っていた。
「悪いけど賞金はもらえないわよ。永久に」
「負け犬の遠吠えというヤツですか。見苦しいで・・・」
そこまで言ってウィザードはようやく気がついた。
キングが手をさすりながら、なにやら妙なグローブをつけている事に。
「ち、バーストナックルか!」
「気付くのが遅すぎたわね」
キングは拳を握り締めた。
すると、グローブの関節部分にはまっている球体が赤く光りはじめた。
「アタシは王ドロボーキング!アタシに盗めないモノはないわ!!」
そういうとキングは思いっきり光の壁を殴り付けた。
バリィィン!という盛大な音と目もくらむような光を放ち、光の壁は砕け散った。
するとキングは窓に向かって駆け出し、そのまま突き破った。
ちなみに5階。
ウィザードが窓に駆け寄りのぞきこむと、下のほ〜で段差状になっている屋根の上をキングがピョンピョン跳んでいた。
スゴすぎる。
「クソ、やられましたね」
舌打ちをしてそう言ったウィザード。
しかし、その顔は笑っていた。
後先考えずに書き始めたけど、ど〜なるか自分でも分かりません;