僕と神父とフォトグラフ
期間が開いてしまいました……。
なお、夏の旅行の最終話を、年末企画の話とすげ替えて公開しております。
また見ていない方は、是非に。
「おやおや、こんなにたくさん。いいんですか?」
「ええまあ、遠慮しないでください。主に苦労したのは夕陽ですから」
今日はあの旅行から帰った次の日。
僕は大量の氷と共に海産物を詰め込んだ発泡スチロールの箱を持って教会にやってきていた。
教会と居住スペースはつながっており、今僕がいるのはそちらがわだ。
珍しいことに――いや、本当に珍しいのだ――教会に人がいたためである。さすがに十字架の前で磯の香りを振りまく趣味はない。
僕が通された部屋は十帖程度の広さの部屋だった。小さいながら机があり、窓から差し込む光は相変わらず強い。が、全体的に照明控えめ、レンガ造り、採光も抑えめの構造となっている教会とそれにひっついた居住スペースの中にいると、その強い光がどこか心地よく感じるのも確か。
神父さまは発泡スチロールの中身を見ながら、あれこれと今日の晩餐について思いを巡らせているようだった。
「それにしてもあんなに水着姿を見たがっていたのに、お仕事とは残念ですね」
「ああ大丈夫ですよそれなら、ほら」
神父が懐から何かを取りだす。アルバムだ。
この時点で既に嫌な予感しかしない。
神父はどこか自信ありげな様子でそれを開いてみせた。
「ほうら見てください、この見事な脚線美」
「ちぇすとおぉぉぉぉぉぉ!!」
箱から取り出した鯖をアルバムに突き立てた。
鯖は一枚の写真とアルバムを貫通して机にその頭を埋め、びいぃん、と震えて止まった。
「んのおおおおおおおおおっ?! な、何て事を!!」
何て事を!! じゃないって。
「……あんた聖職者でしょうに。なんつーものを」
彼のアルバムに収められていたものは写真である。当然だ。これでパンツとか入ってたらアルバムじゃなく脳天に鯖を突き刺してる。
「つうか脚線美はいいとしてこのコレクションはもはやホラーですよ?」
「えー。でもいいじゃなくですか。綺麗ですしなにより個性があります」
個性って。
見開きページの写真は、総てふとももから下の写真ばかりだった。足元が砂浜だから水着姿のものを撮影したのだろう。なんていうか。なんていうか。なんだこれ。
あのさぁ……。
鯖で貫いた大地の脚の写真とかどこに需要があるのかと。
「ああもう……これは姉さんか。で、これが涼莉、と。こっちは渚三姉妹まで。こっちはそれぞれ綺月とリリスかぁ……」
うわぁ。なんていうか、うわぁ。
「脚の写真ばかりなんでこんなに……引くわー」
「や、あの、その写真だけで完全に判別できてる空君も結構アレですよ?」
「や、わかるでしょ」
「……当然のように言い切りやがりましたよこの少年」
なぜかおっそろしい物を見るような目をされた。何故に。
「というか、いったいこの写真の出所はどこですか」
「今朝方リアさんが売りつけに来ましたよ?」
「本当に人の目ェ盗んで何やってんですかねあの自由人は!!」
あの人の写真だけなかったなそういえば!
「なんと言ったらいいのやら……とにかく、これは没収です!!」
「そ、そんな殺生な!!」
「ていうかこんなもの開いてるうちにシスターが帰ってきたら本気で命に関わりますよ」
「はっはっは。やですねえ空君。そんなのいつものことじゃないですか」
……いやまあ、そうかもしれませんが。
どうなんだ。その結論は。
「とにかく没収ですこれは」
「ええぇっ?! 海に行けなかった哀れな私の心のオアシスを奪ってしまうというのですか?!」
「普通の写真ならまだしもこんなマニアックなもん所持されてたら本気で警戒しますよ!!」
とりあえずウチの女性陣には近づけられない。
と思ったりはしたものの、よくよく考えたら自衛力で見た場合女性陣の方が圧倒的に高い。この写真はまあ、裏切り者が撮影しているとしても。
「ていうかリアさん、旅行の最初から足だけ狙って撮影って……」
ページをめくっていくとひたすら足の写真が。水着姿だけではなく、私服や寝間着姿、さらに寝ている所をわざわざ布団をめくって撮影したらしい写真まで。
なんだこの異常なまでの足に対する執着は。恐怖さえ覚える。
「最初は単なるイタズラだったらしいんですが、なんか途中から『いかにバレずにどこまでいけるか』という自分との戦いが始まったとか何とか」
「何ですかその不毛な戦い」
始めなくていいよそんなの。そしてその結果人に売りつけるって、正気に戻ってどうでも良くなった証拠じゃん……。
「まったく……聖職者なんだから少しはそれらしくしてくださいよ」
「聖職者がエロくちゃいけませんか!!」
「黙れ性職者」
「賢者と呼んでくれてかまいませんよ?」
「前から気になってたんですけど脳味噌腐ってませんかあなた」
ははは、と和やかな会話を交わす。なんという不毛。
さて。
「…………で、これで全部でしょうね」
「――――――。え?」
何だ今の間は。
笑顔で人差し指を頬に当てる神父さまだがなぜそんな可愛さアピールをはじめたのか今の僕には全くもって理解出来ない。
僕は深くため息をついて、アルバムを左手に抱えて残った右手を腰に当てた。
「……出してください」
「はははやですねえ空君そうやって最初から人を疑ってかかるなんてひどい話ですよ全くほらそんなに緊張しないでリラックスリラーックスああああぁぁぁぁぁ!!!!」
最後の叫びはアルバムを真ん中から真っ二つに引き裂いた事による悲鳴である。
「……で?」
「いえいえいえいえ、ちょっとタイムタイムですって! いいですか空君聞いてください!!」
「はぁ……まあ言い訳があるなら聞きますけど」
「では」
こほん、と息を整えた神父さま。
すっと背筋を伸ばした姿は、やはりその道が長いだけあって様になる。
立ち姿だけで自然と、この人の話を聞こう、という気にさせるのだから流石という他にはないだろう。
その目的がなんとも情けないのが悲しい限りだけど。
神父さまがすっと目を閉じ口を開いた。
彼はまるで詩を謳うように、静かに語りだした。
「宇宙ができて137億年。そして地球ができて46億年が経っているわけです」
カニを投げた。
フェイスハガーみたいにベタっと顔面に張り付いて神父さまの口が塞がれる。
存外生きが良かったらしくそのままワサワサと暴れるカニ。それを引き剥がそうともがく神父さま。まるで映画のワンシーン。
「ぶはぁっ!! な、何をするんですかっ?!」
「いやあなたが何を言ってるんですか」
カニを引き剥がした神父さまが比喩ではなくめんたま剥き出しにして訴えてきたけれどむしろ僕があんた何言ってるんだと聞きたかった。
いきなり宇宙が地球がってどんな電波受信したんですかあなた。
「あんまりふざけてるとバラバラにして鳩の餌にしますからね」
「たまに思うのですが、空君私に対して情け容赦ないですよね基本」
「神父さまと会話してると情けも容赦も蒸発してくんですよね、なんか」
「なんという神も仏もない言葉を」
神父の口から出ていいのか若干審議の余地がある言葉を口にしながら、剥き出しになっていためんたまをしまい込む神父さま。実にホラーな光景であるのだが、いかんせん見慣れた光景で感覚が麻痺しているのか、コミカルにしか感じない。
汚染されてるなぁ……。
「とにかくあるならさっさと出す! 隠してもいい事ありませんよ?」
「しかし出しても酷い目に合うこと確定してますからねえ」
「おい待て」
さらっと重大情報が出てきましたよええ。見られたらひどい目に合わされるってどんな写真ですか一体。不穏な写真じゃないでしょうね。
「なんか空君の気配が不穏になってますけど?!」
「ははは何を言ってるんですかまったく。いいからさっさと隠しているものを出してください」
「…………な、何も、隠してなど。ええ」
「今更シラを切るつもりですか?!」
最初からごまかすならまだしも、もはやごまかしようのない段階になっての突然の路線変更に驚愕を禁じ得ない。
苦し紛れにも程がある。
「し、正直者なんですよ私! それ以外に誇れるところなんてないんですもの!!」
「本気でいい年した大人が中学生相手に涙目で悲惨なカミングアウトかまさないでください! ていうか往生際が悪いにも程がありますよ!」
「諦めが良くてゾンビなんかやってられますか!!」
「それ言い出したらゾンビが教会に住んでんじゃねえ!」
「うーわー。ホラ来ましたよこれ、差別ですよゾンビ差別。ゾンビには教会に住む権利もないっていうんですかうわー。人権屋に掛けあって訴訟起こせますよこれ」
「やってることがもはや聖職者でもなんでもねえただのヤクザだこの人!!」
「賢者と呼んでくれてかまいませんよ?」
「今確信しましたけどあんた実は脳味噌腐ってんだろ」
はっはっはと高笑いする神父さま。ぶっちゃけこっちは叫び疲れて肩で息をするはめになってるんですけど、さすが死人は体力の限界なんて関係ないわけですねちくしょうめ。
ひとしきり笑った神父さまは満足したのか、さて、とつぶやいて。
「では悪くなる前にこの魚をしまいましょうかね」
「だからその前にやることがあるでしょうが」
神父さまの左右の側頭部に一つずつウニがぶち刺さった。シルエットだけ見ると、おさげが二つできたように見えなくもない。実際には頭蓋削って突き刺さってるんだけど。
まっとうな人間であれば漏れちゃいけないアレやこれを頭の左右から垂れ流しながら、同時に両目から滂沱の涙を流しながら、神父さまは大きくのけぞって、叫んだ。
「――――痛い!!」
「いやまあ」
ちなみに神父さまの痛覚は一般人のそれと比べると随分麻痺しているらしい。が、それでも痛いものは痛いのだそうだ。
まあ頭に異物をぶつけるどころか突き刺されたらそりゃ痛いだろうけど。
二度の全力投球を終えた僕はクールダウンに肩をグルグル回していた。
僕は苦悶する神父さまの肩に手を置き優しく語りかけた。
「で。出すもん出してください」
「あなたの方が随分ヤクザですよ?!」
「ほら、もうこれ以上痛い目にあうのはいやでしょう?」
「言い回しまで完全にそっちの人になってるじゃないですか!!」
一体誰のせいだと。全く。
ため息をつくと、床の上のそれに気づいた。
形は長方形で手のひらサイズ。厚みは薄く、表面はなめらかなそれは。
明らかに写真。なのだが。
「――――」
「――――」
神父さまもそれに気づいたらしい。唐突に静かになる。
沈黙。
沈黙が部屋を支配していた。
さもありなん。
写真は、ある色が面積の大半を占めていた。
それは慣れ親しんだ色であると同時に、そうそう目にできない色でもある。
人間にとってのもっとも根源的かつ自然に近い色。
すなわち。
――――肌、色、で、ある。
動いた。
まずもって自分を取り戻したのは神父さまだ。
彼の行動は早かった。素早くその場に膝をつき両手を揃えて、頭を倒す姿勢に入る。
土下座だ。
日本人にとっての謝罪の最終形態といってもいい形。しかしながら、僕はその時すでに理解していた。
彼の目的はそれではない。
倒れていく頭と同時、揃えられた両手も前へと進みゆく。進行方向にあるのは、例の写真。
――この期に及んでそっと回収してシラを切るつもりだ。
いやいやいや、ちょっと流石にこの写真は見逃せませんって。
なるほど写真を隠そうとするわけだ。こんなものが見つかったとなれば、保有していた神父さまは当然ながら、撮影した人物にまで報復が及ぶだろう。
そして、報復があれば撮影者に見つかったことを咎められ、即ち神父さまは二度死ぬ。
自業自得だ誰が見逃すか。
足を踏み込む。すでに床に張り付いたそれを、その奥の大地を踏み込むように、強く。
動作は一瞬。即ち結果も即時に反映される。
限界を超えた圧力を加えられた床板が軋み、反動で震える。それはそのまま力となり、接するものを動かすこととなった。
つまり写真が動く。目論見通り、僕の足元へ向かって。
しかしそれでも僕と神父さまの中間点へ移動したのみ。
それでもこの位置ならば、もはや神父さまが土下座を完了したとしても、その手は写真には決して届かない。そう、これにて彼の道は途絶え、あとは僕が素早く回収するのみである。
足を大きく踏み出した。
が、しかし。
流石に生きてきた年季が違う。覚悟も違う。
僕が彼の本気を目の当たりにしたのは、まさに次の瞬間だった。
「奥義・分離土下座――!!」
「うえええええええっ?!」
思わず悲鳴を上げてしまった。だって。
――上半身が飛んできた。
そうとしか表現できない現象だった。
体を倒す勢いをそのままに、下半身を置き去りにして上半身だけで床上を滑りだす神父さま。無論姿勢は綺麗な土下座を保っており、なんていうかなんだこれ。これ伏せた顔はドヤ顔なんだろうかドヤ顔なんだろうな。
混乱する思考を鎮めたのは、その進行方向だった。
野郎、上下半身分離してまで写真確保するつもりである。
とっくに人間やめてるからってやることまで人間離れする必要はあるのだろうか。しかも物理的に。ええ。
とにもかくにも。
「負けられるかぁ!!」
さらなる一歩を踏み出した。一歩目が始動の動きならば、二歩目のそれは加速の動きだ。その速度において、上半身の運動のみに頼った動きより遅れる道理などない。
結果は明白だった。
「よっしとった……あ、ちょっと神父さま離してくださいよ!!」
テケテケがしがみついてきた。
「それはあぁぁ! それだけはあぁぁ!!」
「ふざけないでください! こんな写真こそ見逃せるわけ無いでしょう!!」
「お願いします! あ、そうだ。わたし肌色を見ないと死んでしまう病気なんですよ!!」
「だからさっきからなんでそう取ってつける事を繰り返しますかね!」
「まあ特技ですしね!」
「テメェの肌でも見てろっていうかいっそ死ね!!」
「神の家でなんという暴言を!!」
「神の家で不純なもの隠し持ってる神父に言われたくないわ!!」
上半身になった神父さまが宣教服を引きずりながらしつこく右足にすがりつく。
「ええい、離してください!」
「ひぎぃ!!」
箱から次々に海藻類を取り出して投げつける。やがて神父さまは昆布に手を取られぬるっと滑っていった。
ふははザマアねえや!!
悪者になった気分で言葉に出さず高笑いすると、僕はそのまま戦利品を高く掲げて神父さまを見ながら後ろ向きに下がり、部屋の出口へと向かった。
「こいつは頂いていきますよ神父さま!」
「ああ、そんな殺生…………あー」
「え?」
神父さまがいきなり人生全てを諦めたような声を上げた。はて、どうしたのだろうか。
と。
ぽよん。
と、後頭部に何かがあたった。あたった、というか、柔らかい何かによって受け止められたような感覚だ。
はて、こんな所に柔らかい壁なんてあっただろうかと考えていると、掲げていた写真がするりと指の間から抜けていった。
視線を上げると、写真は浮いていた。
すわポルターガイストまで出たかと思ったが、違う。写真は指によって支えられていた。
支えている手を辿り、視線は自然とぐるりと背後に回る。
そして。
「――――」
「うふふふふ」
満面の笑みを顔面に貼りつけたシスターがそこに立っていた。
ああなるほどつまり、今僕がぶつかったのはシスターの豊満な胸だと。
超絶未知の感触だったんだけど。なに今の、人間が持ち得る柔らかさなの?
……人間、命の危機に瀕すると思考があさっての方向へクラウチングスタートからの全力疾走で走り去っていくらしい。俗に言う現実逃避だ。知りたくもない経験がまたひとつ増えた。やったね姉さん。
「しかしなんといいますか。ええ。実に。ええそう、実に可愛らしい写真、ですねぇ」
笑顔が心を凍らせる。そんなこともあるのだと。またひとついらぬ知識が。いっそ気を失いたい。ちらり、と視線をそっと神父さまに向けると、必死の形相で上半身と下半身をくっつけている最中だった。前後が逆になっている辺りに彼の焦りが伺える。
ちなみにシスターは外見からは想像もできないレベルのハードパンチャーだ。
さらにいうと、その中身の方がとんでもねぇレベルのハードパンチャーである。
具体的には神父さまが悪ふざけをすると、ボコボコにする。ボコボコになった神父さまが謝罪をすると『またくもぅ、謝る時はきちんと身なりくらい整えましょうねぇうふふ』とか言いながら今度はグチャグチャにする。
酷い。
「まったく。まだ日の高い時間からこんな写真をふたりで取り合うなんて……はああぁぁぁ……」
いや、違。
僕は少なくとも邪な目的はなく。ええ。だって、そう。
涼莉の脱衣姿の写真など、別にそんな、ええ。
「さてお二方」
喉が乾上がってゆく。
恐怖と絶望で何も言えない僕らふたりに。
「懺悔の準備は、よろしくて?」
そうして。
今日も今日とて、教会に似つかわしくない悲鳴が響くのだった。
そうした挙句の結末として
その日の夜。
リビングで僕と姉さん、涼莉はくつろいでいた。
ましゅまろはいつもどおり、隅っこでコロコロしている。
「うふふ、いい写真が増えたわ」
「…………そう。よかったね、姉さん」
結局。
ダース単位のトラウマを心身に刻み込まれた後でようやく事情を説明し、写真を受け取った僕は、それを姉さんへと渡した。
ちなみに神父さまはその時ウミヘビと死闘を繰り広げていたが、そろそろ結果は出ただろうか。
さておき。
さすがに写真を焼いて捨てるのは気が引ける。しかし、脚部写真集みたいなマニアックなものを部屋においておくもの、なんというかどう考えてもフラグにしかならないのでためらわれた。
なので、涼莉の写真と共に姉さんへと渡したのだ。
姉さんはホクホク顔でそれらを受け取った。アルバムは自室の棚へ。写真は姉さん秘蔵の涼莉専用アルバムへ、だ。
なんだかんだで姉さんは涼莉を溺愛していて、すでにそのアルバムで四冊目になる。
「うふふふ、いつもお風呂で見ているけれど、やっぱりこれからは写真にも残そうかしら」
「いや、それはどうだろう」
姉さんと涼莉が一緒にお風呂に入るとなんというか、その。
言い方を選ぶなら、賑やかだ。
そして一日のうちで涼莉が最も疲労する時間でもある。
ていうか姉さん、仮にも娘として扱っている少女のあられもない姿を写真に撮るってどうなのさ。
「…………ところで空」
「……何?」
姉さんの声の質が急に、なんというかこう。
怖い。
「空は当然この写真、見たんだよね?」
…………SAWですネー。
「くすくす。目の保養にはなったかしら」
「いや、それは」
姉さんの膝の上の涼莉と視線があった。
なぜか無表情になってじっとこちらを見ている。
……なんとなく、うかつな受け答えができない雰囲気なんですけど。
「あ、あのさ姉さん」
パタン。
と、姉さんがアルバムを閉じた。
綺麗で素敵な笑顔で姉さんが言った。
「家族会議を始めます」
それは、明け方にまで及んだ。