第一話 夕暮れ祠に現る謎の穴
神社に訪れた際に、不思議な経験をされた方は
いるだろうか。
神社に神隠しや神異など不思議な言い伝えがある中で、
時は10年ほど前、まだ神々も信じる年頃でない大都は兄の綾多は神社にある祠で不思議な体験をするのだった。
まだ、大都が小学生の頃だった。
空は蜜柑色となり、まだ涼しさが残る初夏の季節。
大都は家族と神社へ訪れていた。
この日、偶々祖母の家は遊びに行ったついでに近くの有名な神社に訪れようとなったのがきっかけだった。
既に夕暮れ時というのに、神社の奥の院にある祠に行きたいと母にせがみ、まだ明るい上、兄と共に行くことを条件に許可を得たのだった。
5分ほど本殿から歩き、ようやく到着する。
緑生い茂る針葉樹林の森の中に並ぶように
聳え立つ鳥居達。
少し歩きづらい階段を登りながら目的の祠を目指すのだった。
10分程歩いただろうか、小学生の大都からすればかなり過酷な移動だったようで、着いた頃には既にヘトヘトとなっていた。
薄暗くなりながらも祠の辺りは2本の蝋燭で明るく照らされており、ほのかに線香のような匂いがするのだった。
祠には紫と赤の幕が付いており、真ん中には狐の像がお供えされていた。
まだ神々の意識についても薄い年頃の大都でも、一瞬にして心を奪われる雰囲気を漂わしていたのだった。
『さぁ、お参りしようか!暗くなれば婆ちゃんや母さんが心配するだろ?』
綾多はぼーとする大都に話し掛けるのだった。
『…うん。でもなんだか怖いね。僕、こんな体験するの初めてだよ。』
『そっか…?でも、こんこん様といってとても有難い神様らしいよ?婆ちゃんが言ってた。』
『こんこん様…?』
『うーん。狐の神様らしいんだけど…?詳しいことはわからねー。』
『狐の神様か…!なんか可愛いかも!』
『うーん。その銅像みたいに少し怖い顔してるんじゃないかな?』
『え……。』
兄の綾多の発言にやっと少し背筋が凍る大都だった。
それから2人は手を合わせ、共に同じ願い事をするのだった。
『…。どうか、病にて入院している爺ちゃんが無事、完治しますように…!』
2ヶ月前に検査にてポリープが見つかり、肺がんのリスクが高いと入院していた祖父。
2人は祖父の回復をこんこん様に祈願するのだった。
『…さて。お願いできたし、大丈夫かな?』
『…うん!届いて欲しいね!』
2人は無事お参りも終えて一安心し、ゆっくり立ち上がるのだった。
『お兄ちゃん!もう暗くなるし、そろそろ道も見えなくなるから帰ろうよ!』
『…大都?ちょっと待って。』
祠から離れようとする大都を呼び止める綾多。
『こんな所に穴ってあったかな?』
『…穴?』
『ほら、祠の洞窟の横に穴があるだろ?』
兄はまだ祠の中にいたのか穴が見えたらしい。
しかし、少し離れている大都からすればあまり見えなかった。
『なんか、階段が下に続いてるようだ!右側にはお地蔵さんがずらっと並んでる。』
『えー?なにそれ…?どういう事?』
兄が言うことが気になり近づく大都。
漸く、兄の言ってた穴が見えたのだった。
『ねぇ!まだ暗くなるまで少し時間の余裕があるから入ってみようよ!』
『兄ちゃん!ダメ!帰れなくなるよ!』
なぜか、大都の年頃でも危険だと体が拒絶し、
帰れないという恐怖も感じたのだった。
『…た、確かに。やっぱりおかしいよなぁ?』
兄も大都の様子に冷静になるのだった。
【お地蔵様が数体右側には並び。石でできたトンネル。そして、謎の下へと続く階段。】
兄が祠から出た時だった。
大都の背後の草むらが急に揺れて何者かが逃げたような様子だった。
2人はもう一度祠の方を振り向くと先程まであった穴は消えていたのだった。
2人は元来た道を歩いて帰る。
出入り口には祖母と母が待っていた。
『どうだった…?こんこん様にはお願いしてきたかね?ええ?』
『うん!ちょっと怖かったけどね!』
『そうかい。そうかい。なら、もう暗くなるし帰ろうね、』
何事も無かったかのように祖母に話す大都。
『ねぇ!婆ちゃん。あの祠には洞窟があるの?』
『洞窟…?洞窟があったのかい?』
『うん。お地蔵様がズラーと並んでて階段が下に続いていたの!』
その時、祖母は少し青ざめたような動きを止めるのだった。
『婆ちゃん…?』
この話はまだ続くのだった…!
実話を元に、少しファンタジーも入れて描いてます。
自分は針葉樹林恐怖症で、昔よく夕暮れなのに訪れたなとびっくりしてます!
まだまだ、今に至るまでの実体験も含めて展開していきますので宜しくお願い致します!




