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迷える子羊の詩  作者: さらん


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いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


◆ 第1の詩:呪いの言葉と重い足取り

一人暮らしのアパート、無機質な天井を見つめては、深いため息がこぼれ落ちる。

脳裏を容赦なくよぎるのは、父から突きつけられたあの「呪いの言葉」だった。


「いつまでだらだら生きてるんだ。人生の目標を立てろ」


目標。

その見えない化け物に急かされるたび、何もない自分への劣等感が胸の奥で重く渦巻いていく。


今日もまた、いつもの単調な工場の生産ラインへ向かわなければならない。

流れてくる部品と同じように、自分の時間もただ機械的に消費されていくだけだ。


バイト先へと続く道を踏みしめる僕の足取りは、どうしようもなく重かった。




◆ 第2の詩:天真爛漫な神様の降臨

どんよりとした灰色の工場に、彼女は突然現れた。

新しく赴任してきた、小柄で可愛い女性チーフ・天神蘭。

彼女は眩しい笑顔を振りまき、あっけらかんと言い放つ。


「さあ、今日の目標までやり切っちゃいましょう!」


『目標』――僕を縛り、苦しめ続けるその呪いの言葉を、彼女はなんて無邪気に口にして笑うのだろう。


あまりの眩しさに呆然と立ち尽くす僕の背中を、蘭先輩は「トンッ」と叩いた。


「なに怖い顔してるの? さあ、元気だして終わらせちゃお?」


天真爛漫なその声に触れた瞬間。

重く閉ざされていた僕の心に、小さなヒビが入る音がした。



◆ 第3の詩:夕暮れのスーパーと予期せぬフラグ

退勤後の夕暮れ、立ち寄ったスーパーの無機質な蛍光灯の下。

思いがけず出くわしたのは、ふわりとした私服姿の蘭先輩だった。


陳列棚の隅に残された、最後の一個の「期間限定ポテチ」。

それに同時に手を伸ばしてしまったのが、すべての始まり。


慌てて手を引っ込め、譲ろうとする僕に対して、彼女は警戒心ゼロの無防備な笑顔を向けた。


「じゃあ一緒に食べよ? うちに来なよ、夕飯ご馳走するから!」


予期せぬ言葉。唐突すぎるフラグ。

灰色の日常に、突然あたたかなオレンジ色の夕陽が差し込んだような感覚。


どうしてこうなったのかという戸惑いと、ほんの少しの胸のざわめきを抱えたまま、僕は彼女の歩幅に引き寄せられていく。



◆ 第4の詩:ピンクの部屋と温かい手料理

案内された扉の向こうは、有能なチーフの姿からは想像もつかない、可愛い全開のピンク色の部屋だった。

無防備にぶら下がる部屋干しの洗濯物に、僕の視線は行き場をなくす。


「弟の満に似てるから」


そう笑う彼女は、僕を完全に弟扱いしてくる。

その無邪気すぎる距離感に、一人ドギマギしてしまう。


傍らでビールをぐびぐびと飲み干す蘭先輩が、テーブルに並べてくれたもの。

絶対に失敗しない鶏がらスープ、サラダ、ジェノベーゼパスタ。


あたたかい手料理を口に運び、ゆっくりと味わう。


「……美味しいです」。


間を置いて顔を赤らめながら呟いたその一言が、彼女の奥底にある母性本能に静かな火をつけたことなど、この時の僕はまだ知る由もなかった。



◆ 第5の詩:白熱のゲームと、明日への期待

食後のテーブル、二人でポテチをつまみながらのカーレース対戦。

「弟」に負けるのが悔しいのか、蘭先輩はムキになって本気で声を上げる。


やがてパズルゲームへと戦いの舞台を移す頃には、

そこにはすっかり、気の置けない姉と弟のような心地よい時間が流れていた。


夜も更け、このままダラダラと甘い時間を……とはいかない。


「明日も仕事だからね!」


彼女は立派な大人として、眩しい笑顔とともに僕を夜の街へと送り出した。


一人、夜道を歩いてアパートへ帰る。

父親のあの「呪い」が、完全に消え去ったわけじゃない。


けれど――明日またあの人に会える。そう思うだけで。

重く沈んでいた工場のラインへ向かう明日の足取りは、昨日よりもほんの少しだけ、軽くなっている気がした。


次は来週土曜日更新です

よろしくお願いします

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