プロローグ
初めまして、またはお久しぶりです。
この作品は、
「こんな物語を読んでみたい」という気持ちから書き始めました。
拙い部分もあるかと思いますが、
一つひとつの場面を大切に綴っています。
少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら、
それだけで作者としてとても幸せです。
生まれる前の記憶を持ったまま意識が浮上したとき、最初に感じたのは圧迫感だった。
四方を包む温度はぬるく、脈打つ音が絶え間なく耳に響いている。暗闇の中で体は丸められ、自由がない。それなのに不思議と苦しくはなく、むしろ守られている感覚の方が強かった。
――これ、胎内だ。
理解は驚くほど冷静だった。
前世の記憶がある。名前も、年齢も、死んだ瞬間の光景も思い出せる。それなのに今の俺は、明らかに生まれる前の状態にいる。
転生。
その単語が頭をよぎる。
否定する材料はどこにもなかった。
やがて世界が揺れ始める。
圧迫が強まり、体が押し出される。音が遠ざかり、光が差し込む。肺が初めて空気を吸い込み、焼けるような痛みとともに叫びが漏れた。
寒い。
眩しい。
そして――視線。
無数の気配が自分に向けられているのが分かった。
視界はぼやけている。それでも分かる。そこにいるのは人間ではない。耳が長い者、角を持つ者、尾を揺らす者。異形の影が取り囲んでいる。
「……人族だ」
誰かが呟いた。
空気が凍る。
さっきまでの慌ただしさが消え、重たい沈黙が落ちた。その沈黙には、明確な拒絶が含まれていた。
「不吉な」
「なぜここで」
「処理を――」
言葉の意味が理解できる自分が怖かった。
処理。
それが何を指すか、考えるまでもない。
死。
生まれたばかりなのに。
本能的な恐怖が心臓を叩き、呼吸が乱れる。泣き叫びたいのに、体はうまく動かない。
そのとき、扉が爆ぜた。
轟音が室内を裂き、空気が震える。木片が飛び散り、誰かが悲鳴を上げた。重い足音が近づくたび、床が揺れる。
絶対的な存在が入ってきたのだと、言葉なしで理解できた。
金色の影が視界を覆う。
獅子の獣人だった。
巨大な体躯、燃える鬣、捕食者の目。それなのに、その視線が俺に向けられた瞬間だけ、不思議なほど静かになる。
「……見つけた」
低い声が落ちた。
大きな手が伸びる。
抱き上げられた瞬間、寒さが消えた。体温に包まれ、心臓の鼓動が直接伝わってくる。規則正しい音が、混乱した意識を落ち着かせた。
「この子は私が引き取る」
宣言だった。
反論は許されない声音。
室内の誰もが頭を下げる気配がした。
俺はその胸に抱かれたまま理解する。
生き延びた。
この腕の中にいる限り、少なくとも今は。
意識が沈む直前、頬に触れた指は驚くほど優しかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
初心者なりに、登場人物や物語を大切に書きました。
少しでも印象に残る場面があれば嬉しいです。
もしよろしければ、
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