第5話 相聞歌
学校対抗の短歌会は、各校5人が短歌を詠み、互いに批評。ここの勝敗は顧問2票とゲスト歌人1票で決まります。形式は遊びのようでも、短歌を通した表現力の勝負です。
どうぞ、登場人物たちの心の動きや歌の響きを楽しんでください。
朝、目覚ましより先に、一通のメールで目が覚めた。上城ふみ子からだ。その文面を読むと、眠気は一気に吹き飛んだ。
「 今日は白百合女学園との対抗歌会です。
五人の代表者が短歌を詠み、お互いに批評して勝敗を決めます。
勝敗は顧問の先生二票と、プロの歌人一票で決まります。
私は都合がつかず出られません。その代わり、あなたを推薦しておきました。
顧問の釈八郎先生には話をつけてあります。短歌の批評は柳棚国男にお願いしてください。
部長の俵田まちこには相談しないこと。彼女は自分以外に興味がなく、他者を受け付けません。
最後に、あなたに出会えてよかった。お題は「月と絆」。健闘を祈ります。
かしこ」
修一はメールを何度も読み返した。つまり今日が、自分のデビュー戦なのだ。ふみ子が、すべて段取りを整えてくれていたということか。
ふみ子の短歌はこうだ。
「つくよみやおおかみ王の遠吠へ 闇の夜をつき光の螺旋 ふみ子」
月神を呼び、おおかみ王の遠吠えが夜を突き破る——。言葉は抽象的だが、闇に差す光や力強さを感じさせる。修一は息をのんだ。
「本歌取り……か。まずは、ふみ子の歌を受け止めよう」
修一はベッドから起き上がり、マッチを擦った。
揺れる炎が部屋を照らし、ふみ子の短歌が一瞬、壁に映る。それがまるで燃えているようで、胸が熱くなる。言葉が、ただただ迫ってくる。
修一は深呼吸し、言葉を紡いだ。
「オオカミの遠吠へつきて夜の闇 風は光を吹き払い消す 修一」
夜の闇に響くオオカミの遠吠え。風が吹き、光を散らす——ふみ子の短歌を自分なりに解釈し、動きや情景を加えて表現したのだ。
修一は小さく息を吐いた。「よし……これは、自分の歌だ」修一は、もういちど声に出して確認した。
「オオカミの遠吠へつきて夜の闇 風は光を吹き払い消す 修一」
読んでいただきありがとうございました。もし気になったことや感じたことがあれば、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。皆さんの感想を励みに、次の作品にも活かしていきたいと思います。




