報告
「――という訳で……お父様、アクネシア、カーマイン・デルモント卿との結婚を決めましたわ。結婚後はデルモント領で生活すると思いますわ」
カーミーを見送り、父と妹に会談の結果を報告した。
事務的な言い方なのは、未だに一歩外れると心臓が爆発しそうになってしまうから。
私が気丈に振舞って、私が私として過ごす為には仕事モードになるのが一番だったからだ。
「そうか。おめでとう、オクタヴィア。デルモント領は国境付近と言えども、今は領主によって安寧の生活が続いているからね。心配するようなことは早々ないだろう。それにしてもまさか、こちらの年々の問題である窃盗や農業者不足、そして今回の豊作問題を同時に解決してしまうとはね。周囲に都合がよすぎる縁談だと言われてしまうかな?」
「都合がよすぎて何が問題なのかしら?国が国として生活するには快適であった方がいいに決まってるわ。国に咎められたら、その時はその時よ」
「ああ、そうだね」
私の言葉にお父様はくすくすと笑っていた。
お父様の懸念は『国を差し置いて何勝手に事を進めているのか』って話だろうけども、こちらからすると知ったこっちゃねぇ、である。
そこへアクネシアが「おめでとうございます、お姉様」と満面の笑みで近寄ってきた。
「何がおめでとうございます、よ。アクネシア、貴女何か勝手に行動したでしょう?」
「あら、何のことか分かりませんわ?だってデルモント領はアトレイシア領から馬車で一週間近くかかるでしょう?たったの数日では何もできませんわよ」
「しらばっくれる気ね?ふん、まあいいわ。私がデルモント領へ行く時期になったら、アクネシアも準備なさいね」
妹は不思議な顔をして首を傾げる。
「私?準備?一体なんのです?」と、どうやら自分は蚊帳の外にいると思い込んでいるらしい。
「貴女も私と共にデルモント領へ行くのよ」
「はい!?え、ここにはお父様一人!?なんで!?」
「当たり前でしょう?アクネシア、貴女私に一人でデルモント領へ行けというの!?」
「いや、一応お姉様にはお付きメイドのレチーネがいるじゃないですか!なんで私??」
「レチーネには他のメイド達と同様の仕事しか任せてないわ。私はこちらの財政管理もあるのだから、ある程度距離を離すのは当たり前でしょう?私の世話はアクネシアがするのよ」
「そんなあ、聞いてないですわ!お姉様ったら酷い!」
「もう、この子はっ!カーマイン様としてもお付きが知ってる人なら気も楽でしょ!貴女配慮ってものを知らないの!?」
「ま、まあまあアクネシア……」
「お父様まで!?もう、私への配慮もお願いしますぅー!!」




