決めました。
「……オクタヴィア嬢、もう一度、よろしいでしょうか?」
「……!」
カーマイン様の熱の篭った視線が自分の不安がる視線とぶつかった。
どきりと跳ねる心臓は何かの合図のようで、同時に何かを覚悟しなければならない気に駆られる。
来る。
そう分かったから、肌はピリピリと何かを訴えた。
「私――カーマイン・デルモントはオクタヴィア・アトレイシア嬢との結婚を希望します。その為ならば、貴女が望むすべてを叶えます。貴女が欲する全てを捧げます。私と、結婚してくださいませんか?」
「……っ、……わ、私の我儘を聞いてくださるなら、受けますわ」
予想通りのプロポーズは、予想を超えて籠った愛の言葉に眩暈がしそうになって。
でも、これ以上断ると私の心が本当に壊れてしまうんじゃないか、という気さえしてしまった。
目が合えば動悸がするし、触れればどうにかなってしまうんじゃないだろうか。
そう思ってしまうくらい、今の私は恋に溺れてしまっている。
「――ッ、あの、オクタヴィア嬢……いえ、えっと……」
「?」
カーマイン様の顔が伸びて、頬が吊り上がる。
嬉しかった、でいいのかしら?
「えっと……早速、ですと節操がないでしょうか。その、ヴィア、とお呼びしても?」
「ヴィア?……あっ、愛称ですかっ?」
手で顔の下半分を隠すカーマイン様は照れながら、俯き加減の上目遣いでじっと私を視線に捕らえた。
何を言いたかったのか理解してしまって、つい私まで顔が熱くなってしまう。
ずっと熱いこれ以上熱くなると私はどうなってしまうのかしら?
いざ呼ばれると……私も愛称で呼ばなくてはならないように感じた。
「えっと、じゃあ……か、カーミーで如何でしょう?」
「――っ」
ひねり出した愛称を口にすると、カーマイン様は胸の辺りを強く握りしめて蹲ってしまった。
だめだったかしら。
それとも何か持病があった?
心配になって「ごめんなさい、カーマイン様」と声をかけると……再び顔を起き上がらせる。
「いえ、カーミーで」
「え?」
「カーミーと呼んでください。愛しています」
「んなっ」
愛称は悪くなかったみたい。
悪くなかったみたいだけど、どうして二の句に愛の言葉を囁くのだろう。
私が絶句してだめになりそうだ。
「ゴホン!その、どうせなら、こう、触れてみたいのですが……本当に節操無しになってしまいそうなので、今日はやめておきます。ヴィア、次は挨拶として正式に訪問させていただいても?」
「も、勿論ですわ……!お、お待ちしておりますっ」
テーブルを挟んでいるのに真横に居るような距離を感じてしまう。
この距離ですら心臓の音が響いてしまうんじゃないか、と心配になるくらい胸は高鳴って。
次会う日が、楽しみになってしまった。




