保留
悩みに悩んで、結局2人揃ってテーブルを挟んで椅子に腰かける。
時間を潰していることは、自分でも理解している。
少しでもこの時間を引き延ばして、全てを後回しにしたい。
自分の往生際の悪さに嘲笑すらしてしまいそうで、素直になれない自分に苛立ちすら湧いてしまいそうで。
「わ、悪いけど、私一人では決めきれないわ」
結局口から出た言葉に、自分ですら落胆してしまう。
決めきりなさいよ、と思いつつ、お父様は?アクネシアはどうなの?と聞いてしまいたい気持ちに駆られて。
どうして大事な場面では、自分で選べないのかしら……と、つい落ち込んでしまう。
そこへ「ええ、存じております」と予想外の返事が聞こえて、顔を上げた。
「え?」
「アクネシア嬢が仰られていました。オクタヴィア嬢はこれまでアトレイシア領を維持する為に、アトレイシア卿の手伝いをなさっていたこと。家族を強く思うばかり、自分の事を後回しにしてしまうこと。それから、自分に正直になれないところ。流石アクネシア嬢ですね、貴女をよく見ているようで、この返事も『きっとそう言う』と言い切っておられましたよ」
「んなッ」
どうやら言い当てられてしまったようで、顔が強い陽を浴びたように熱くなった。
恥ずかしいし、なんて余計な事を言う子だろうと思ってしまって、でも、アクネシアなりに私を気にかけているのだろうと納得できる。
「……ええ、そうですわ。私、亡くなった母に家族を気にかけるよう言われておりますの。だから、私にとっては家族が一番大切で、このアトレイシア領を守ることこそが私の仕事だと思っておりますの。簡単に男に靡くような女では無くて、幻滅したかしら?」
「まさか。寧ろ逆です。一層貴女という人が美しく素晴らしい方だと思いました。賢く気品に溢れ、家族を守ろうとする貴女の何処に、幻滅するような個所があるのでしょう?」
思わず二の句が継げなくなる。
悉く不満点を拒否され、この男の中では私など聖人なのか?と思うほど。
これまでの悪行を思い出し、つい口に出したくなった。
「カーマイン様は私という女を勘違いしておられますわね。社交界デビューとして先日のパーティに参加する際、聞かれませんでした?アトレイシア姉妹には気をつけろ、とか、すぐにパーティーを壊す奴らだ、とか」
「あっはっは、そんな噂もあったかもしれません。でも、そういった方々こそ何故そのようなことをなさるのか、俄然興味が湧きます。人の目が多くすぐに噂が広まるような場所で、理由なく暴れ回ることはないでしょうから」
「むぐ……」




