復活のオクタヴィア
「お父様、アトレイシア領の財政もかなり潤ってきましたわ。今年の作物は豊作と言ってもいい程でしょう」
「そうか。ありがとう、オクタヴィア」
書類を手に取り表を読み上げるオクタヴィア。
それを聞いてヴァモルトは大きく頷く。
「ただ、このまま作物が増えすぎても今度は消費にいくらかかかってしまいますわ。今年の良すぎた気候の反動が近々来ますわよ」
「そうだね。ふむ……オクタヴィアは何か案はあるかい?」
「今のところは。ですが早々に手を打たなければ――」
「――って、何してるのよ、お姉様ぁー!!」
真面目な会話を裂くように、アクネシアは大きく叫ぶ。
2人は驚きの表情で書類からアクネシアに視線を向けた。
「あらあら、どうしたというの?アクネシア。そんなに可愛らしい声を上げずとも、私はここに居るじゃない」
「アクネシア、何か気付いた事でもあったかい?何か計算ミスでもあったかな」
首をかしげる二人にアクネシアは頭を抱える。
「違うぅー!なんでお姉様がここでお仕事をしているの!ねえお姉様、あれから3日程が経ちましてよ!ちゃんとカーマイン様とお話されましたか?」
「あれから?お話?ふふ、アクネシアったら面白い子。どうして私がデルモント卿とお話をするの?それに、あの時ダンスしてあげて直ぐに私は逃げて帰ったのだから、どうせ呆れているわよ」
「どうしてそんな事言えるの!どうしてそんなこと思うの!お姉様はお姉様らしくちゃんとやったじゃない!お姉様にとてもお似合いで相応しい人だったと思うわ!」
「あら、アクネシアはデルモント卿の肩を持つのね?私は誰とも相応しくないから、このままでいいのよ。ねえお父様?聡明で仕事に一生懸命なお父様に、私は必要でしょう?」
「お、居ってくれるのはありがたいが……」
「ほら、お父様もこう言ってる」
終始ニコニコと答えるオクタヴィアにアクネシアは「んぐぐぐぐ……」と唸る。
始まったかも分からない恋路ではあるが、あの時の2人はずっと眺めていたい程に素敵な2人だと思った。
その分どうしてもオクタヴィアが仕事に打ち込むと、それが面白くなく感じてしまう。
いっそのことカーマイン様側から縁者の手紙が届けばいいのに。
「アクネシア、世の中なるようにはならないのよ。ふふ、私はこのまま悠々自適に好きな事をしていられる生活でいいのよ」
一度の落ち込みから復活したオクタヴィアの笑顔は、それはそれは輝かしいものだった……。




