仲の悪い姉妹
お久しぶりです。
神命迷宮以来ですね。数日で片手間に書いただけのクオリティですが、令嬢の恋愛系のお話書きました。
数日間2話更新していきます。よろしくお願いします。
「いい加減にしなさい、アクラネル!」
「お姉様こそ!毎度毎度いい迷惑だわ!」
貴族同士の楽しげな会話と優雅な音楽が響き渡る空間を裂くように、その怒号は突然響いた。
「なんですって!?誰の計らいでここに連れているというのよ!」
優美で美しい顔は鬼のような形相となり、さらりと真っ直ぐに伸びた髪を逆立てる姉、オクタヴィア。
「今日という今日は絶対に許さないんだから!」
一方の妹であるアクラネルは可愛らしい様相ながら、その目は猛獣のように姉を捕らえていた。
「一体何事?」「どこの令嬢なの?」
「アトレイシア伯爵家じゃないか……!」
「はあ、またか……」
二人の争いに周りの貴族たちはこぞってため息を吐き、頭を抱え始める。
オクタヴィア・アトレイシア、ならびにアクラネル・アトレイシアがこうして貴族たちが集まる社交の場で喧嘩を始めるのは、今に始まったことではない。
社交界デビューした当初はただの言い争いだった二人。
だが回を重ねるにつれて次第に手が出始め、今や誰もが頭を抱える二人となった。
そしてついにと言うべきか、アクラネルはワインが入ったグラスを手に取る。
「お姉様なんてっ!」
――パシャッ
グラマラスな体型を見せつけるような、薄い紫を基調とした妖艶なドレスがワインの赤に染まった。
オクタヴィアは汚された自身のドレスに視線を向け、そしてわなわなと肩を震わす。
「アクラネル……やってくれたわね……!くらいなさい!」
「きゃあ!」
蟀谷に青筋を立てるオクタヴィアは近くにいた給仕係から乱雑にワインボトルを手に取りひっくり返す。
オクタヴィアが食らった同色のワインがドボドボとアクラネルの頭からかけられた。
「あっ……ッ、お姉様なんて……大っ嫌い!!」
全身にワインを受けたアクラネルは目に涙を浮かべる。
そして拒絶を泣き叫ぶように吐き捨てて、会場を飛び出した。
「…………はんっ、何よ、すぐに泣き叫んじゃって。気分が悪くなったわ、失礼」
走り去ったアクラネルの姿を見届けたオクタヴィアは腕を組み、鼻で笑う。
そしてゆっくりとその後を追うように会場を去っていった。
「……」
「……」
華やかだったパーティは水をかけられたように冷えていた。
誰もが静かに二人が去った廊下を目にし、誰かが呟く。
「気分が悪くなるのはこっちだっつーの……」
二人が社交パーティに呼ばれ、こうして問題を起こすのも何度目だろうか?
醒めた会場内はひっそりと幕を閉じ、いつも淀んだ空気が貴族界を、そしてアトレイシア姉妹を包んだ。




