【第09話】地図を買う
「じゃあ・・・」
「ねえココ、入都料の確認してた?」
「あっ、してないわ!」
ギルドの説明も終わったタイミングでまた隣の受付けのお姉さんが顔を出して話しかけてきた。
入都料って、これか!
俺はポケットから、門番の人からもらった引換券をカウンターに乗せた。
「ああ、これよ。こちらは現金でいいかしら」
「現金で大丈夫です」
入金となると、また主任に来てもらわないといけないだろう。
たった200ゼニーだし。
「はい、ごめんね」
「たしかに。」
俺は200ゼニーを財布にしまう。
「さて、じゃあこれで全部ね」
「ありがとうございました」
「ううん。頑張ってね、ユージ君」
お姉さんは両手を自分の胸の前に持ってきてサムズアップをしてくれた。
これには癒された。
◇◆◇◆◇◆
「あら、いらっしゃい」
お姉さんと別れカウンターを離れた俺は、ギルドの売店に来ていた。
「持ってきた魔石が売れたので地図買いに来ました」
「あら、ポーションとかじゃなくていいの?」
「ヒーリング使えるので」
俺は左手に持っていた杖を少し上にあげた。
確かに格好が魔法職って感じではない。
あと今更だけどこの杖、杖っぽくないんだよね。
これがリズちゃんの新品の杖だったら少なくとも魔法職って感じなんだけど
アレに比べたら俺が持っているのは、ただの硬そうな棒だ。
「ああ、そうだったのね、じゃあこちらね。2500ゼニーよ。他には?」
「今は地図だけで。支払いはギルドカードでお願いします」
「はいはい、ではここにカードを載せてちょうだい」
「はい」
俺が受付けカウンターにもあった魔道具にギルドカードを載せると、目の前にある液晶に表示が出た。
-------------------------------
残高:45,000
-------------------------------
そこに売店のおばちゃんが地図の金額を打ち込む。
-------------------------------
残高:45,000
会計:-2,500
-------------------------------
「いいかい?」
「はい」
次の瞬間、チンという音がして液晶の表示が変わった。
-------------------------------
残高:42,500
-------------------------------
「ほい、もし名前書くんだったらこのペンを使ってもいいよ」
「名前ですか?」
「そう、地図の裏の右下に、名前を書く欄があるでしょ?」
「・・・本当だ」
子供か、と思ってクスリとしてしまった。
「なんせ見た目が同じものをみんなが使ってるからね、一応トラブル防止ってことで名前を書く欄がつけられたんだよ」
「書きます、・・・アルク村のユージ、と」
「あはは、村の名前まで書いたら間違えようがないね」
売店のおばちゃんが笑う。
「あ、そういえばここの食事付きの宿っておすすめないですか?」
「ん?宿に泊まるのかい?」
「はい、実は」
俺はカードをおばちゃんに見せる。
「あら、あなたいきなりDランクなのね」
売店のおばちゃんが驚いた顔をした。
「はい、FとEだったら、夜から朝にかけて、ギルドの裏手の道場が雑魚寝スペースとして開放されるみたいなんですけど・・・」
「あ~・・・まあ仕方ないわね。 じゃあしっかり稼ぐためにもしっかり休めておいしいごはんを食べられる宿に泊まらないとね」
「はい」
「うん、そうね、だったら私の旦那の弟がやっているところで良かったら紹介状を書くわよ」
「あんまり高くないですか?」
「まあ料金に関しては普通かな。でも旦那とご飯だけ食べに行くこともあるんだけど、ご飯は量もうまさも期待できるわよ」
「そこにします」
「あはは、じゃあちょっと待ってね」
売店のおばちゃんは紙を一枚取り出し、さらさらと紹介状を書いた。
なになに、
挨拶から始まり、有望な子におすすめの宿を聞かれたから紹介しといたよ、
いろいろヨロシク的なことが書かれている。
おばちゃんはそれを四つ折りにして渡してきた。
「ギルドを出て、左に行くと「やどかり亭」っていう看板が出ている宿屋があるからそこに入り口で受付けしてる人にこれを渡して。
長く泊まることを伝えたら、たぶんちょっとくらいは安くしてくれるからさ」
「ありがとうございます、助かりました」
「がんばるんだよ!」
おばちゃんはにっこり笑って肩をどんと叩いてきた。
◇◆◇◆◇◆
本当は服屋のことも聞きたかったんだけど、おばちゃんは仕事中だ。
地図を買ったので宿屋のことは聞けたけど他の事もいろいろ聞くのは気が引けた。
宿屋で聞いてみよう。
俺はカウンターで手を振る受付けのお姉さんに会釈をしてからギルドを出た。