【第06話】冒険者登録①
(ここだ、絶対)
少年の後をついていくこと3分ほど。
今まで来たことがなかった道を進んだ先にそれはあった。
目の前には「冒険者ギルド」と書かれた大きな看板が掲げられた建物。
「なんかすげえな・・・」
感慨深くなった。
でも次の瞬間に心が痛くなった。
本当なら幼馴染の3人とこの建物に・・・
「どうした少年」
振り向くと女性が立っていた。
美しいと思った。
顔もだけど、細いように見えてがっしりとした体格。
赤くて長い髪。
街娘のようなラフな服装、スカート姿だったけど、たぶん冒険者だ。
「・・・いえ」
「ふうん?」
「こほん。
俺、今から冒険者になるんですよ、ちょっと感動しちゃって」
「へぇ。 少年はこの街の子供?」
「いえ、歩いて半日の村から来ました」
「そうなんだ、その割に結構、垢ぬけた感じだね」
「そうですか?」
「うん、なんかやぼったくないというかさ」
「どうなんですかね」
といいつつ、前世の記憶が一部思い出されたからだろうなと思った。
言葉遣いも変わった意識はある。
今世でこんなにキビキビと他人としゃべったことない。
あと、少し前の俺だったらこんなに美しい女性と話をしたら、照れてまともな応対は出来なかったはずだ。
「まあいいか。
じゃあなっておいで、冒険者に」
「・・・はい! では。」
名前を聞いてこなかったので、あえてこちらも名乗らなかったし聞かなかった。
俺は踵を返し、冒険者ギルドに向かって歩き始めた。
◇◆◇◆◇◆
中に入ると、まず大きな吹き抜けに驚いた。
上を見ると3階建てのようで、天井には大きな窓がある。
中にいる冒険者の人数はそこそこと言ったところか。
俺は空いているカウンターへ向かった。
「こんにちは」
「こんにちは。新規登録お願いしたくて」
「しんき? ああ、初めてって事ね。
難しい言葉を知っているのね」
そういいながら受付嬢のお姉さんは引き出しから1枚の紙を取り出して俺の前に置いた。
「項目も多くないからこのまま書いてもらえるかな?
というか、服ボロボロね。大丈夫?」
おサルのせいで俺の服は大変なことになっております。
「はい、ケガは治ってるので」
俺は紙を引き寄せ、書いてある内容を見た。
名前、性別、出身、適性、使える武器の5つを書くだけでよさそうだ。
「文字は読める? 代わりに書こうか?」
「大丈夫です、ええと・・・」
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名前:ユージ
性別:男に〇
出身:アルク村
適正:そうりょ
武器:杖
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武器はちょっと迷ったけど、杖と書いた。
それでもこの間1分ほど。
「お願いします」
「はい、うん、大丈夫ね」
紙を見て問題ないとわかると、こちらを見てにっこりしてサムズアップしてくれた。
「あとは、何か推薦状とか持っていたりするかな?」
「いえ、そういうのはないですね」
「うんうん、後は自分で倒したモンスターの魔石を持っていたりする?」
「あ、あります」
「お」
俺は道中に襲ってきたサルの魔石をカウンターに4つ置いた」
「ん? ・・・この大きさはランクCかBの魔物じゃない?」
魔物にはランクがつけてある。
弱い順に、FからAまでだ。
「強かったです。
この辺にはいないサルの魔物でした。そうだ、黒いモヤが出ているやつです」
「黒いモヤってことは邪猿童子かしら、魔石が4つあるけど、4匹で行動していたのよね」
「4匹でした。
この街への道を歩いていたら、おーいって森の近くで呼ばれて、
最初人間だと思ったんです。 俺は困ったことがあって呼ばれたと思って」
「それで誘い込まれたのね・・・よく生きて・・・というか倒せたわね」
「そうですね・・・」
お姉さんは感心したような顔でこちらを見ていたが、
ふと思い出したように別の引き出しより10cmほどの透明な水晶を取りだした。
「一応、ユージ君が正しいってことを証明するためにこれを使うわね」
「これは?」
「指を軽く置いてもらって、私が質問したら、はいって答えてもらってもいいかな?」
「わかりました」
うそ発見器か。
俺は右手を水晶に乗せる。
お姉さんも反対側の水晶に指をあてた。
「この4つの魔石は、ユージ君が倒したサルの魔物から出た魔石で間違いない?」
「はい」
すると水晶が淡い水色に光った。
「うん、ありがとう。
順番が変わってしまったけど、続けて質問させてね」
「はい」
「ユージ君の適正は僧侶ですか?」
「はい」
「ユージ君の出身はアルク村ですか?」
「はい」
両方とも、水晶は淡い水色に光った。
「あとこれは答えても答えなくてもいいんだけど、
ユージ君は適正以外の力、例えばギフト持ちということでいいのかな?」
やっぱ聞かれるか。
「あれがギフトっていうのかは分からないんですが、
僧侶以外で、強い戦うための力があります」
「うんうん、わかりました。
では手を放しても大丈夫よ」
そういってお姉さんは指を水晶から離したので俺も離す。
「ご苦労様。
では証明書の作成が終わったら呼びに行くから、この建物の中のどこかで待っていてくれるかな?
あ、この魔石も1回預からせてね」
「わかりました」
俺は頭を下げてから受付を後にした。