【第41話】「未開の地」開拓のための魔物の討伐隊①
「未開の地」開拓のための魔物の討伐隊
それに参加すべく、俺は王都クシアに来ていた。
久しぶりの王都は特に変わりなくといった感じだった。
そのまま歩き、冒険者ギルドへ着いた。
人が沢山、冒険者ギルドの周りに居てしゃべっている。
俺はそのまま中に入る。
ちょっとしたスペースにはテーブルが並べられ、兵士たちが受付けをしていた。
テーブルの前には冒険者が数名並んでいる。
「あれかぁ」
ふと横のギルドのカウンターを見ると懐かしい顔が見えた。
「こんにちは」
「あれ、ユージ君!?」
「どもです」
「久しぶりね、戻ってきていたんだ」
「はい、テレポートを習得したから、実家に帰ってたら、おまえも参加して来いって言われて」
「えっ、テレポートってかなりレベル高くないと習得できないよね・・・?」
「はい」
「すご・・・えええ?・・・だってユージ君、冒険者になってまだ1年経ってないよね?」
「経ってないですね」
「あ、でもまあ、冒険者になる前から邪猿童子を4体倒してるし、それでうまくやれてるのね」
「まあタネとしてはそんなところです」
「ほう、それは凄いな」
女性の声が聞こえて振り向く。
「おや君は」
目の前には赤い長髪の女冒険者が立っていた。
腰には1.5mほどの剣がさしてある。
「確かついこの前に、ボロボロの服を着てギルドの前で立ち尽くしていた少年じゃないか」
その言葉でこちらも確信した。
「それ、俺ですね。というか、俺も覚えてますよ、冒険者になって来いって送り出された記憶があります」
「やっぱり君か。 随分とレベルが上がっているようだね」
赤い長髪の冒険者がアゴに指を当て、じっと俺の全身を見回す。
「・・・はい」
「っと、アレにはもう申し込んだのか?」
「いえ、これからです」
「もう今日で締め切りなんだ、早く行っておいで」
「え?」
先ほどの兵士がいた受付けを見ると、もう並んでいる者はおらず、
立ち上がった兵士が大きな声で何か叫んでいた。
あ、後30分で締め切るって。
「行ってきます」
「うん、ここで待ってるから」
◇◆◇◆◇◆
「参加か?」
「はい」
「では冒険者ギルドカードを」
俺はギルドカードを渡す。
「Cランク、しかも・・・頼もしいな」
そう言いながら兵士さんがさらさらと記帳をした。
「ありがとう、よろしく頼む」
冒険者カードを返しながら兵士さんがそう言った。
「こちらこそよろしくです」
◇◆◇◆◇◆
受付けを終えた俺は先ほどの女性の元に戻ってきた。
「受付け終わりました」
「お帰り」
赤髪の女性は自分の冒険者カードを見せてきた。
Bランク 剣士 アリア
「Bなんですね、すごいです」
俺も自分の冒険者カードを取り出して見せた。
「君は、ユージ君 Cランクの僧侶だったんだ」
「はい、恵まれたギフトを授かりまして、ここまで来ました」
「へぇ・・・」
「では冒険者の皆さん、外へ移動して下さい」
「ん? ・・・もしかして今日なんですか? 出発」
「ああ、そうだよ、今日というか、今からだね」
「とはいっても、しばらくは移動だけだよ」と受付嬢さん。
「さあ行こうか」
「え、俺何の準備もしてないんですけど?」
「大丈夫だ、自分のエモノだけ持っていればいい。それに君は使えるんだろ?」
アリアさんにぐいっと手を引かれギルドの外へ。そしてそのまま門を出て、南へと歩く冒険者の中に入り歩き始めた。
(えええ? というか俺私服なんだけど。
まあ、アリアさんが言うように、スキを見てテレポートで家に戻ればいいか・・・)
◇◆◇◆◇◆
「詳細も分からず申込みに来たら、そのまま出発という。こんなことってありますか?」
「そんなケースは君だけだろうね」
今はゆっくりとみんなで南下している途中だ。
先発隊冒険者たちが、1日置きに簡易キャンプを作っており、そこを経由しながら「未開の地」へ向かうらしい。
この「未開の地」だが、どこかにあるダンジョンからあふれだした魔物が多数徘徊しており危険なので立ち入り禁止となっている。
噂によると複数のダンジョンで数回分のスタンピードが起こって地上が魔物だらけらしい。
横を歩くBランクの剣士アリアさんは、何度かこの未開の地へ赴いて調査と間引きをしていたそうだ。
「魔物のランクはどんなものですか?」
「手前の方はDとEだな。
奥の方はそもそも分布がどうなっているかも情報がないが、
地霊士によると、しばらくは急激な変化はなさそうとのことだった」
「なるほど」
地霊士。
地面の精霊を扱う適正だ。
普段お世話になっている地図の作り手もこの適性を持つ人だ。
今回の作戦は、とにかく地上に出ている魔物を狩りまくりつつ、
目星をつけている場所に行きダンジョンがあるかどうかを確かめるというものだ。
そしてダンジョンを見つけたらみんなでなだれ込み、中にたまっている魔物を倒して当分スタンピードが起きないようにする。
そのあと簡易的な街を作り、道に結界士が結界を張っていく。
それを続けてできるだけ南下をしていくというものだ。
「しかしテレポートが使えるなら、もしかしたら声がかかるかもしれないな」
「物資などの運搬要員ですね」
「ああ、そうなると思う。
・・・ところで、ユージ君はホントアリアにはテレポート出来るのか?」
「行けますよ、ついさっきもホントアリアに居ました」
「なんと。 そうか・・・」
「要望あればテレポートしますよ」
「そのうちお願いするかもしれない」
「わかりました」
◇◆◇◆◇◆
日が沈むころ。
「・・・やっと着いた。
ただ歩くだけってきつすぎる」
「そうだな」
俺たちはようやく1つ目のキャンプにたどりついた。
すでに先発隊がキャンプを張っており、料理もふるまわれてた。
飯を食ったら、寝るだけだ。
いい待遇だな。
「では行こうか」
「はい」
俺は道中、今回の作戦でテレポートによる物資運搬をやってもいいとアリアさんに伝えていた。
であればと、このキャンプにいる指揮官の1人に紹介されることになっていたのだ。
「マーガス」
「お、アリアか、無事到着したんだな。彼は?」
「この少年はユージという。Cランクの僧侶でテレポートが使える」
「テレポートが?」
「協力してもいいとのことだったから連れてきた」
「本当か。
ユージ君助かるよ、では王都にテレポートすることはできるかな?」
「できますよ」
「そうか、実はこの作戦の一番の問題が食料でね、
もしユージ君が運んでくれるという事ならいろいろといい方にプランを変更できる」
「はい、そのつもりです」
(つまるところ、俺の食事のため・・・)
俺がこの依頼を受けたのは、道中でアリアさんに食事の話を聞かされていたからだ。
参加者には作戦中、携帯食料が無限に配布されるらしい。恐ろしい話だ。
「ありがとう。
ただ、運んでほしいのはもっと南下した場所にある拠点でね、まずは明日一緒にそこまで行こうか」
「わかりました」
「じゃあせっかくだから一緒に食事をとろう。今夜は焼肉だよ」
マーガスさんは嬉しそうに笑って俺をテーブルへと促した。
食事は楽しかった。
俺がテレポートを使えるという事で、かなりの接待モードになっていたと思う。
俺をちょっとおだてるだけでこの後も新鮮な食事がとれるのであれば、いくらでもおだてるよと、
心の声が聞えた気がしたけど俺も待遇が悪くなっては困るので聞こえないふりをする。
「ユージ君はCランクだけどテレポートが使えるなら、Bまじかなんだね。
もしかしたら今回の後方支援での功績でBに上がれるかもしれないねぇ」
「Cランクまでは討伐数などが重視されるが、CランクからBランクに上がるときは、
国や冒険者ギルドへの貢献という項目もあるんだ」
というような事を二人が説明をしてくれる。
なるほど、これはうまい。
Bランクになれば、さらに先の大陸への渡航許可も下りるという話だし、ちょっと楽しみも増えたな。
そういえば、俺がギルドカードを見せた時に、ギフトつながりで氷を操るギフトを持った少年の話になったが、
元々はハルベンという地方都市で活動していたそうだ。
しかしいろいろとトラブルがあって(起こして?)王都に流れて来ていたらしい。
で、こっちでもあんまりうまくいかなくて、そろそろほとぼりが冷めたんじゃないかな?という事でハルベンへ帰ったらしい。
協調性は皆無だし、まだこちらにいたとしても、どうせ参加はしなかっただろうという話だ。




