表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

【第04話】レベルアップ

「痛ってぇ・・・」


4体のサルの魔物から解放された俺は、痛みのためうずくまり悶絶(もんぜつ)した。


「くうう・・・

 ひ、ヒーリング!」


パァ・・・


俺が回復魔法の名前を唱えると、緑色の光が体を覆った。

これは魔法が発動し、ケガが治るときに見える光だ。


でも足りない。


「ヒーリング! ヒーリング!」


パァァァ・・・


更に体の周りを癒しの緑の光が覆うが、この全身のケガには全く足りていない。


「く・・・()ぅ・・・ヒーリング!」


パァ・・・


「・・・?」


4回目が使えたことに疑問を抱きつつも、

俺はヒーリングの緑の光が出続ける限り、何度もヒーリングを使い続けた。



◇◆◇◆◇◆


「治っちゃったよ」


ついさっきまではヒーリングを1日3回までしか使えなかったはずだった。


なのにあのひどいケガを完治するまでヒーリングが使えた。

サルの魔物を倒したことでいくつかレベルが上がったからだろうけど、まだMPに余裕がある感覚がある。


「・・・あんな魔物初めて見た」


このあたりの森は大人たちと何度か来たことがあるが、

あんなに大きくて強い魔物は初めて遭遇した。


他の魔物の説明は何度も聞いたが、そもそもサル型の魔物は1度もない。

何となく村の人たちに聞いても分からないだろうなと思った。


「服ボロボロ・・・」


体の痛みがなくなったので体を調べる。

噛みつかれたケガの跡や、噛みちぎられたはずの腕の皮もきれいに治っていた。

体中血でベトベトだけど、新しく出てくる血はない。


サルの魔物は俺を殺すためではなく、いたぶって楽しむために噛みついていたので

それが致命傷にならずに済んだようだ。


「まあ、めちゃくちゃ痛かったけどね・・・」


一息つくと、急に身に宿った新しい力を認識した。


・ヒーリング(微)→(小)に成長!

・スピードアップ(小)を習得!

・プロテクション(小)を習得!

・クリーニング(小)を習得!


「うおお、これはかなりレベルが上がってるぞ」


本来ならたくさんの修行だとか、魔物退治を積み重ね、

ようやく1つ手に入るスキルが一気に3つと、ヒーリングに関してはスキルの成長までした。


あのサルはどれだけ強力な魔物だったのか。

なんとかなったのはアレがあったからだ。

ハンドガンがなかったらあんな頑丈(がんじょう)そうな魔物倒せなかっただろうなと考えて思い出す。



「そうだ、ハンドガン」


俺は慌てて自分の足元を探す。


「あれ、どこにも無い・・・・あ」


悶絶したタイミングで地面にとり落としたはずのハンドガンはどこにもなかった。


が、代わりに自分の両方の腰に、半透明なガンホルダーと、そこに収まっている半透明のハンドガンが見えた。


「これ・・・」


そっとハンドガンに触れてみるも、手がすり抜けた。


何度か触ろうとしていると、不意に右手にハンドガンが収まった。

角度にちょっとしたコツと、グリップ部分で軽くつかむアクションをする必要があるようだ。


半透明だったハンドガンは、しっかりと艶消しマッドな黒いハンドガンに変わっていた。


「・・・ああ!」


ハンドガンを握りしめていると、ふっとどこか懐かしい感覚が浮かんできた後に、思い出した。



「これゾンビハンターのハンドガンじゃないか」



ゾンビハンターとは、VRゲームの中で特に好きだった、

ハンドガンでゾンビを倒しながらストーリーを進めていくアクションゲームだ。


腰の右と左に半透明のガンホルダーがあり、拾ったハンドガンをそこにしまっておくのだ。


もちろんこの世界にVRゲームなんてない。

これは前世の日本で会社員やっていたころの記憶だ。


「俺の前世の記憶だ。こんな事が・・・」


しかしいくら考えても自分の名前とか、このゾンビハンターというゲーム以外のことは不思議と思い出せなかった。



余談だが、このゲームの主人公、とてもカンがいい。


「嫌な予感がするな・・・」で大抵の危機を回避する。

なんでもありかと思うぐらい多用している。


何の脈略もなく全滅の危機を回避した時に、仲間にアンタ超能力者なのかと言われたが、

昔からカンがいいだけと答えていた。


「どうでもいい設定まで思い出しちゃったな。

 まあそれはいいか、前世は前世、今世は今世だ」


不思議と思い出せないことは特に気にならなかった。


俺は自分の体を見る。


現在、右側のホルダーにはハンドガン、左側のホルダーには小型のサブマシンガン

右肩にはライフル、左肩にはショットガンが肩掛けのホルダーに収まっていた。


後はハンドガンではないが、半透明のヘルメットには、LEDライトと暗視ゴーグルもついている。

こちらはしばらく使うと使えなくなるが、時間がたつとまた使えるようになる謎技術で作られたバッテリーを搭載している。

最大まで強化しているので、数時間は点灯してくれるはずだ。


「懐かしいな、俺のプレイスタイルに合わせた、最強の構成だ。 あ、そういえば」


武器はたくさんあった。

ロケットランチャー、火炎放射器、ボーガン、ラジコンボム。


今度はおなかのポシェットに意識を向けると、あった、インベントリだ。

左手で半透明のインベントリを持ち上げると、目の前にリュックの形をしたインベントリが現れた。


手りゅう弾、包帯(HP回復)、携帯食料(スタミナ、HP回復)、クスリ(状態異常回復)などが2つづつ入っていた。

インベントリは9のアイテムが入るので1つ空いている形だ。


ちなみにポシェット型のインベントリを展開するとリュックの形になるのは、最大まで強化した影響だ。

深い意味はない。ただ、そういうゲームの仕様だったのだ。


左手で掴んでいたインベントリを離すと、インベントリは半透明になり、しゅっと小さくなりながらおなかのポシェットの位置に移動した。


次に首の後ろに手をやり、掴んで目の前に持ってくる。

偵察(ていさつ)ドローンだ。


「こいつも有りか」


左手で半透明の、おでこのゴーグルをつかみ目の位置にまで下すと視界がドローンに切り替わった。

ここまで確認できれば十分と、ドローンモードを解除した。


俺は改めて右側のホルダーよりハンドガンを取り出す。


今回はすんなり実体化させられた。

ハンドガンのグリップを、大まかに正しい方向で掴むようにすれば実体化できる。


「このハンドガンが使えるなら、ソロでの冒険者生活も全然ありだな。

 いや、弾はどうするんだ?」


喜んだのもつかの間。

右手のハンドガンをよく見ると、(94/100)と邪魔にならない位置に白い文字が表示されていた。

他の武器も手に取り見てみる。


サブマシンガン 250/250

ショットガン 50/50

ライフル 30/30


先ほど使ったハンドガン以外は弾はMAX。


「これ、時間で弾が補充されたりするのかな」


ハンドガンを握っていた手を開くと、ハンドガンは半透明になりながら、しゅっとホルダーに戻っていった。


「っ」


とその時、ポワポワした夢見気分だったのが空腹感を感じ現実に戻された。


「そういえば、そろそろ昼ご飯を食べようと思っていたんだった」


俺は辺りを見まわし、草の上に落ちていた布に包まれたおにぎりを発見する。

踏まれた様子もなく無事なようである。


「よかった。

 こんな場所で飯なんて食べてられない、早く道に戻ろう」


数歩進んでから思い出したように振り向く。

投げ捨てられた杖と、3cmの紫色の魔石を4つ拾いあげ、足早に森を抜け道へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ