【第38話】テレポートを覚えた
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Cランクの剣士、フック
Cランクの剣士、ビーツ
Cランクの魔法使い、リリ
Cランクの僧侶のユージ
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フック達とパーティを組んで1か月。
最初こそ休憩多めだったんだけど、時短のために俺にはMPポーション(小)が支給された。
で、休憩=ヒーリングに置き換わった。
戦闘2~3回に1回休憩だったのが、今は20回に1回休憩くらいになった。
MPポーション(小)は1,000ゼニーなので1体魔物を倒せば大量のおつりがくる計算なのだ。
俺なりに考えて、戦闘が終わって魔石を拾ってからヒーリングではなく、
戦闘の終わり際にヒーリングを掛けることにより、
魔石を拾う時間以外での時間的ロスも少なくなった。
という訳で、この数日はかなりのハイペースで魔物を狩りまくっていた。
そして今日俺は念願の魔法を習得したのであった。
・帰還魔法(中)→(大)に成長!
・テレポートを習得!
訪れたことがある僧侶系の結界が張られている場所への転移が可能になる。
人数と距離が離れているとMPを多く使う。
熟練度が無い魔法。
それはフォレストウルフの群れをばっさばっさと倒し終えた時の事。
「あっ、レベル上がりました」
「私も~」
「おめでとう」
「おめ」
「あり~」
「ありがと・・・あ!」
「どうした?」
「ユージ君?」
「新しい魔法、テレポート覚えました」
「うおお、まじか! おめでとう!」
「おめでとう~」
「おめでとう、すげぇな! てことは町からこのポイントの入り口まで飛べるって事か?」
それぞれからお祝いの言葉を頂く。
この森の各入口にある馬車の停留所には僧侶の結界が張られているためそこに飛ぶことが可能なのだ。
「消費MPが分からないので、一回実験してみたいです」
「そうだな」
「だったらユージ君には更なるMP回復ポーション支給じゃない?」
「確かに。ユージはどうかな?」
「俺はいいですよ、時間も節約になりますし、
MPポーションの(小)でもあれば片道のテレポート分は回復できると思います」
魔法を意識したら、そんな感覚がしたのでそう説明した。
「いいじゃな~い」
「じゃあ次からそうしよう。
ユージには追加でMPポーション(小)2本の支給だな」
リーダーのフックがメモ帳を取り出し書き込んだ。
あれは反省会などでも活躍するパーティー帳だ。
馬車の切符は往復1人1,000ゼニーで、MPポーション(小)も1つ1,000ゼニーだ。
これが半分になるのもいいが、なんといっても時間短縮ができる。
早く移動して魔物を1体でも倒せればそれだけで元が取れるし、
馬車での移動時間などの20分で、少しでも多く倒せれば収入も、支援魔法の熟練度も上がる。
テレポートの熟練度も1回で4人分×往復で2回上げられるからうまいだろう。
俺もみんなも大賛成だった。
ちなみに1日の収益はパーティ4人で割った後で、30万前後になっていた。
これは×4すると120万なので、一人でギフトを使っているよりは稼いでいることになる。
もちろん、自分が貰えるのが4分の1なので手取りは減るが。
このところのパーティの1番の話題と言えば、どうやったらもっと魔物が狩れるか、だった。
この頃はみんな同じ目標を見ていたし、完全に心を許していた俺はギフトの話をした。
もちろん、「導入すべき」で満場一致だった。
俺が手持ち無沙汰になっている時に、他を疎かにしないと思ったタイミングで使っていくことになったのだ。
だから頻度はかなり低い。
一番うるさくないハンドガンだけを使うことにした。
もちろん何も考えずに提案したわけではない。
リスクも考えて出した答えだった。
支援魔法も切れたらすぐにかけなおすので熟練度は変わらず上がり続けている。
ホーリーライトは、たぶん使わなくなると思う。
もともと役に立ってなかったしいいだろう。
◇◆◇◆◇◆
テレポートを覚えてから更に1か月後
冒険を終えて清算しに来たギルドで、俺は個室に呼ばれた。
3人は清算したら待っているとのことで別れた。
「やあ、来たか。久しぶりだねユージ君」
そこで待っていたのは
ここで始めて個室に呼ばれたときに居た、豪華なバッチを付けたおじさんだ。
今日もつけてる。
「こんにちは」
「こんにちは、ありがとね来てくれて」
「いえ」
「実は、いくつかのパーティから話を聞いてね。
ユージ君が今所属しているパーティでの待遇を聞いておきたかったんだ」
「え、そうなんですか?」
「うん。
あと最初のユージ君の希望だと午後だけだったと聞いたんだけど、それも今は朝から晩までらしいじゃん。
この辺、ユージ君は無理してないかなって」
そう言いながらおじさんは足を組んでにっこりと笑った。
「・・・一応、報酬はちゃんと4分の1で貰ってるはずです、一緒にギルドに来て清算するので」
「うんうん」
そこは知っているらしい。
「あとは、確かに最初は午後からって希望だったんですけど、
自分も伸び悩んでいるところがあって、・・・それで先輩の僧侶に相談して聞いたんですけど、
そういう時は普段使わない魔法の熟練度を上げたら魔法の底上げになるって。
そういうのも考えていたら、あのパーティその辺の俺の利益と合致してて・・・
いいかなって思ってます」
「ああ~なるほどね」
「なので、無理はしてないです」
「うんうん、分かったよ。
結構忙しそうな狩り方してるけど、そこも問題ない?」
「問題ないです、というか、ちょっと楽しいです」
俺ははにかみながらそう言った。
あのせわしなくみんなで移動して敵を探しては倒し、魔石をせっせと拾っては移動して・・・が、実はちょっと楽しい。
今日はどこまで行けるのか、みたいな感じで。
「あっはっは、そっか~」
豪華なバッチを付けたおじさんは笑った。
「今君たちがこのギルド一番の稼ぎを出していてね、でもそういう話だったら大丈夫か」
「俺たちが一番ですか」
「そう。この西エリアでね」
「おお」
「ふふふ、もしもビ・・・いやこの話はまだいいか」
「え?」
B? Bランク?
「ごめんね、今日はそれだけが知りたくて呼んだんだ。
みんな待っているだろ、さあ行った行った」
「ん、ありがとうございました」
俺は頭を上げてみんなの元へ向かった。
この日は一人頭、40万ゼニーの分け前となった。
最初はお金より熟練度だって言ってたけど、
1日で40万の手取りって半端無いなと考えながら俺は3人とおいしい夜ご飯を食べた。




