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【第33話】南エリア→西エリア

10日後


無事にクリーニングの依頼は終わった。


今回の清掃箇所(せいそうかしょ)大浴場(だいよくじょう)炊事場(すいじば)だった。

会議だか何かで決めて、みんなでおんなじ場所にしたらしい。


しかしやってみて、これが一番きついと思った。

ラスボスが先に来たって感じ。


何がっていうと、どの宿でも一度のクリーニングで終わらなかったのだ。


まず大浴場は、木の枠が真っ黒だったのが、木の本来の色が見えるまで何度もクリーニングの魔法をかけ続けたのだが

広いうえに同じ場所に何度もかける必要があって、布団だとセットで1,000ゼニーだったけど、

明らかにそれより労力かかっているのに、安いなって思った。

天井板も同じだ。


水に強い木材で、比較的黒ずんでいるのが表面だけだったのが救いだった。


次に炊事場(すいじば)だが、こちらも長年で積み重ねられた油汚れなどがひどく、

同じ場所に何度もクリーニングを掛けてようやくピカピカになった。

まあ石窯(いしがま)だからピカピカなんてしないけど。


料理人からはコゲがなくなり本来の火力が出たと喜ばれた。

仕事をした宿でその日は一泊して、次の宿へ移るのは同じだ。


各宿の(まかない)は今回もちゃんとおいしかった。


気になる成果は・・・・


残念ながらクリーニング魔法のレベルはまだ(中)のままだ。

あれだけの大仕事だったのに、まだ足りないらしい。


成果とは違うが、仕事場がそのまま宿になるので意外と時間を持て余すので何度も地図を見たり

ラティスのギルドで貰った「アギリ大陸旅路案内」を読んで今後について考えた。


この指名依頼が終わったら、また暇になって嫌なことを思い出すだろうから、やることを一杯考えておこうかと。


そこで気づいたのが、南エリアはダンジョンのランク高くない。

徒歩1時間の1番遠いところまで行って、ようやくCの魔物が1種類出るといった感じだ。


「なんだか効率が悪いな」


他のエリアの情報も見てみると結構出てくる魔物が違うようだ。

強さとしては、南から北に行くにつれ魔物も強くなりがちといった感じだ。


西、東、北のエリアだと、徒歩30分ほどでCランクの魔物が出るダンジョンはざらにあった。


(ん~、トワとギルドで顔を合わせるのも嫌だし、一度受付けのお姉さんに聞いてみようかな)



◇◆◇◆◇◆


「エリアを移動しましょう」


「やっぱそれしかないですよね」


思い切ってお姉さんに話して見たら、エリアの移動を提案された。


会えないのはさみしいけど、自分のランクにあったエリアで活躍してくれる方がうれしいからと言われた。


俺への指名依頼も受付けをストップしてくれるらしい。

ただし、西エリアで俺の実績を見て、新たなクリーニングの依頼は入る可能性はあるとのこと。


「クリーニングの依頼は受けてもいいですよ、熟練度が上がるのはうれしいので」


「わかりました、では手紙を出しておきますね」


「ありがとうございます」


「西エリアでも頑張ってくださいね」


「はい」


という事で今日、俺は西エリアへ移動する。



◇◆◇◆◇◆


王都内の馬車で西エリアへと向かう。


俺はあの日師匠が去っていった馬車乗り場へやってきた。

この馬車乗り場はホントアリアの低い位置にあるため、一番時間がかかるルートらしい。


(誰かに聞けばいいのかな)


俺は馬車の近くで休憩していたおじさんの御者(ぎょしゃ)に教えてもらい、

券売所で西エリアまでの切符を買った。


「3,000ゼニーです」


「冒険者ギルドカードで」


「はい・・・有効期限は一週間です」


ガッシャンと日付のスタンプを打ち、パタパタと振って乾かしてから切符を俺に手渡してくれた。


切符は5cm×10cm、厚さが1mmくらいで、

西エリア行きと大きく書かれた下に有効期限が書かれていた。

背景にはホントアリアの絵が描かれていて、なんかいいなって思った。


「西エリアって書かれた乗り場が出てまっすぐ行ったところにありますので、気を付けて」


「ありがとうございます」


俺は歩きながら切符をしげしげと見た後に、その足で西エリアへの馬車へ乗り込んだ。


「出発は10分後だ、人が来たらどんどん詰めてくれ」


「わかりました」


びりっと右下の角を破かれた切符を返してもらいながら俺はお礼を言う。

途中のトイレ休憩の際、これがないと乗れないから捨てないようにと注意を受けた。


中には3人の人が座っていた。

俺も座る。


(ふう・・・)


師匠たちもいないし、それが寂しさに拍車をかけてたから、南エリアを出る事に未練はなかった。


(新しい場所で頑張りますか!)


俺は大きく息を吸い、気合を入れた。


そして息を吐きながら俺はカバンから本を取り出す。

タイトルには「杖を自作する本」と書かれていた。


兄弟子からおすすめされていた本だ。

杖の種類とか仕組みが知れるから僧侶や魔法使いは読んだ方がいいって言ってた。

ちょうど昨日本屋で見つけて買った。


パラパラと読んでいると馬車は動き出した。



◇◆◇◆◇◆


・・・ンカンカン!


「終点だよ、お兄さん」


カンカンとベルを鳴らしながら御者(ぎょしゃ)のおじさんに起こされる。

いつの間にか俺は寝ていたようで、すでに他の人は居なくなっていた。


「あ、ごめんなさい」


「ははは、大丈夫、ゆっくり降りな」


俺は慌てて馬車から降りた。


「おお、ここが西エリアかぁ」


「初めてか? 冒険者ギルドや宿屋とかだったら、あの坂から行くといいぞ」


「分かりました。

 ありがとうございました」


「おう。まいど」


もう少しで夕方だったので今日は宿を取って、ギルドは明日行くこととした。

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