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【第31話】初めてのパーティを組んでみる

10日後


無事に宿の布団クリーニングの依頼は終わった。

仕事をした宿でその日は一泊して、次の宿へ移るような感じ。


各宿の(まかない)はおいしかった。

でも(まかない)結局賄(まかない)でしかないので、また食べたいとは思わなかった。


というのはある宿で、賄でもいいんでしょって感じだったからだ。

そこの賄はあんまりおいしくなかった。


ちなみにクリーニング魔法のレベルはまだ(中)。

相当な数をきれいにしたが、これだけでは(大)には上がらなかった。

まあそんなに簡単ではないかと、悔しい気持ちも特にはない。

ただ漠然とここから長い予感がしている。


最後の宿で言われたが、この後は浴室とか、食堂などの依頼をする予定らしい。

完全に足並みそろえてるな。


「僧侶の手引書」には、しっかりと汚れを取れた方が熟練度が上がりやすいと書かれていたので望むところだ。


今日は最後の仕事をした宿を出て、ギルドへやってきた。



受付けのお姉さんに聞いたら今日はまだその依頼は出ていないようなので、ほかの依頼を探して見る。

俺はギルドの壁際にある依頼を見てみた。


「うーん、これといったものはないなぁ」


今まで適当に魔物を狩ってレベル上げたり、お金がたまるのをにんまりしていて

クリーニングの依頼は別として依頼を受けることはなかった。


掲示板にあるのは、薬草採取からとある村の魔物を減らす依頼など。


ここは冒険者も多いし、ダンジョンはいつも人がいっぱいなので、

スタンピード抑止のための、〇〇の魔石いくつ系の依頼はないようだ。


ランクをBに上げるには、王都から離れたところに行く必要があるらしい。

指名依頼が来るなら、それはしばらくは出来ない。


(まあ情報集めつつ、指名依頼が来るのを待つか)


「こんな時間にはもういい依頼はないよ」


そんなことを考えていると、急に女の子から話しかけられた。

声の主を見てみると、剣士の装備を身にまとった女の子だった。


革製のヘッドギアに、ちょっと長めの髪で、視界も半分ふさがってそう。

後は、革の鎧、革の小手、革のブーツ、革のマントとに、1.5mほどの剣。


第一印象は、髪切った方がいいよ、って感じだった。



「・・・ああ、だから微妙な依頼しかないのか」


「うん、ねえ、あなたCランクの僧侶だよね、今は1人でパーティは組んでるの?」


「組んでない」


ドキリとした。

これは、パーティの誘いかな?!


「じゃあパーティ」


「俺とパーティ組むって事?」


「うん、私はトワ。ランクDの剣士、ダンジョンいこう」


(本当にパーティの誘いだった)


「・・・ああ、いいけど、しばらくってこと?」


「うん、合わなかったら解散」


「ああ、わかった、ならいいよ」


俺はこの女の子とのやり取りに若干不安を覚えながらも、

人生初のパーティを組むことにした。


「受付行こう」


「ああ、申請ね、パーティの・・・って強引な奴だな」


Dランクの剣士って親父と同じ強さって事か。

だったら問題ないな。


その日俺は初めてパーティを組んだ。

しかも女の子と2人パーティ。



◇◆◇◆◇◆


「お昼ご飯どこで買うの?」


「お昼はダンジョンの横で買ってる」


「割高じゃない?」


「?」


「・・・今日は俺門の横で買っていくよ」


「じゃあ私も」


2人で門の内側にあるサンドイッチ屋さんでお昼ご飯を買った。

俺は大きなバゲットにベーコン、レタス、トマトとドレッシングが掛けられたものと、

ベーコンの代わりにゆでたまごを輪切りにして入れてある2つを買った。


女の子はゆでたまごの方を1つ買っていた。

剣士だけど、かなりの大きさなのでさすがに1個で足りるのだろう。


2人で近くの井戸から汲んできたらしい水が出るワイン樽みたいなのから、水をすいとうに入れてから出発する。

なんかちょっとうれしい。



◇◆◇◆◇◆


王都から歩いて30分程した場所に洞窟タイプのダンジョンがあった。


(サンドイッチの価格が2倍・・・)


ダンジョンの横では若い売り子さんが屋台を出しており、お肉のサンドイッチなどを売っていた。


「頑張ってくださいね」


そういって、冒険者の手をぎゅっと握って笑顔で送り出していた。


「いつもはここで買ってるの?」


「うん、重かった、ここで買えばよかった」


(え?)


「じゃあ次からそうしようか」


「うん」


(まあ俺は門のところで買うけど・・・)


”人が重視する事って、人それぞれ、

パーティを組むうえで、自分が被害を受けないならそれは好きにさせたらいいよ、

自分の考えを押し付けてもケンカになるだけだからね。”

という事を兄弟子から言われた。


つまりこれがまさにそうか。


最初は値段が2倍も違うことを伝えて

門で買うことをお勧めしようと思ったけど、確かにケンカになりそう。

会って1時間もしない子だし、パーティを組んだばかりでケンカしたくない。


入り口の前でトワがランタンに火をともしこちらに渡してきた。


「もってて」


「わかった」


「敵が来たら後ろに下がって」


「わかった」


俺は自分とトワにスピードアップと、プロテクションの魔法を唱え、中に入った。



◇◆◇◆◇◆


「はっ!」


ドカッ!


トワの戦いと言えば、まあまあ強そうだった。

走ってくる狼型の魔物を突きで止め、すばやく剣を振り下ろして狼にダメージを与えていた。


(って、どう見ても斬れなさすぎじゃない?)


なかなかの剣の速さだったにも関わらず、狼の魔物は斬れていなかった。

ランタンの光で見えたトワの剣は・・・


(なんか汚れてないか?)


「ユージも手伝って!」


「ああ・・・ホーリーライト!」


ドベシッ!


狼が吹き飛んで壁にぶつかる。


確かにそうだ、2人で戦っているんだった。

観察している場合じゃなかった。


「ナイス」


「おう」


壁にぶつかって動きが鈍った狼型の魔物をトワがタコ殴りにして、黒い煙になって消えた。


「魔石持ってて」


「ああ」


「前歩いて」


「わかった」


といいつつ俺はトワの剣をランタンで照らす。


(欠けてない? あ、錆びてる!)


「なに?」


「・・・いや、行こう」


俺はちょっと動揺しながらもダンジョンの先へと歩き出した。



◇◆◇◆◇◆


10回ほどの戦闘を終えてお昼休憩になった。


俺が魔物除けの結界を張り二人でサンドイッチを食べる。


「なあトワ、その剣錆びてないか?」


「うん・・・」


「俺のおやじも剣士なんだけど、砥石(といし)で刃を整えたり、錆防止の油みたいなのを塗ったりしてるんだけど、やってる?」


「といし? 分からないよ」


「剣のメンテナンスしてないの?」


そう言ってからはっと気づいたが遅かった。


「ユージは剣士じゃない。適当なこと言わないで」


「いや・・・そうだな・・・気にしないでくれ」



◇◆◇◆◇◆


そのあとは、意外にスムーズに狩りは進んだ。


彼女の剣は相変わらず鈍器のようだったけど、彼女がひきつけて俺が後ろからホーリーライトの魔法で仕留める。

そんなサイクルで意外と歯車がかみ合って、俺たちは魔物を倒し続けた。


「帰ろう」


「わかった」


「あっち」


「あっちね」


俺は彼女の指示する通りの道を歩き、外へ出た。


「おお、真っ暗だな」


「でも道は見える」


「ギルドで換金?」


「うん」


ギルドで換金して、ちょうど半分に分けて、俺たちはギルドの前で別れた。

1人当たり9,000ゼニーの収益となった。


「・・・疲れた、ここから一番近い宿は・・・と」


俺は一番近い、以前仕事をした宿へと足を向けた。

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