表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/66

【第30話】複数の宿から指名依頼

師匠に弟子入りして半年後


「よし、ユージ、お前はもう卒業だ」


「ありがとうございます!」


パチパチパチ・・・


俺はリュウタロウ師匠の元から旅立とうとしていた。


「半年でやった型なんかは、少しするとあっという間に忘れる。

 お前はノートに練習をまとめていたようだから大丈夫だろうが、

 手に入れた技を維持したかったら定期的に動きの確認をしておくように。

 とにかくやらなくなったらあっという間に人間は退化する。

 だから、この俺の半年を無駄にしないようにしっかりと励んでくれ、以上だ」


「はい、ありがとうございました!」


パチパチパチ・・・


この半年の修行で俺はかなりの成果を上げていた。


特に3か月目で呼ばれてきたこの王都に住む3人の兄弟子たちが合流して、

修行の手伝いをしてくれてから自分でも驚くぐらい成長をしたと思う。


兄弟子や師匠との模擬戦でも、

師匠には勝てないのは当然として、

兄弟子の1人には全く歯が立たないけど、他の2人は勝てるようになっていた。


それは相手の癖を覚えて戦う、いわゆる人読みではなく、毎回相手の隙を伺って攻撃したり、

攻撃を受けたときのとっさのカウンターでその都度打ち負かすというものだ。


魔物の中でも、E、Fランクくらいなら格闘技で倒せるレベルにはなったらしい。



「お前ら、弟弟子への言葉はあるか?」


「出た出た。

 そうだな、調子に乗って格闘家にはケンカを売るな!以上!」


「オス!」


俺が一度も勝てていない最年長のおじさん兄弟子ドルさんが笑いながらそういった。


みんなの目が2番目の兄弟子ボンドさんに向く。


「じゃあ俺は、

 練習は最低月に1回はフルでやった方がいいぞ。

 それこそ、その1日は、それだけに使うって意識でな。

 まあそんな俺は、もうお前に勝てないんだけどな」


「お前は途中から負け癖がついていたからな」


「うう・・・」


師匠と2番手で俺への言葉をくれた兄弟子とのやり取りにみんなで笑う。


「じゃあ最後は俺か。

 格闘系は兄弟子2人が言ったから、俺からはそれ以外を。

 こほん。本を読む習慣は、回数は減らしてもいいけど続けた方がいいぞ。

 本は先人達(せんじんたち)の知識の結晶だ。

 ジャンルを問わずに読むことで、世界の見え方が変わって、余裕もできて、いつも新鮮な感じで生きれて楽しいから絶対続けろ!」


「オス!」


いつも楽しそうな一番下っ端の兄弟子リヤルさんが読書についての助言をくれた。

この人は弟子入りして本を読むようになるまでは、世界が灰色に見えててつまらない人生を送っていたから

本読めと今までにも事ある毎に勧めてくれてていた人だ。

俺もそう思うから続けようと思っている。


「最後にユージからは何かあるか?」


来た。

最後にこれを振られるのは3番目の兄弟子に聞いていた。

ありがとう兄弟子


「はい、これで一生の別れというのはさみしいので、

 いつかまたみんなで集まって、1週間とかでもいいので練習出来たらと思いました。

 あと、兄弟子と休みの日にパーティ組んで行ったダンジョン、とても楽しかったです!

 ありがとうございました!」


「僧侶4人のパーティか、なかなか面白そうだな」


「真面目かよ!お酒飲むだけでもいいじゃねえかよ!」


兄弟子の言葉にみんなが笑った。

そして大きな拍手が道場に響いた。


ちなみに受付けの女の子と、ここの主人、後は関係ないけど、練習に来ていた人たちからも拍手を貰って

俺はペコペコと頭を下げた。


俺の師匠と兄弟子たちとの楽しい修業は今日で終わった。

今めちゃくちゃ笑ってるけど、心の中には寂しさが沸き始めていた。



◇◆◇◆◇◆


道場の前で最後のお別れをして兄弟子たちは帰っていった。


「そうだ師匠、グローブ代はどうやって渡したらいいですか」


「それは餞別(せんべつ)だ。次からは直接工房で買ってくれ」


「・・・そんな気がしました。 師匠、今までありがとうございました」


「おう」


「なんとかやっていける気がしてます」


「なんとかかよ。まあ、いいんじゃないか?

 ステゴロは最終手段だからな。

 そこまで追い詰められた時点で基本的には詰みだ。

 もしかしたら打開できるかもの可能性だと思ってくれれば。

 頑張れよ、どこを目指しているかは分からないが、

 途中で行き先を変えてもいい、ユージが納得いくような人生を送れることを願う」


「はい、ありがとうございます」


俺は頭を下げた。


「じゃあな、まあなんかあったら家を訪ねてくれ」


師匠は王都の北エリアに家があるらしい。

手を振って師匠は歩いて馬車乗り場の方向へ歩いて行った。



「はあ、終わっちまったな。

 さて俺は、久しぶりに冒険者ギルドへ行ってみるかな」


俺はさみしさに心が支配される気配を感じ、冒険者ギルドの方向に足を向け歩き出した。



◇◆◇◆◇◆


久しぶりにギルドへ入る。


兄弟子たちとのダンジョンアタックの際も、ここには寄らずに行った。

しばらく見ていなかったが、親切にしてくれていたお姉さんの顔はすぐに分かった。


時間帯的にも冒険者たちも少ないし、どうせやることもないから並ぶか。


「次の方・・・ユージさん! お久しぶりですね」


10分後。

名前を呼ばれて本から顔を上げた。


「お久しぶりです、まあこの辺にはずっと居たんですけど」


「修業されていたんですよね、無事に終わったんですか?」


この人は手紙の内容を見ているので事情を知っている。


「はい、ついさっき終わりました」


「そうなんですか、お疲れ様でした」


「ありがとうございます。

 それで、久しぶり過ぎて今までどうしていたか分からなくなりまして。

 何かおすすめの依頼ってありますか?

 今度は誰かを待っているとかはないので、外に出るのでも行けます」


「なるほど。

 実はユージさんには指名依頼が入っているんですが、ご説明してもよろしいでしょうか」


「俺に? ・・・もしかしてお布団ですか?」


「はい。

 なので街中でのお仕事になってしまいますが、どうですか?」


「・・・まあ、そうですね、やりますか」


お姉さんから話を聞いてみると、複数の宿からの依頼だった。


「報酬は布団一式で1,000ゼニー、それプラス1日の宿泊と食事の提供ですね」


「報酬がちょっと改善されてますね」


「ですね、最初に依頼を受けられた宿の方が宿屋の会合でそう話したのがきっかけみたいです」


「なるほど。正直宿屋にそのまま泊まれるのは嬉しいです」


「現在4つの宿から依頼が出ていますが、できれば全部やりきるか、全部を受けないかで考えられた方がいいと思います」


「仲間外れはかわいそうですもんね」


「ふふ、そうですよ」


そうだそうだ!もっと言ってやれお姉さん!

・・・あいつらは元気かな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ