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【第03話】モンスターに騙されるやーつ

テクテクテクっと歩くこと3時間くらい。


全然誰ともすれ違わないなと思いながら景色を眺めつつ歩いていると

道からかなり離れた森の入り口に4人の人影に気が付いた。


「ん?」


その4人の人影は、どうやらこっちへ大きく手を振っているように見えた。


「誰だ? もしかしてあいつらか?」


止まるぐらいのスピードで4人を見ていると、小さいながらこちらを呼ぶような声まで聞こえてきた。



「あいつら誰だ? 俺を呼んでんのか?」


俺が周りを見渡すも、俺以外に人はいない。


「・・・誰かと勘違いしてんのか?」


そうは言っても、なんとなく気になってしまい

無視して過ぎ去る事が出来ず、俺は道を外れて4人の人影へと足を向けた。


人違いだったら、ある程度近づいたら向こうも分かるだろう。

何か困っているようだったら手伝いぐらいはしてやるか。


そう思いながら近づくと、人影は”こっちだ”というようなジェスチャーをしながら森へと入ってった。


(まじかよ、ここまで来て引き返せないな・・・)


森の中に姿を消した4人を見て、急に面倒になったが、仕方がないので少しだけついていくことにした。

あっちに4人いるなら、この辺の魔物ならどうにかなるだろうと思ったというのもある。



◇◆◇◆◇◆



「・・・おい、どこだ?」


しかし森に入ると、あっという間に4人がどこに行ったのか分からなくなった。


「なあ、俺の適正は僧侶だ、一人では森の深い所までは行けねえ。

 そっちが一旦こっちへ来てくれないか?」


そう呼びかけながら、さらに進む。

少しだけ。すぐそこに居るかもしれないと思ったからだ。


俺は何をしているんだとイライラし始めたときに姿を現したのは・・・・


「ギャギャギャ!」

「ウギィ!」


俺は見たことがないデカいサルの魔物に囲まれていた。


「やばい・・・」



現れたのは二足歩行の筋肉質なサルだ。

身長は人間の大人ほどで威圧感がある。


明らかに魔物だった。


体からはよく分からない黒いモヤが出ているし、ただ人を襲う魔物ではなく、

残虐性(ざんぎゃくせい)を秘めたような悪意(あくい)のある目、表情をしている。


何より凶悪という言葉が似あう大きなサルの魔物だった。


前に2体、後ろから2体現れた。

さっきの人影と数が一致すると思った。


俺は絶望に包まれながらも杖を構えた。


俺に使える攻撃魔法は、今のところ無い。

出来ることと言えば、ヒーリングを1日3回だけだ。


であればどうするかというと、杖術(じょうじゅつ)というもので戦うのだ。


まあ、それを教えてくれる人はいなかったので、本に書かれたイラストをマネしながらただ振り回すだけではあるが。


「ギィ!」


(怖っわ・・・)


さて、一番大事なのは、魔物と対峙したときに委縮(いしゅく)せずに構えて見せる事らしい。

いよいよ面白くなってきたな、と本に書かれていた挿絵のおじさんは汗を流しながらも笑っていた。

それの受け売りを心の中で呟いてみると、確かに心が少し軽くなった。


こういう人の心に働きかける事ができる言葉を言霊というらしい。


(まあ、一番大きいのは、村の大人たちに何度も狩りに連れて行ってもらった経験だろうけどな)


こんなに怖いサルに囲まれているのに、ビビりつつも動けなくなることにはならなかった。



「ギィ!」


「うわっ! この!」


少しぼんやりしている様に見えたのか、魔物の一体がかみついてきた。

俺はそれに合わせて右手で持った杖を魔物のサルの頭を叩く。


「あぶな・・・」


とっさに動けたから良かったが、あと少しで左腕に噛みつかれていた。



一度はひるんで距離をとったものの、魔物のサルはあれ?という顔をした。


あまりのダメージのなさに驚いたのかもしれない。

魔物たちはお互いに何かを言い合った後、今度は同時に襲い掛かってきた。


もちろん俺だってその様子をただ見ていたワケではない。


(道だ、結界の中に戻ればなんとかなる)


ヒールだって3回使える、多少ケガしてでも道へ戻り、今回は家に帰ろう。



今の短い時間でそう判断をし、相手の動きに合わせて振り返り、サルたちの脇をすり抜けようと走り出した。


「ギィ!」


しかしあえなく2匹の凶悪な姿をしたサルに抱き着かれて動けなくなった。

めちゃくちゃ重い。


振りほどこうとするが、最終的には両足をそれぞれのサルに抱き着かれる形で(おさ)えられてしまった。


「痛てぇ!!」


足を噛まれた。

厚手のズボンを貫通し、サルの牙が太ももに突き刺さる。


「痛ってぇ!!」


次に左手もやられた。


腕には母親に作ってもらった削った木の板が縫い付けられた防具モドキがあったのだが、

それすらもベキバキと音を出して砕かれ、貫通した牙が肉に到達した。


サルは俺の痛がる様子を楽しむように、全身を何度も噛んで、木の枝を噛み砕いてきた。


俺ができたことと言えば激痛で絶叫を上げ続けるぐらいだった。


「ギャッギャ」

「ギャッギャギャ」



サルの嬉しそうな笑い声が聞こえる。

サルの顔を見た。

笑っている。

俺はといえば痛みで息が乱れ、言葉も悲鳴もうまく上げられなくなっていた。


装備が破け肉体があらわになると、今度はその肉を噛んだり、長く痛みを与えるためか、

何度も小さく肉を噛みちぎる。

たくさんの血が出た。

これは無理かもしれない、と思ったタイミングで右手から杖が奪われた。


奪われた杖を目で追うと、杖を折ろうとして折れなくて、遠くに投げ捨てられたのが見えた。


その後も(もてあそ)ぶように、死に近くない場所を執拗に噛まれ続け、俺は気がおかしくなるかと思った。


「ゼエゼエ・・・も、やめて・・・れ! 痛い! うぎゃああああ!」


なんでもいい、もう死んでもいいから早く終わってほしいと思ったその時、

絶叫しながら、俺は右手で硬い何かをつかんだ。

剣でも杖でもない、握りやすい硬い何かだった。


しかし次の瞬間にはそれが何なのかが分かった。


目は涙でよく見えなかったが、感触で分かった。


俺は右手につかんだハンドガンをサルの魔物に向け、トリガーを2回引いた。


タン、タン!


「ギャッ!」


執拗に俺の体を噛んでいたサルの魔物が悲鳴を上げ仰向けに倒れこんだ。


上半身が自由になった俺は、次に右足と左足にしがみついていた2匹のサルの頭を撃ち抜き、

最後に驚いた様子の、さっき俺の杖を投げ捨てたサルを撃ち抜いた。


サルの魔物たちはゆっくりと空気中に溶けていき、最後には3cmほどの紫色の魔石だけが残った。


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