【第27話】ホントアリアで本を買う
「ん?ここはどうなってるんだ?」
案内板を見ていると、本屋と宿屋のマークが同じ場所に書いてあるところを見つけた。
「本とシチューの宿か、一緒になってるんだ」
店の名前を確認して納得した。
本好きの店主なのかな。
ここなら迷う心配もない。ここにしてみよう。
「地図だと、この通りをまっすぐ行くと右手にあるのかな? 道も分かりやすそうだな」
10分ほどゆるい坂を上ったところでそれはあった。
「ここだ」
『本とシチューの宿』
---------------------------
1泊 2,000ゼニー 食事別
連泊時は相談ください。
食事のみもOK。
---------------------------
「こんにちは」
「いらっしゃい、宿泊ですか?」
「はい、ここは本屋もあるんですか?」
「ええ、入り口は違うけどうちは本屋もやってますよ」
「ではまずは1泊お願いします」
「はい、では2,000ゼニーです。
チェックアウトは明日の朝10:00ですので」
「わかりました」
俺は冒険者カードで支払いをする。
-------------------------------
残高:7,707,500
支払:2,000
-------------------------------
↓
-------------------------------
残高:7,705,500
-------------------------------
チンっと子気味の良い音がして、支払いが完了した。
「はい、鍵です、201号室になります。
201号室はあの階段を上ったところにあります。
本屋は一度外に出て、右手にある階段から降りたところから入れます。
あと食事はそこの入り口から入ったところに食堂がありますのでそちらでお願いします」
「わかりました。では先に本屋に行ってきます」
「はい、ごゆっくり」
◇◆◇◆◇◆
チリンチリン
「いらっしゃい」
「どうも」
中に入ると古い紙とインクの匂いがした。
ぐるりと見まわす。
たくさんの本棚と、本が並んでいた。
カウンターにいたお兄さんが俺の手の中にあるホテルのキーを一瞬見たのが見えた。
「何かお探しがあればお手伝いしますよ」
「あ、いいですか? 僧侶に関する本があれば買いたいです」
「僧侶なら、手引書、自伝などがありますよ、こちらです」
カウンターのお兄さんはさっと出てきて歩き始めた。
「これですか」
案内された棚には、僧侶のコーナーがあった。
5mmほどの厚さの手引書に、3cmほどの厚さの自伝が全部で10冊ほど並んでいた。
「自伝って確か、自分の人生をまとめて出版した日記帳みたいなものでしたっけ?」
「ん~おおむねは合っていますが、・・・すいません、俺が自伝系は読まないのでちょっとわからないですね」
定員のお兄さんは頭を掻きながらそう言った。
「人生の先輩からの、ありがた~い話が書かれているんだよ」
二人の後ろからおじいさんが話しかけてきた。
「ああ、じいさんか」
「どうもです」
気やすい感じなので、おそらく家族って所だろう。
「自伝は嘘も平気で書いてあるから話半分で読むのがおすすめだよ」
「そうなんですか?」
「そうさ。真実もあれば、大げさ、自慢したいだけ、たまに人のため。
なんにせよ生きた証を残したい、そんな奴が書く。
まあ、時には行き詰ったときの処方箋になることもある。
そういう時に読む娯楽として考えればいいよ」
おじいさんはにっこりと笑ってそういった。
「では、今回はとりあえずこの僧侶の手引書を買います。
・・・これは同じ内容の本ですか?」
同じタイトル、装飾の本が並んでいたので聞いてみる。
「ああ、それはこっちの方が誰かの書き込みがあるんだ。
だから200ゼニー安い」
「どんな書き込みですか?」
「思いついたことをいろいろ書いているようだよ。ほらこれとか」
お兄さんから見せられて見てみる。
本に書かれていることを読んで、それで思いついたことを余白に書いているようだ。
前に読んだ人の意見が聞ける気がして気に入った。
「へぇ・・・じゃあ、これにしてみようかな」
「おっ、通だねぇ」
「書き込みに影響を受けすぎると本の本質からずれることもあるから気をつけて読むんだよ」
「はい、ありがとうございます」
おじいさんからのありがたい助言を受けつつ、こちらの落書きありの手引書を買った。
-------------------------------
残高:7,705,500
支払:3,000
-------------------------------
↓
-------------------------------
残高:7,702,500
-------------------------------
チン!
「うお、めっちゃ稼いでんじゃん!」
「おい、そういうのは言うなと言ってるだろうが」
おじいさんがお兄さんの頭をはたいた。
「すいません・・・」
「いえ・・・」
俺は5mmほどのペラペラの本を持って外に出た。
これで僧侶について少しでも理解が深まればいいな。




