【第22話】巨人の森はデカい
-メモ--------------
レオン(格闘家)
グレイ(剣士)
ユミル(狩人)
ボタン(僧侶)
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俺の名はユージ。
17歳のCランク冒険者だ。
たった今、とてもショックな事が起きた。
俺の銃は、なんと人間相手には通じないらしい。
頭の何処かでそんな気はしていた。
でも心の準備ができていないのに、唐突にその事実を突きつけられ、
「お前は無力だ」、みたいなことを言われた気がして泣きそうになった。
4人の前だったから気丈に「やれやれ、課題だな」という風に振る舞ったけど、心に大けがを負った気持ちだ。
これが慢心してたってやつか?
控えめに言って、最強角の能力を手に入れ、大抵のことは何とかなる、
相性悪い魔物が居たら避ければいい、それで最強だと思ってた。
対人戦ね・・・考えたこともなかったよ。
人に力を向ける・・・
なんにせよ、心の整理に時間がかかりそうだ。
◇◆◇◆◇◆
「よし、じゃあ村に行くか」
「・・・いいんですか?依頼中なんじゃ」
「多分ね、ユージ君をひとりで行かせたほうが怒られるから」
「そうなんですか?なんか悪いです・・・」
「いいって。それよりユージのいた大陸の話聞かせてくれよ」
他のメンバーも頷く。
「分かりました」
4人の撤退準備ができるのを待ってから、森の外にあるという村へ歩き始めた。
◇◆◇◆◇◆
ギチチチ・・・
ドパン! ガシャコン
「お見事」
アギリ大陸に転移してきておよそ3時間ほどが経過した。
今の音は俺が巨大なバッタの頭をショットガンで吹き飛ばした音だ。
人には無害ならショットガンもっと使ってもいいな、といい面に気づいてから少し気持ちを取り戻している。
俺は周りを警戒して、敵がいないことを確認してからショットガンから手を放す。
ショットガンは半透明になりながら俺の左肩のホルダーに収まった。
「今のでこの森の魔物は全部出会ったかな」
「そうだね~」
「じゃあこの森でもやっていけるな」
「本当ですか・・・でも顔怖いです」
「あはは」
この3時間で出会った敵は、
ビッグいもむし2種類、
ビッグアゲハ蝶、
ビッグモンシロ蝶、
ビッグキリギリス、
そして今倒したの高さ2mのビッグショウリョウバッタだ。
全部Cランクの魔物だそうだ。
初めて会うモンスターは俺が倒して、それ以外はほかの3人がさくっと倒してくれた。
残りの1人は僧侶で、この森ならバフは必要ないという事で、戦闘中は周りの警戒をしていた。
移動中は雑談の中でいろんなことを聞いた。
俺のスキルがなんで人に効かないとわかったのかも聞いた。
「あんな小さな穴を1つ開けただけで倒せる魔物じゃないんだよ。
それなのに1撃で倒せた。 そこでピンときたんだ」
制約系のギフトを持っている人が何人も大活躍してて、認知されているらしい。
そこで導き出された答えが
俺のギフトによる攻撃は、弾が魔物貫通する際に、物理的なダメージにプラスして、
魔物本体に別のアプローチによる追加ダメージがある、というような説明だった。
言われてみれば確かに、っと思った。
前世でやったVRゲームのゾンビハンターでも、覚えたスキルでハンドガンによるダメージUPとかあったし。
それがこちらの世界でさらに魔物限定の制約が追加されたことによって、銃のダメージが更に上がっているというのはあり得ると思った。
人間への攻撃無効という制約はかなり強力という事か。
「いいギフト手に入れたな」
「はい」
グレイにそう言われて意識を現実に戻す。
後は俺の居た大陸の話もした。
「それで、どんなところなんだ?」
「そうだな・・・まず、こんなに木はデカくない」
4人は苦笑した。
「ここが特殊なんだよ」
「あ、そうなんですね」
「この大陸には、ここと同じような場所がいくつかあるらしい」
「冒険者がアクセスできるのはここ以外に3か所ある」と珍しくボタンが補足する。
「そうだな。どこも同じような魔物がいる。
昔は巨人が居たという森もあったんだっけな?」
「そうですね」
「巨人」
「まあ今はユージの話を聞こう」
「そうですね、こっちの大陸を知っていれば違いを言えるかもしれないんですけど、4人を見ている限り、
あまり変わらないんじゃないかなって思います。ギルドもお互いの大陸でつながりあるって聞きましたし」
「ああ、まあそうだろうな」
魔物が出るたびに話題は変わった。
ボタンからは俺の杖についても聞かれた
「その杖強いの?」
「ただの杖です、村に昔杖を作ってた職人のおじいちゃんが居て、
硬い杖に加工できる木が生えてるのを見つけて、加工してもらったです」
ただ杖の形にしてもらっただけで、魔石も組み込まれていないただの硬い杖。
一応魔力を通す加工はあるので、杖越しに魔法は放てる。
「な、なるほど・・・」
こっちも聞いた。
「ああ、俺たちは調査と魔物の数を減らすという依頼で来ていたんだ」
「調査は、ダンジョンが無いかのね。放置しておくとたまった魔物が外に一斉に出てきてしまうの。
だから今までに見つかっていないダンジョンが無いか目を凝らして探すんだよ」
ユミルが目を凝らして周りを見渡した。
巨大な草がところどこに生えていて、視界はあまりよくないから、見つかっていないダンジョンはあるかもしれない。
「まあ、9割は魔物の駆除、1割は、もし見つけたら報告しようっていうだけだ」
「そうなんですね」
あとは年齢についても聞かれた。
この人たちは全員25歳らしい。
俺が17と伝えると若いねぇとしみじみとされた。
そうしていくつかある無人の休憩所の1つで一夜を明かし、
更に数時間歩き、無事に村に到着した。




