【第16話】ちょっとした再会
ランクCに上がった翌日。
俺は急に目標を失った気持になり、ダンジョンにはいかずにギルドの食堂でお昼ご飯を食べていた。
なぜやる気がなくなっているかというと・・・
~回想~
「ユージ君おめでとう。
ギフト持ちがまじめにやるとあっという間にCランクに上がれるのね。
最短記録じゃないかしら。稼ぎ頭だしね。びっくりだけど、私は誇らしいわ」
俺は1か月ほど前に冒険者登録をしてくれたお姉さんに、
Cランクになったことで説明があるといわれ、カウンターで話を聞いていた。
「ありがとございます、本当にいいギフトに恵まれました」
「もう、そろそろその他人行儀なしゃべり方やめてよね」
「・・・そうですか?」
「あなた17歳でしょ、もっと私みたいなしゃべり方でいいのに」
「まあ、今はこのしゃべり方が定着してしまってるので、でもありがとございます」
「定着って、もう・・・まあいいわ。
でね、1つ言っておかないといけないこともあってね」
「はい」
「このツクシ大陸だと、ランクはCまでなの」
「え?どういうことですか?」
「魔物の強さ的な話でね、C以上には上がれないの。
もちろんそれだけ安全ってことでもあるから、住人も多いんだけど、
上り詰めようって冒険者にとっては、Cになったら次の大陸へって感じになっちゃうのね」
「そうなんですか・・・」
「そうなんです。
もう、あなたが怖いと思うモンスターはいないでしょ?」
「そうですね、さすがに最近は楽しすぎじゃないかって気持ちも芽生えています」
「でしょ、まあユージ君ならたくさん稼げるからしばらくはいいかもしれないけど、たぶん飽きて詰まらなくなると思うよ~」
「てことは、ほかの大陸に行く感じですか」
「そうだね~」
「ちょっと、すぐには・・・」
「もちろん、しっかり準備してからだよ。
隣の大陸は強い魔物が多いから」
俺のギフトが発現したきっかけとなった邪猿童子だが、こいつはもともと隣の大陸の魔物だったそうだ。
どうやったか、こちらの大陸に来てしまったそうだ。
まれにあるらしい。
つまり、隣の大陸でも、俺のギフトは通用しそうという事でもあるのだが。
「一回実家にも帰って話してみます」
「うんうん、それがいいわね。
お土産いっぱい買って顔を見せてあげなさい」
「はい」
「それよりも私がうれしいのはね~」
隣のカウンターのお姉さんが顔を出してきた。
「あの氷の子を追い抜いてCランク!これほど爽快なことはないね~」
「ま~た言ってる」
(あ、主任が居ない。これはまた長話が始まるぞ!)
「あ~俺行くところあるんでそろそろ」
「あら、悪いわね。じゃあね」
「いえ、それでは」
~回想終了~
というわけだ。
お土産を買って家に帰るか。
父親にはお酒かな?
母親には・・・果物とか?お菓子か?わからん。
うだうだと考えていると、人影がテーブルの前に来た。
「ユージ」
「ん?・・・お前らか」
話しかけてきたのは同じ村の出身の、俺を置いてった3人の少年だった。
あ、後ろにリ・・・なんとかちゃんもいた。
俺はほかの冒険者と交流をしていないので名前を呼んできた時点で分かったのだが。
4人とも村を出て行った時と同じ服装だ。でも結構汚れている。
実はギルドで時々姿は見かけていた。
何度か目も合った。
お互いすぐに目をそらしてたけど。
「あのさ、言いにくいんだけどさ・・・」
「お金なら貸せないぞ?」
悪いけど、貸さない。
心の中ではまだ許せていないんだ。
顔には出さないけどね。
いや、多分出てるか。
「・・・そうだよな」
「悪かったな」
「もう行こう」
向こうもこっちの心の中が分かったのかすぐに引き返そうとした。
たぶん勇気を出して俺に話しかけたんだろうな・・・
「あの、ずいぶんケチですね」
なんて感傷に浸ろうとしたら、鋭い言葉が飛んできた。
リ・・・なんとかちゃん、いやリズちゃんだ。
「・・・」
確かに今のはケチだったなと思い、言葉が出ない。
「お前やめろよ」
「いくぞ」
少年達がリズちゃんを連れて行こうとするが、
俺に何かを言ってやろうという顔をして抵抗している。
でも自業自得なんだよな。
見ていればわかる。
食うに困っている理由。
どうやら僧侶のリズちゃんが役に立っていないらしい。
やる気はあるが体力とかがついてこない。
ごはんも食べられなくて、さらに体力が下がっているんだよな。
「一回家に帰ってさ、ご飯をたくさん食べて体を休めた方がいいぞ」
俺は怒鳴られる覚悟でそう提案した。
しかし誰からも何も言われなかった。
(もしかして、今の言葉刺さったか?)
家に帰ればご飯が食べられる。
その誘惑にもしかしたら今までも戦ってきたのかもしれない。
「私、たぶん家に帰ったら、もう出してもらえない」
「まあそれは話してみないとわからないだろ」
「そうだよ」
「だな、帰ってみるか?」
「ダメなんです、ちゃんとできてないと、たぶん私・・・」
少年がリズちゃんの頭をポンポンして慰めている。
(泣き落としはやめてくれ、こっちが泣きたくなるわ)
俺は視線を下げ、食事に集中した。
その後も少しもめるような会話をして、気づいたら4人は居なくなっていた。
(ケンカしてたな)
リズちゃんは、みんなについていくためにすこし無理をして歩くが、
足が痛くなって、それでもついていくために自分にヒーリングかけてて、
その恩恵に預かれなかったのが少年たちの不満の1つになっているようだ。
(俺だって2年頑張って、ようやくそこそこな品質のヒーリングが、1日3回使えたんだ。
適正が発現してすぐの子が冒険者として役に立つわけがない・・・)
まあ子供だったんだ。
みんな子供だった。
お金が稼げてるのに分けてあげられない俺も子供。
判断も甘ければ、許してやれる心も持てない子供。
「ま、仕方ないか。
あいつらも立ち行かなくなってきてるから、村で鉢合わせしないように、さっさと帰ろう」
あの様子だとあと数日は村に帰らないだろう。
俺は食事を終え席を立った。




