【第15話】ランクアップ、Cへ
「ふ~、疲れたな」
外はまだ日が高い。
どうしようかと思っていると、急に眠気が襲ってきた。
今日は頑張った。
初めてのダンジョンですごく神経尖らせてたし、今日はもう何もせずに宿屋でダラダラしよう。
あと、やってみたいこともある。
俺は屋台で冷えたリンゴジュース50ゼニーを買ってから宿屋に戻った。
「おかえりなさい、早いのね」
「はい、今日の仕事は終了です」
「あら、いいわね~」
「ダンジョン行ってきて疲れたので、今日はゆっくりしようかと。ダンジョン初めてだったので」
「まあそうなの。お疲れ様。夕飯になったら下りてきてね」
「はい、木づちが鳴ったら行きます」
昨日は外から帰ってきたら夜のごはんがスタートしていたけど、
通常、宿屋で夜ご飯の時間がスタートする際にはこのお姉さんが各階で、木づちでよく鳴る板を叩きながら
「夜ご飯始まります~」というらしい。
俺は自分の部屋に戻ってきてテーブルにジュースを置き、窓を開け、ベッドに座る。
そして右手を首の後ろに手をやり、掴んで目の前に持ってくる。
偵察ドローンだ。
そう、この王都の街で空中散歩にしゃれ込もうというわけだ。
左手でおでこの半透明のゴーグルをつかみ目の位置にまで下すと視界がドローンに切り替わった。
「静音モードにして・・・発進!」
俺はニヤニヤが収まらないまま、ドローンを街へと解き放った。
(あそこが冒険者ギルドだな。
屋上は職員さんたちの休憩スペースになっているのか。
あ、小さな畑まであるんだ。 って、草? もしかして薬草かな?)
次に街中を上からゆっくりと眺める。
(川があるんだ。 あ、公園もある)
ズームしてみると川には魚が泳いでおり、それを子供たちが吊り上げようと釣り糸を垂らしていた。
数年前に両親と遊びに来たときは、買い物をして宿に泊まって帰るというだけだったけど楽しかった。
観光は誰かと一緒にいてこそなのかもしれない。
数年前のあの通りはどこだろうとうろうろしていると、ふと視線を感じた。
そちらに視点を向けると、強そうな冒険者がじっとこちらを見ていた。
ドローンはなんちゃって光学迷彩機能が付いており、ある程度見えにくくはなっているが、透明ではない。
魔物と間違えられたかも知れないなと思い、上昇させ、迂回してから自動帰還モードにして視点を解除した。
「あ~面白かった」
俺はそう言いながらジュースを飲んでからベッドに寝っ転がった。
宿の見取り図
◇◆◇◆◇◆
「では行ってきます」
「行ってらっしゃい、今日は部屋掃除するからね」
「はい、お願いします」
翌朝、俺はお姉さんに声をかけてから宿屋を出た。
今日も東のダンジョンへ行くのだ。
ちなみに弾丸は全回復していた。
これには朝からテンションが上がった。
張り切って行こう。
東の門でサンドイッチを買い、井戸水をすいとうに入れる。
さてここから1時間の道のりだ。
「通常ならな」
しかし俺にはこれがある!
「スピードアップ(小)」
自分の胸にこぶしをあて僧侶の補助魔法を唱える。
体に青い光が灯り、すぐに消えた。
数分後
(普通に疲れるし・・・(小)だとそこまで早くならないか)
俺は息を整えつつゆっくりと歩いていた。
そこまで万能じゃなかった。
(おサルであれだけスタートアップが切れたんだ、しばらくは地道なレベル上げだな)
そこからは走ったり歩いたりを繰り返してダンジョンをめざした。
◇◆◇◆◇◆
今日も露店が居た。
この人はこの露店一本でやっているのだろうか。
中でモンスターを倒した方が絶対いいのに。
そんなことを考えながら露店を素通りし中に入った。
◇◆◇◆◇◆
「・・・さて」
おおこうもりの魔石をリュックに入れてから、例の分かれ道に来た。
昨日は右の道を進んだ。
それはそれでかなりうまかったけど、左の道はどうなっているんだろうか。
(まあ行ってみるか)
俺は分かれ道を、左に進んだ。
しばらく歩くとまた分かれ道に来た。
地図にも洞窟の内部の図は書かれていたが、実際に見ると全然違って見える。
(順番に右から行ってみるか)
特にこだわりはないので、総当たりで進んでみることにした。
目安として、すべての道を進んだらこのダンジョンは卒業、というのもいいかもしれない。
俺はリュックを背負いなおしてから先に進んだ。
◇◆◇◆◇◆
冒険者になってから20日後。
俺は東のダンジョンを2つ踏破した。
もう一つの東のダンジョン2は、地下もあったがそれを含め全ルートを歩いたのだ。
モンスターは翌日になるとある程度復活していたのでそれはもう、しっかりと稼げた。
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残高: 5,297,000
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ざっくりで、5百30万ゼニー。
これ、冒険者になったばかりの17歳の子供がひと月で稼げてもいい金額か?
いいんです!
買取カウンターのお姉さんからもギフトをうらやましがられた。
もし分配していたらこれが4分の1だったから、130万くらいになっていた。
なんかおごってよ~と言われたので
ジュースおごりますよと伝えたら笑われた。
そもそも本気ではなかったようだ。
レベルもいくつか上がって、スキルも成長した。
・スピードアップ(小→中)
・プロテクション(小→中)
・結界魔法(小)を習得!
・帰還魔法(小)を習得!
魔物除けの結界魔法を覚えた。
ノートにまとめた方法を行うとちゃんと発動した。
(小)なので、自分の周り1mほどの範囲しかないが
自分の成長に初めて実感が沸いた瞬間だった。
帰還魔法(小)は、帰る方向が分かるというものだ。
ある程度の指定ができ、例えば東門にしたり、王都内だったら宿屋とかが指定できる。
この魔法が最大にまで上がると、テレポートという魔法が習得できるらしいから楽しみだ。
そして
「はい、おめでとう~」
俺はランクCに昇格したのだった。




