【第13話】初めてのダンジョンアタック!
タン!
「ピギィ!」
ポトリ。
(はい、追加で1,500ゼニーと)
俺は天井からぶら下がっている、おおこうもりという魔物をハンドガンでどんどん撃ち落としていた。
天井は5~10mほどの高さとなっているが、ハンドガンについているレーザーサイトで正確に当てられるのでいい稼ぎになっている。
大体一か所に10匹ほど群れてぶら下がっている。
最後の1匹になってもおおこうもりは動かないので完全にカモだ。
いきなりの金策ポイントを発見してしまった。
レベルは今のところ上がってはいない。
「おっと」
上ばかりを見ていたら、いつも間にかすぐ目の前に大きなムカデがこちらへ音もなく向かってきていた。
タン! タン!
「ギャッ」
「ふう、危ない」
「順調そうだな」
後ろから男性の声が聞こえた。
振り向くと、後ろにいたパーティーがまぶしそうに顔をそむけたので
俺はLEDライトの光度を最小まで落とした。
「すまないな、邪魔する気はなかった。 通ってもいいか?」
「ええ、もちろんです」
「じゃあ、俺たちはこの先の分かれ道を左に行こうと思うから、よかったら右へ行ってくれ」
「わかりました」
「助かる。ではな」
「気を付けて」
「お前もな」
ランタンを手に持った4人組はチラチラと俺のおでこを見ながら先へ進んでいった。
おでこにランタンを付けているなんて変な奴って思われたかも。
「びっくりした。でもさっき上にいた人たちではないな」
俺はささっと魔石を拾い集めてから言われたとおりに右側の分かれ道へと進んだ。
分かれ道の角度的に、戻ってくるときはこの分岐をまっすぐ進めば外に出られるだろう。
もしくは、左の壁伝いに進めばって感じだ。
◇◆◇◆◇◆
(どれぐらい進んだんだろう。長すぎないか、この洞窟)
体感で1時間くらいだろうか。
一番最初の分かれ道以降は、すぐに行き止まりになる横道しかなく、ずっとまっすぐ進んでいる。
(なんかこわくなってきたな)
ここまでに倒したモンスターは100は越えた。
普通に歩いていたら、たぶん10匹くらいだったが、天井にぶら下る、おおこうもりを見つけるたびにせん滅するまでやっていたのでこんな数になった。
リュックの中の魔石がまあまあ重い。
うれしい重みだ。
あと、ハンドガンの弾の消費が目立ってきたので、途中から他の武器も使いながら進んでいる。
「初日だしここまでいいか?」
俺は先をじっと見る。
ずっと先は光が届かず、まだ真っ暗だ。
LEDの光度をMAXにしてみたが先が見えない。
「一応、この先がどうなっているかだけ見ておくか」
俺は右手を首の後ろに持っていき、掴む動作を行い、それを目の前に持ってきた。
偵察ドローンだ。
周りを見回し魔物が居ないことを確認してから、左手でおでこにある半透明のゴーグルを目の位置に持ってくる。
視点がドローンに切り替わった。
「よし、行け」
ドローンがダンジョンの先へと飛んでいく。
速度としては運動が得意な成人男性の全力疾走の、2倍くらいの速度だ。
しかもゲームのシステムで自動的に障害物に当たらないように調整して飛んでくれるので楽だ。
数分後、何匹もの魔物を素通りしながら進んでいくと、先に小さないくつかの明かりが見えた。
「静音モード」
速度を小走り程度まで抑え、ドローンの羽音を極限まで小さくするモードに切り替えた。
これも最大まで強化しているのでまったく音がしない。
「人間か」
前方から歩いてきたのは4人の人間だった。
モンスターを倒しながらだと、俺と出会うまでには1時間ほどかかりそうな距離だ。
「よし、帰るか。サンドイッチはここで食べる気しないから、外で食う」
静音モードのまま冒険者たちから離れ、数匹のモンスターの上を通過してから
通常モードに戻し、自動帰還モードにしてドローン視点を解除した。
◇◆◇◆◇◆
(ハンドガンは撃ち切ってしまったな。これで明日どれだけ弾が回復するか・・・)
俺はダンジョンの出口でサンドイッチを頬張っていた。
サンドイッチ屋の言っていた通り、体が温まって冷たい水がちょうどよく感じた。
あの後、帰り道ではムカデ3匹と、おおこうもりを10匹倒した。
おおこうもりは、倒しきったはずの場所にはりついていた。
どこから来たのだろう。
やっぱりぱっと現れるって話が真実なのかもしれない。
手に入れた魔石は相当な数になって、リュックを重くするのに貢献していた。
これがお金になるのだから、喜ばなければならない。
痛くなった肩などは、あとで自前のヒーリングで癒せばいいのだ。
「って、魔法と言えば・・・」
おサルの魔物を倒したとき、俺は3つの魔法を習得していた。
スピードアップ(小)
プロテクション(小)
クリーニング(小)
(ダンジョンに入るのに、せめてプロテクション(小)は使うべきだったな。これは反省だ)
接敵される前に銃で倒していたのでノーダメージだったが、気づかずに攻撃を受けた可能性だってあった。
次からは気をけようと気を引き締める。
さて、日は真上に上ったところだ。
「よし、帰るか」
弾もないので俺は重くなったリュックを背負い、王都への道を歩き始めた。




