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【第10話】やどかり亭

(ここだな)


俺は先ほどギルドの売店で聞いてきた宿屋「やどかり亭」の前に居た。

夜ごはんの仕込みだろうか、いい匂いがしている。


「いらっしゃい、食事?宿?」


「食事と宿をお願いします、あとこれ」


「え? ・・・あら」


紙を差し出すと、カウンターのお姉さんは(いぶか)しげに紙を開いて驚いた顔をした。


「どのぐらい泊まるの?

 夜ごはんと朝ごはん2食つきだと1日1000ゼニー、

 あとは日数によって少し割引になるよ。

 タニタおばちゃんからの紹介状があるから、さらにお安くするわね

 たくさん泊まってくれるなら、さらにお安くできるよ」


「ええと・・・」


2食付きで1日1000ゼニーなら、安い。

でもどれぐらい稼げるかによって変わってくるな。

それにいろいろ装備もそろえるとなると・・・


「しばらくはここを拠点に冒険者をやろうと思ってて、ひと月だとどのぐらいになりますか?」


「ひと月だと3万ゼニーで・・・、うん24,000ゼニーでどうかしら」


「泊まります」


安い!

(夜に部屋で計算したところ、2割引き、1日800ゼニーになる計算だった)


「はい、毎度! じゃあ先にお支払いをお願いね。

 もし早めに出ることになったらちょっと計算してから返金するから」


「はい、あ、ギルドカードでお支払いできますか?」


「できるよ。じゃあここにカードを載せてね」


「はい」


「・・・おや、Dランクなのかい。若いのにすごいね」


「いろいろと幸運が重なりまして」


「そうなのかい? はい、24,000ゼニーだよ」


チン!


-------------------------------

残高: 18,500

-------------------------------


残高減ってきたな。


「じゃあ部屋を案内するからね」


「お願いします」


2階への階段に近づいた瞬間。


「熱っつ!」


ガシャン!


「え? お父さん大丈夫?!」


階段横にある厨房(ちゅうぼう)から大きな音と、男の人の声が聞こえた。


「ちょっとごめんね!」


「いえ、どうぞ」


お姉さんが半開きになっていた引き戸を開けると厨房(ちゅうぼう)が見えた。

そこにはおじさんが手を抑えながら悶絶している姿が見えた。


「やけど?」


「ああ、思っていたより熱くなってたみたいでな」


「なんという初歩的な。大丈夫?大きな音もしたけど」


「ああ、鍋は無事だ。おなかで押し戻して・・・いてて・・・」


「うわあひどいねこれ。ポーション買ってこようか」


「悪いな、頼む」


そんな会話が聞こえてきた。

まだMPには余裕がある。


「あの、俺ヒーリングが使えるので直しましょうか?」


「え、いいのかい?」


「はい、まだ余裕あるので」


「じゃあ、お願いするよ、いいよねお父さん」


「ああ、頼む。ポーションだと治るのに時間がかかるんだ」


「わかりました、では・・・」


俺はそっと厨房(ちゅうぼう)に入り、杖をおじさんに向けた。


「ヒーリング(小)!」


パァ・・・


ヒーリングの緑色の光がおじさんを包む。


「ヒーリング(小)!」


パァ・・・


「つつ・・・おお」


「念のためもひとつヒーリング(小)!」


パァ・・・


「おお、なんか日ごろの疲れも飛んだぞ、ありがとう」


「今ので治ったの? ありがとう!」


「いえ、こちらこそ、これからお世話になるので」


「お父さん、この子ユージ君っていうんだけど、今日から1か月まってくれることになったの」


「そうなのか? それは、ありがとう」


おじさんはぎこちなく頭を下げる。


「いえ、ではとりあえず俺は厨房(ちゅうぼう)から出ますね」


「あ、お部屋の案内の途中だったんだ、行ってくるねお父さん」


「ああ、案内は頼んだ。じゃあユージ君、ありがとうな、サービスするから」


「ありがとうございます。では」


俺はそう言って厨房(ちゅうぼう)から出た。


「ありがとね、じゃあお部屋に案内するから」


お姉さんも出てきて、俺ににっこり笑いかけた後に階段を上り始めた。

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