断罪イベント365ー第12回 証人が寝坊
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
「本日この場をもって
――婚約者リディア・セントレイを、断罪する!」
王子の声が大広間に響き渡った。
壇上に立つリディアは、物静かに頭を下げている。
その横では、断罪の首謀者たる
令嬢・セシリアが勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「殿下。証人の到着はまだですか?」
セシリアが小声で促す。
王子は咳払いをしながら頷いた。
「ま、まもなく……
本件を決定づける目撃証言を持つ人物が到着する予定だ」
観衆がざわつく。
「お、証人くるのか」
「今日はまともに始まるのか?」
だが、待てど暮らせど、証人は現れない。
王子「……」
セシリア「……」
10分経過。
会場の空気がじわじわと冷め始める。
王子は焦りの色を隠せない。
「証人は……たしかに手配したはず……」
そのときだった。
「ん……うぅ……?」
観衆席の中ほど。
一人の中年男性が大きなあくびと共に顔を上げた。
「……あれ、断罪イベントって……もう始まってたの?」
ざわっ!!
王子「しょ、証人!? そこにいたのか!?」
セシリア「な、なんですの、貴方は!」
男性「いやぁ……早く着きすぎちゃって、
ちょっと座ってたら寝ちゃって……」
観衆「えっ!?」「証人、観衆にまぎれて寝てた!?」
王子の顔がみるみる赤くなる。
「しょ、証人! なぜ壇上に上がらなかったのですか!」
証人「え? だって誰も起こしてくれなかったし
……っていうか、それ壇上って言うの?」
観衆「ゆるい!証人、ゆるすぎる!」
「寝てる間に王子の株が下がっていくの笑うしかない」
リディアは静かに言った。
「殿下。証人の居眠りに左右される裁きなど、私は受け入れません」
観衆「それな!」
「もうリディア様で良くない?」
王子は慌てて口を開くが――
「と、とにかく、証人の証言を――」
証人「あ、もう時間だ。次の会議あるから、失礼」
王子「!?」
こうして、決定的証言は宙に消え、
王子とセシリアは、赤面と失笑の渦に飲み込まれていった。
打ち合わせはきちんとしておきましょう。
婚約者の一言に観衆の心が傾き、無言の勝利
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m