第44話:託された希望と、最終決戦への飛翔
クレーターの中心に呼び出した家を拠点に、俺たちは古き英雄の回復を待っていた。母の【大地の巫女】の力で、英雄の生命力は少しずつ回復している。その間にも、浄化された七つの聖石は、俺たちの能力を「真の力」へと覚醒させ続けていた。
そんな中、家の外から聞こえてきた物音の正体は、かつて旅の途中で出会った部族の代表者たちだった。彼らは、俺たちの家を取り囲むように、しかし恭しく立っていた。
「お会いできて光栄です、聖石の護り手様方」
代表の一人が、深々と頭を下げた。彼らの顔には、安堵と、そして、かすかな希望の色が浮かんでいた。
「あなた方が、穢れた聖石を浄化し、この世界の異変を鎮めていると聞き、駆けつけました」別の代表が続けた。
彼らは、各地で起きている異変――魔物の凶暴化、大地の枯渇、人々の心の荒廃――が、俺たちが浄化した地の聖石や知識の聖石の汚染と関連していることを察知していたようだ。そして、俺たちが戻ってきたことで、再び希望が生まれたと感じているようだった。
「私たちは、この世界の現状を打開するため、あなた方に協力を求めます」代表は、切実な眼差しで俺たちを見つめた。「どうか、私たちに、この世界の真の危機についてお教えください」
俺たちは、彼らを家の中に招き入れ、今この異世界で起きていること、そして「闇の深淵」と呼ばれる存在について説明した。聖石の汚染、人間を操る黒ローブの集団、そして、世界の根源的な闇が負の感情を糧に増大していること。
彼らは、俺たちの話に真剣に耳を傾け、時折、驚きや怒りの声を上げた。
「…まさか、この世界の根源に、そのような闇が潜んでいるとは…」
「古き英雄様まで操られていたとは…」
俺たちが全てを話し終えると、部族の代表者たちは、深く考え込んだ後、一斉に立ち上がった。
「我々も、この世界の住人として、この危機に立ち向かうべき時が来たようです」
「我々も、この地の者として、できる限りの協力を惜しみません。どうか、我らに指示を!」
彼らは、自らの命をかけて、この世界を救う手助けを申し出てくれた。この世界の希望を、俺たちに託そうとしているのだ。
父は、厳かな顔で代表たちを見渡した。「感謝する。君たちの協力は、必ずこの世界を救う力になる」
俺たちは、彼らに、黒ローブの集団に操られていた人間たちの保護と、負の魔力が薄まった地域の復興を依頼した。そして、この世界のどこかで、再び聖石が汚染されたり、新たな異変が起きた際には、すぐに連絡を入れるよう伝えた。
「我々は、世界樹の根源へと向かう。そこで、この世界の真の敵、『闇の深淵』と決着をつける」俺は、彼らの瞳を真っ直ぐに見つめて言った。「俺たちが、必ずこの世界を救ってみせる」
代表たちは、再び深々と頭を下げ、それぞれの部族へと戻っていった。彼らの背中からは、決意と、そして希望の光が感じられた。
彼らを見送った後、俺たちは最終決戦への準備を始めた。
「七つの聖石の真の力…これを使えば、『闇の深淵』を倒せるんだな」父が、浄化された七つの聖石を見つめた。聖石たちは、俺たちの意思に呼応するかのように、虹色の光を放っている。
萌は【魔力演算支配者】で、聖石から得られた情報をさらに深く解析していた。
「うん! この聖石たちは、それぞれが世界の法則と強く結びついてる。そして、この真の力は、その法則を一時的に『再構築』する力みたいだよ!」
「法則の再構築…」俺は、自分の【空間支配者】が、新たな「次元」を創造できるかのような感覚を覚えたことを思い出した。俺の【概念収納】も、ただの収納ではなく、概念そのものを操作できる力へと繋がるのかもしれない。
美咲は【運命交渉】と【精神掌握】を試していた。
「私の力も、以前より格段に強くなっているわ。相手の潜在意識だけでなく、運命の因果そのものに干渉できるような感覚よ」
母は【大地の巫女】と【全体治癒場】の力を高めていた。「どんなに激しい戦いになっても、みんなを護り、癒してみせるわ」
俺たちは、力を合わせれば、どんな敵にも打ち勝てると確信していた。
最後に、俺は眠り続ける古き英雄の傍らに座った。彼の顔には、まだ疲弊の痕が残っているが、苦痛の色は消え、穏やかな寝息を立てている。
「ゆっくり休んでくれ。お前の代わりに、俺たちがこの世界を救ってみせる」
俺は【家屋収納】で家を収納した。これで、最終決戦の舞台となる「世界樹の根源に繋がる場所」、おそらくはかつて「真理の試練」を受けた世界樹の頂上へと向かう準備が整った。
「行くぞ、みんな」
俺たちは、この異世界の命運をかけた、最後の戦いへと足を踏み出す。世界樹の頂上へ。そして、「闇の深淵」との最終決戦へ。




