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家ごと異世界転移!? ~家族と恋人とアイテムボックスな家で、元の世界に帰るまで~  作者: ねこあし


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第35話:穢された大地と、父の慟哭

変わり果てたエルリア村。その中心、枯れ果てた泉の底から飛び出してきたのは、禍々しい力を放つ「地の聖石」だった。かつての穏やかな輝きとは異なり、その石からは、怒り、悲しみ、そして「裁き」を求めるような怨念が渦巻いている。


『…我が…汝らを…裁く…』


聖石から放たれる声は、直接俺たちの精神に響き、美咲の顔が苦痛に歪んだ。


「この憎しみ…! まるで、大地そのものが悲鳴を上げているみたい…!」美咲が震える声で呟いた。


父は、その禍々しい地の聖石を呆然と見つめていた。彼の【地殻接続】の力が、この聖石と最も強く共鳴するはずだ。

「まさか…地の聖石が…こんな姿に…」


萌は【魔力演算支配者】で、聖石から放たれる魔力の構成を解析しようとするが、そのあまりの混濁さに、眉をひそめた。

「お兄ちゃん…この魔力、すごく複雑に壊れてる…誰かが、無理やり魔力を歪ませた痕跡があるよ…」


母は、その聖石に近づこうとしたが、聖石から放たれる禍々しい魔力に阻まれた。

「近づけないわ…まるで、全ての生命を拒絶しているかのよう…」


俺は【空間支配者】で、聖石の周囲の空間を操作し、その禍々しい魔力を封じ込めようとした。しかし、聖石から放たれる怨念は、空間すらも歪ませようとするかのように、俺の力を弾き返した。


「くそっ…! なんだこの力は…!」


その時、地の聖石が、再び強く輝き始めた。そして、その輝きと共に、エルリア村の地中に、新たな亀裂が走り、地面が激しく揺れ動いた。まるで、聖石の怒りが、大地を震わせているかのようだ。


「村が…さらに壊れていく…!」萌が叫んだ。


このままでは、村の全てが崩壊してしまう。そして、この地の聖石が放つ禍々しい魔力が、周囲の森、ひいてはこの世界全体へと広がってしまうかもしれない。


「父さん…! この聖石、どうにかできないのか!?」俺は父に尋ねた。


父は、聖石をじっと見つめていた。その瞳には、深い悲しみと、そして、家族を護る強い決意が宿っている。

「この聖石は…俺の力の源…! こんな姿にさせてたまるか…!」


父は、ゆっくりと聖石へと歩み寄った。聖石から放たれる怨念が、父の身体にまとわりつく。父は、苦痛に顔を歪ませながらも、決してひるまなかった。


「【地殻接続ジオリンク:魂の共鳴ソウルレゾナンス】!」


父がそう呟いた瞬間、父の身体から、大地を思わせる温かい光が放たれた。その光は、地の聖石へと向かい、聖石を覆う禍々しい怨念を、少しずつではあるが、押し戻し始めた。


これは、父の【地殻接続】が、【魂の共鳴】という新たな力を得たのだ。聖石との根源的な繋がりを使い、聖石の「心」へと語りかけている。


『…裏切り者…何故…』


聖石から放たれる怨嗟の声が、より一層激しくなる。その声は、父の心に直接語りかけているかのようだ。


父は、その声に耳を傾け、悲痛な表情で呟いた。「分かっている…! お前たちの苦しみは…! だが…このままでは…!」


その時、聖石の輝きが、一時的に弱まった。その隙を逃さず、萌が叫んだ。

「お兄ちゃん! 今だ! 聖石の魔力が、一時的に安定したよ!」


俺は【空間支配者】で、聖石の周囲の歪みを固定し、父が聖石に直接触れることができるようにした。


父は、荒々しい息をしながら、聖石に手を触れた。彼の身体から放たれる温かい光と、聖石から放たれる禍々しい怨念が、激しくぶつかり合う。


『…裏切り者よ…我らは…見捨てられた…』


聖石から響く声は、悲しみと絶望に満ちていた。その声を聞いた瞬間、俺たちの脳裏に、悲惨な光景がフラッシュバックした。


それは、かつてエルリア村が襲われた時の光景だった。しかし、それは魔物による襲撃ではない。人々の間で争いが起き、村が破壊され、そして、この地の聖石が、その争いの犠牲となり、怨念に囚われていった光景だった。


「これは…聖石の記憶…?」美咲が呆然と呟いた。


父は、聖石から流れ込んでくる記憶に、苦痛に顔を歪ませていた。

「人間同士の…争い…聖石は…その憎しみに…囚われたのか…」


父の心の中で、聖石の怨念と、父自身の悲しみ、そして家族を護る決意がぶつかり合う。


「聖石よ…! お前をこんな姿にしたのは…人間の愚かさだ…! だが…それでも…お前を救いたい…! この世界を…再び、穏やかな大地に…!」父は、全身全霊を込めて、聖石に語りかけた。


父の言葉が、聖石の奥底に届いたかのようだ。聖石から放たれる禍々しい魔力が、少しずつ、その勢いを弱めていく。そして、聖石の輝きも、濁った赤色から、かつての穏やかな緑色へと戻り始めた。


『…あ…あぁ…』


聖石から聞こえる声は、もはや怨念ではなく、深い安堵と、そして、かすかな感謝の念を帯びていた。


やがて、聖石を覆っていた禍々しい魔力が完全に消え去り、そこには、清らかな緑色の輝きを放つ、美しい地の聖石が残された。泉には再び清らかな水が湧き出し、村の亀裂も、少しずつ塞がっていくのが見えた。


父は、息を切らしながらも、安堵した表情で地の聖石を見つめていた。


「よかった…元に戻った…」


これで、エルリア村の異変も収まるだろう。しかし、この聖石がなぜ汚染されたのか、そして、世界樹の精霊が「再びこの世界を」と告げた意味は、まだ完全に解明されていない。


聖石が放つ清らかな魔力は、周囲の凶暴化した魔物たちを鎮め、森にも再び穏やかな空気が戻ってきた。


俺たちは、清らかな輝きを取り戻した地の聖石を【アイテムボックス】に収納した。これで、七つの聖石全てが、元の輝きを取り戻したことになる。


しかし、この異世界で何が起きているのか。そして、この聖石が汚染された原因は、誰の仕業なのか。


俺たちは、エルリア村の地を後にし、新たな謎を解き明かすため、この異世界の奥深くへと足を踏み入れていく。

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