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第3話:隠された力と、謎の遺跡

俺の目の前からゴブリンたちが消え去った。


まるで最初からそこにいなかったかのように、跡形もなく。


「消えた…?」父が呆然とした声で呟いた。


俺も信じられない思いだったが、確かにゴブリンは消え去っていた。そして、俺の頭の中のステータス画面に、新たなスキルが表示されていることに気づいた。


強制収納フォースストレージ】:対象を問わず、任意の物体を収納する。対象の大きさや抵抗に応じて、多大な魔力を消費する。一度に収納できる量には限界がある。


「【強制収納】…まさか、俺が、今、あのゴブリンたちを収納したのか!?」


俺は自分の身体に漲る、今まで感じたことのない力に驚きを隠せない。魔力ゲージは、一気に50まで減っていた。やはり、かなりの魔力消費だ。


「健太…すごいぞ! よくやった!」父が俺の肩を叩く。矢が刺さった腕から血が滲んでいる。


「父さん、その腕! 母さんに治してもらった方がいい!」


俺たちは急いで家に戻った。美咲と萌が玄関で心配そうに待っていた。


「健太くん! お父さん! 大丈夫!?」美咲が駆け寄ってくる。


萌も、俺たちの無事を確認して、安堵の息を漏らした。


「ああ、大丈夫だ。だが、父さんが…」


俺がそう言って父の腕を指差すと、母がすぐに駆け寄って状態を確認する。


「悟さん! 大丈夫ですか!? 私に任せてください!」


母は震える手で、父の傷口にそっと手をかざした。すると、母の手から、淡い緑色の光が溢れ出す。光が傷口を包み込むと、みるみるうちに矢が抜け落ち、傷口が塞がっていく。


「おお…治った…!」父が驚きの声を上げた。


矢が刺さっていた場所は、まるで最初から傷などなかったかのように綺麗になっていた。母の【治癒の加護】、想像以上にすごい。


「すごいよ、お母さん!」萌が目を輝かせて言う。


母は少し疲れた様子だったが、父の傷が治ったことに安堵の表情を浮かべた。


「私も、自分のスキルがこんなに役に立つなんて…」


俺は、皆の能力が予想以上に実用的であることに、改めて感心した。


リビングに戻り、俺は森での出来事を皆に説明した。ゴブリンの出現、そして俺の【強制収納】。


「ゴブリン…本当にいるんだね…」美咲が震える声で言う。


「でも、お兄ちゃんがそんなすごい力を持ってるなんて!」萌は目を輝かせている。


「これで、敵に遭遇しても、何とか対処できることが分かった。だが、まだ外の状況は分からないことだらけだ」


俺たちは改めて、今後の行動について話し合った。


「やっぱり、まずは水と食料の確保が急務だな」父が真剣な表情で言った。


「そうですね。それと、この周辺に何か安全な場所や、人里がないかを探りたいです」美咲も同意する。


萌は、【魔力感知】で周囲の魔力の流れを把握すると言った。


「私、さっきからこの森の北の方から、すごく大きな魔力の流れを感じるんだ。でも、それが何なのかは分からない…」


萌の言葉に、俺は【空間認識】スキルで北の方向を探ってみる。確かに、萌が言うように、強い魔力の反応がある。しかし、それが何なのかまでは識別できない。


「何か、大きなものがあるのかもしれないな。もしかしたら、この世界の情報が得られる場所かもしれない」


俺は、その強い魔力反応の場所へ向かうことを提案した。


「危険かもしれないけど、手掛かりはそれしかない。もし危険だと判断したら、すぐに引き返そう」


皆も同意し、俺たちは北の方向へ向かう準備を始めた。


万が一に備え、俺は家を【家屋収納】で収納した。手のひらに収まるサイズの、家の形をした小さな光の塊が浮かび上がる。これは、まるで、ゲームの「ホーム」アイテムのようだ。


そして、改めて五人のステータスを確認した。


【佐藤 健太】


・職業: 家守ハウスキーパー


・スキル:


・【家屋収納ハウスストレージ


・【強制収納フォースストレージ


・【鑑定アプレイザル


・【空間認識スペースアウェアネス


・【家族のファミリーボンド


【佐藤 陽子】


・職業: 癒しヒーラー


・スキル:


・【治癒の加護ヒーリングブレス】:対象の傷や病を癒す。魔力消費大。


・【薬草知識ハーバルナレッジ】:薬草の識別と効能を理解する。


・【精神安定メンタルハーモニー】:周囲の精神を落ち着かせ、不安や恐怖を和らげる。


【佐藤 悟】


・職業: 護衛ガーディアン


・スキル:


・【剛力のストロングアーム】:一時的に筋力を大幅に上昇させる。


・【採集コレクト】:植物や鉱物などの資源を効率的に採取する。


・【危険察知デンジャーセンス】:危険な存在や状況を事前に察知する。


【桜井 美咲】


・職業: 交渉者ネゴシエーター


・スキル:


・【精神感応テレパシー】:相手の感情や思考を読み取る。意思疎通が難しい相手にもある程度有効。


・【魅力的な笑顔チャーム】:相手に好印象を与え、交渉を有利に進める。


・【情報収集インフォメーションギャザー】:噂や会話から有益な情報を引き出す。


【佐藤 萌】


・職業: 探索者エクスプローラー


・スキル:


・【魔力感知マナセンス】:周囲の魔力の流れや魔力を持つ存在を感知する。


・【隠密行動ステルス】:自身の存在感を希薄にし、敵から隠れる。


・【遠隔操作リモートコントロール】:視界内の小型の物体を遠隔で操作する。


俺たちは、それぞれのスキルを最大限に活用することを確認し、森の奥へと足を踏み入れた。


萌の【魔力感知】が指し示す北の方向へ進むにつれて、森の様子は徐々に変わっていった。木々はより鬱蒼と生い茂り、空気もどこか重苦しい。


しばらく歩くと、目の前に、信じられない光景が広がった。


そこには、巨大な石造りの建造物が横たわっていた。それは、まるで遥か昔に忘れ去られた神殿か、あるいは古代文明の遺跡のようだ。風化しているものの、その威容は圧倒的だ。巨大な石柱が天を突き、精巧な彫刻が施された壁には、見慣れない文字や紋様が刻まれている。


そして、萌が感じていた強い魔力反応は、この遺跡から放たれているものだった。


「すごい…何これ…」萌が呆然と呟く。


「遺跡か…もしかしたら、この世界の秘密が隠されているのかもしれない」父が目を細めて遺跡を見上げた。


俺は【鑑定】スキルで、遺跡の門を調べてみた。


【古の神殿の門】


・種別: 建造物


・特性: 強固な魔力障壁に守られており、内部への侵入を阻んでいる。特定の条件を満たさなければ開かない。


・解説: かつてこの世界の神々を祀っていたと伝えられる神殿。現在ではその多くが忘れ去られ、深い森の奥に眠っている。


やはり簡単には入れないようだ。


「門に魔力障壁があるみたいだ。【鑑定】では、特定の条件を満たさないと開かないって出てる」俺は皆に伝える。


「特定の条件…」美咲が首を傾げる。「どうすれば開くんだろう?」


萌が目を閉じて、【魔力感知】で遺跡全体を調べている。


「うーん…この門に繋がってる魔力の流れが、ちょっと特殊なんだ…何か、特定の『力』を求めているような…」


その時、母が遺跡の壁に近づき、そこに刻まれた紋様をじっと見つめていた。


「この模様…どこかで見たような…」母が呟く。


「母さん、何か分かるのか?」俺が尋ねる。


「ええ…これは、私の故郷の村に伝わる、古いお話に出てくる紋様に少し似ているわ。その紋様は、確か…『生命の循環』を表すものだと聞いたことがあるわ」


母の故郷は、日本の片田舎にある、古くからの伝統が残る場所だった。まさか、そんな知識がこの異世界で役立つとは。


「生命の循環…それが、この門を開く鍵なのかな…」美咲が考え込む。


その時、父が遺跡の壁に触れ、力強く【採集】スキルを使ってみた。しかし、壁はビクともしない。


「うむ…残念ながら、ただ壊すだけでは入れないようだな」


俺は、神が言っていた言葉を思い出していた。


『あなたたちの魂には、まだ微かながらも、失われた輝きが残っていた。』

『そして、私は、このアースガルディアという世界に、新たな風を吹き込みたかったのだ。あなたたちの持つ知識と、そして、あなたたちに与える新たな力によって、この世界に変化をもたらしてほしい』


この遺跡の門を開くには、俺たちの誰かの能力、あるいは知識が関係しているはずだ。


「そういえば、神様が、俺たちの能力は『魂の輝き』に応じたものだって言ってたな…」


俺は、母の【治癒の加護】と、この『生命の循環』という紋様を結びつけようとした。もしかしたら、母のスキルが関係しているのかもしれない。


「母さん、試してみてくれないか? その紋様に、君の【治癒の加護】の光を当ててみるんだ」


俺の提案に、母は少し戸惑いながらも頷いた。母は再び、紋様に手をかざし、淡い緑色の光を放つ。


すると、紋様が、母の光に反応するように、わずかに輝き始めた。


そして、その光が強くなるにつれて、門全体に、複雑な光の線が走り始めた。まるで、門にエネルギーがチャージされていくかのように。


キィィィィン…!


高周波の音が鳴り響き、門の中央に、光の渦が現れた。


ゆっくりと、その光の渦が大きくなり、やがて、門がまるで幻のように消え去った。


「開いた…!」萌が歓声を上げた。


門の奥には、薄暗い通路が続いていた。奥からは、微かな風が吹き込んできて、どこか神秘的な匂いがした。


「すごい、お母さん!」美咲が母の手を取って喜ぶ。


母も、自分の能力で門を開けたことに驚きと喜びの表情を浮かべていた。


「さあ、入ってみよう。何があるかは分からないけど、きっと、この世界を知るための手掛かりがあるはずだ」


俺たちは、新たな希望を胸に、未知の遺跡の奥へと足を踏み入れた。

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