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第2話:目覚める力と家の秘密

俺は頭の中に浮かんだステータス画面に目を凝らした。


【佐藤 健太】


・種族: 人族


・職業: 家守ハウスキーパー


・スキル:


・【家屋収納ハウスストレージ】:自己の家屋を任意の場所に収納し、展開することができる。収納時は家屋のサイズに応じた魔力を消費。展開時は魔力消費なし。


・【鑑定アプレイザル】:対象の基本的な情報(名称、種族、能力など)を識別する。


・【空間認識スペースアウェアネス】:家屋周辺の地形、魔力分布、生命反応を感知する。


・【家族のファミリーボンド】:家族および契約者の状態(HP、MP、位置)を把握し、僅かながら回復効果を与える。


・魔力(MP): 100/100


・体力(HP): 100/100


・筋力(STR): 10


・敏捷(AGI): 8


・知力(INT): 15


・精神(MND): 12


・幸運(LUK): 5


あまりにも突然の出来事に、俺は呆然とした。職業「家守」? スキル「家屋収納」? まるでゲームの世界じゃないか。しかし、神の声が現実だった以上、これもまた現実なのだろう。


「健太、どうしたの?」


美咲の心配そうな声で、俺は我に返った。


「いや、ちょっと、頭の中に変なものが見えて…」


そう言って、俺は皆に、自分のステータス画面とスキルについて説明した。父と母、そして美咲と萌は、最初は半信半疑だったが、俺が詳しく話すうちに、徐々にその奇妙な現実を受け入れていった。


「家屋収納…ってことは、この家をしまえるってことか?」父が目を丸くして尋ねた。


「たぶん。でも、試してみないと分からないけど。あと、【鑑定】ってスキルもあるみたいだ。これで、この世界のものが何なのか、調べられるかもしれない」


俺がそう説明すると、萌が目を輝かせた。


「じゃあ、私にも何かあるのかな? ゲームみたいだね!」


萌は普段からゲーム好きで、こういう状況にも意外と適応力があるのかもしれない。


「うん、きっとみんなにも何か力があるはずだ。落ち着いて、自分の身体に意識を集中してみてくれ」


俺の言葉を受けて、皆がそれぞれ目をつぶり、意識を集中する。数秒の沈黙の後、最初に声を上げたのは母だった。


「私…私にも何か見えたわ! 『治癒の加護ヒーリングブレス』って書いてあるわ!」


母の言葉に、皆の間に安堵と興奮が入り混じった空気が流れる。続いて父も目を開いた。


「俺は…『剛力のストロングアーム』と『採集コレクト』だ! これは何か役に立つぞ!」


父は腕を組んで、筋肉を確かめるように軽く拳を握る。確かに、頑丈そうな父にはぴったりのスキルだ。


次に声を上げたのは美咲だった。美咲は少し困ったような、しかしどこか嬉しそうな顔をしていた。


「私のはね…『精神感応テレパシー』と、『魅力的な笑顔チャーム』だって…」


美咲の言葉に、俺と萌は思わず顔を見合わせて吹き出しそうになった。魅力的な笑顔、って…。しかし、美咲の笑顔は本当に魅力的だ。異世界でも役立つのかもしれない。


そして最後に、萌が大きく息を吸い込んだ。


「やったー! 私も! 『魔力感知マナセンス』と、『隠密行動ステルス』だって! あと、『遠隔操作リモートコントロール』ってのもある!」


萌のスキルは、いかにもゲーム向きといった感じで、皆が感心した。特に『遠隔操作』は、使い道が多そうだ。


全員が何らかの特殊な力を得ていることが分かり、不安の中に一筋の光が差し込んだ。


「よし、これで戦う術は手に入れた。問題は、この家をどうするかだ」


俺は改めて【家屋収納】のスキルを確認する。消費魔力は、家屋のサイズに応じる、とある。

試しに、意識を家の形に集中し、「収納」と念じてみた。


すると、次の瞬間、まるで幻のように、家が目の前から消え去った。


「えっ!?」


「家が消えた!?」


美咲や萌の驚きの声が上がる。目の前には、さっきまで家があった場所の地面と、その奥に広がる森だけが残されていた。


俺の魔力ゲージは、100から80に減っていた。どうやら、収納には20の魔力が必要らしい。


「成功した! やっぱり、家を収納できたんだ!」


俺は興奮を隠せない。これで、家を危険から遠ざけたり、移動したりできる。


「じゃあ、出す時はどうするんだ?」父が前のめりになって尋ねる。


「『展開』ってあったから、きっと…」


俺は再び、心の中で「展開」と念じた。すると、目の前の空間が歪み、家がまるで時間巻き戻しのように、元の場所にゆっくりと再構築されていった。


俺の魔力は減っていない。展開時には魔力を使わないらしい。これは非常にありがたい。


「すごい! 本当に家をしまえるんだ!」萌が拍手して喜んだ。


「これで、この森の中を移動しながら、安全な場所を探せる!」美咲も笑顔になった。


家の収納と展開を試せたことで、俺たちの士気は一気に高まった。しかし、問題は山積している。食料、水、そして何よりも、この世界の情報だ。


「まずは、周りの森を少しだけ調べてみよう。すぐに戻れるように、家はここに置いておく。でも、もし危険な気配を感じたら、すぐに家を収納して移動するから、みんなも準備しておいてくれ」


俺はそう言って、玄関のドアを開けた。


外に出ると、森からは豊かな生命の匂いがした。しかし、同時に、野生の獣の気配も感じられる。俺の【空間認識】スキルが、微かにそれらを察知しているのだ。


「健太、気をつけてね」美咲が心配そうに言う。


「ああ。美咲たちは家の中で待っていてくれ。何かあったら、すぐに俺が戻ってこられるようにするから」


父も一緒に行くと言い出した。


「いや、俺も行くぞ。力が目覚めたんだ。健太だけに危険な目に遭わせるわけにはいかない」


父の言葉は、普段の少し頼りない父からは想像できないほど力強かった。


「分かった。じゃあ、二人で行こう。でも、無理はしないでくれよ」


俺は父と顔を見合わせ、頷いた。


母は食料になりそうな植物を探してみると言い、萌は【魔力感知】で周囲の魔力の流れを見てみると言った。美咲は、万が一の時に備えて、すぐに動けるように待機していてくれることになった。


俺と父は、慎重に家の周囲を歩き始めた。森の中は、見たこともない植物が生い茂り、鳥の声が響いている。空気は澄んでいて、日本のものとは違う、独特の匂いがした。


【鑑定】スキルを使ってみる。


目の前に生えている、真っ赤な実をつけた木に意識を集中すると、頭の中に情報が浮かび上がった。


【フレアベリーの木】


・種別: 植物


・特性: 果実は甘酸っぱく、微量の回復効果を持つ。ただし、過剰摂取は軽い酩酊状態を引き起こす可能性あり。


「これは…食べられるのか!?」


父が興奮した声で叫んだ。


「みたいだ。しかも、回復効果もあるって。でも、食べ過ぎると酔うらしいから、気をつけないと」


俺たちは早速、フレアベリーをいくつか採取した。見た目は日本のイチゴに似ているが、もっと大きく、鮮やかな赤色をしている。


さらに奥へと進むと、地面に奇妙な足跡があるのを見つけた。


【鑑定】。


【小型肉食獣の足跡】


・種別: 獣


・特性: 夜行性で、群れで行動することが多い。警戒心が高いが、空腹時は襲いかかる可能性あり。


「肉食獣か…やっぱり、この世界は危険と隣り合わせなんだな」


父の表情が険しくなる。


「うん。でも、これで敵の存在も把握できた。夜になる前に、安全な場所を探しておかないと」


俺たちはさらに森の中を探索し続けた。


その時だった。


ザワザワ…


森の奥から、複数の気配が近づいてくるのを【空間認識】スキルが捉えた。その気配は、明らかに動物のものではない。人の気配、いや、もっと違う、独特の魔力を帯びた気配だった。


「父さん、何か来る!」


俺はすぐに父にそう告げた。父も緊張した面持ちで、周囲を警戒する。


そして、茂みの中から現れたのは、弓矢を構えた数人のゴブリンだった。彼らは緑色の肌をしており、薄汚れた革の鎧を身につけている。その目には、敵意がはっきりと見て取れた。


「グギャアア!」


ゴブリンの一体が奇声を上げ、こちらに向かって弓を構える。


「くそっ!」


俺はとっさに【家屋収納】を発動させようとした。しかし、敵のあまりの出現の早さに、一瞬反応が遅れた。


ヒュッ!


矢がこちらに向かって飛んでくる。


その瞬間、俺の目の前で、父が盾になるように飛び出した。


ガキン!


乾いた音が響き、矢は父の腕に当たった。


「父さん!」


「くっ…大丈夫だ、健太! 大したことない!」


父は痛みに顔を歪めながらも、俺を庇って立ちはだかった。父の腕には、矢が食い込んでいる。


俺は怒りに震えた。この世界に来て初めて、本格的な敵意に直面した。


「てめぇら…!」


その時、俺の身体の内側から、説明できないほどの力が湧き上がってくるのを感じた。


俺の【家屋収納】のスキルが、【強制収納フォースストレージ】へと変化したような感覚。


もはや、意識を集中するまでもない。


俺は、すぐさま目の前のゴブリンの群れに照準を合わせ、心の中で強く念じた。


収納ストレージ!」


次の瞬間、驚くべきことが起こった。


ゴブリンの群れが、まるで透明な壁に吸い込まれるかのように、次々と目の前から消え去ったのだ。

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