1942年の春
初投稿です
真面目な雰囲気出したいるけど、本当はバカみたいな小説ですので、暖かい目で見守ってくださると幸いです
──1942年 5月 30日 ドイツ上空
「現在、ドイツ占領地上空です」
この日、1000を超えるイギリス空軍爆撃機が、ケルン市街を焼き払うべく出撃していた
周囲にはウェリントンやランカスター、ホットレイやハリファックス等、様々な爆撃機が編隊を組み空を進んでいる
既にドイツ占領地上空ということもあり、機内は張り詰めるような空気で満たされいてた
「機長、大丈夫なんですかね?」
機内の1人が不安に耐えきれず、通信員のジェームズが独り言じみた疑問を漏らす
「安心しろジェームズ、1000機の爆撃機が居るんだ ナチのじゃがいも野郎共もあまりの数に慄いて、文字通り飛んで逃げるだろうさ」
総飛行時間は1100時間を超えるベテランパイロットでもある機長がジェームズの不安を打ち消すため、明るい口調で言葉をかける
しかし、機長の言葉はジェームズや他のクルーのため、というより自身に暗示をかけているようにも見えた
機長の言葉を最後に、再び機内には重苦しい空気が漂う
まるで我々はこれから死にに行くのだ、とでも言わんばかりの雰囲気だ
なぜこんなにも重苦しい空気が漂っているのか
その理由は先日行われた爆撃にあった
───────
扉を叩く音が部屋に響く、"恐らく、爆撃の戦果報告だろう"─と考えた部屋の主は入室を許可した
一人の男が、紙を数枚持ちながら部屋に入る
「一機を除いて全滅、だと… 一機を除いて帰還の間違いではないのか?」
しかし、男の想像とは違い入ってきた報告は爆撃隊が全滅した、という損害報告だった
今回の90機前後が投入された爆撃において、イギリス空軍はあまりにも多すぎる損害を出した
生還した機体も"たまたま致命部に当たらなかった"としか言えない状態であり、水平尾翼は1枚を失い、エンジンは辛うじて2機動いていた程度、それも生きていた片方は着陸と同時に停止している
「生き残ったクルーによると、ドイツ側に"異常なほど速くて高火力な奴がいた"との事です その新型と思われる敵機によってほぼ無傷のランカスターがひと薙ぎでバラバラになったとの事です」
B17などに比べれば防御が劣るランカスターだが、決して防御が柔らかい訳では無い
むしろ防御銃座なども含めてみれば爆撃機の中でもかなり頑丈な方である それがいとも容易く粉々にされたということは、少なくとも20mm級の威力はあると見ていいかもしれない
「………上には報告したのか?」
「報告しましたが……"誤報では無いか?"の一点張りですね」
「上も、政府も戦争に直接貢献している、という事実を手放したくないんだろうな…我が国が直接ドイツと砲火を交えているのはアフリカのみだ」
「戦果は不明、その上90機近くを一気に失う大損害なんて、さすがに国民にも報告できません」
「あとは政治的なところもあるだろう 直接戦っている、という事実が無くなればソビエトや亡命政府の奴らにに言われるかわかったもんじゃない」
「恐らく、上層部はまだまだ爆撃を続けるつもりです "効果がなくてもいい、とにかく爆撃した事実が重要だ"─なんて言ってくるかもしれません」
「……上の我儘で死ぬのは我々なんだがな」
残念ながら、一部の反対を振り切りケルン爆撃は行われることとなる
1000という膨大な機数による夜間の飽和攻撃によって
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「先行してるヤツらのおかげでだいぶやりやすくなった 全機、俺に着いてこい! 敵編隊を食い破るぞ!」
クルト・ヴェルターの駆るMe262 b-1a/u-1が2基のjumo004を唸らせながら爆撃機の編隊に突入する
最高860m/hの快速を誇るこの機体の特徴を生かし、敵の銃座が捕捉することなどできない速さで攻撃し離脱していく
Mg151/20とmg108から放たれる20mm弾と30mm弾はいとも簡単に爆撃機を貫き、破壊した
ある機体は翼が折れ、まるで風を受けた風車のようにぐるぐる、ぐるぐると回りながら急激に高度を落としていく
また、ある機体はパイロットがやられたのか、がくんと項垂れるように高度を落としていく
辛うじて飛行しているものの、尾翼をやられたのか操舵不能になった機体が左へ右へと揺れながら飛ぶ機体や、胴体が真っ二つになる機体もいた
機体に付けられたレーダー情報をもとに大まかな狙いをつけ、トリガーを引く
複数の曳光弾が闇に消えたかと思えば、爆撃機に炎がほとばしる
ヴェルターは消火したとしても、任務継続は不可能に近いだろうと判断し別の目標を狙う
何度も敵爆撃機を落とし、弾数もやや心許なくなってきた頃だった
恐らく、他の基地から来た爆撃型のMe262が照明弾を敵編隊の上にばら撒いていく
目を凝らしてみれば、いつの間にかMe262が数多く飛び交っている 恐らく、照明弾が照らしていること前提の通常戦闘型の機体達だろう
レーダーが積まれた夜間型ならともかく、レーダーを装備していない通常型では命中率を期待できない しかし、残弾の少ないヴェルター達にとってはありがたい援軍だった
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結果として、ドイツ軍はケルン市への爆撃を完全に防ぐことは出来なかった
しかし、爆撃隊に壊滅と言えるほどの損害を受けたイギリスは大規模な爆撃をアメリカ主導の戦略爆撃が本確指導するまで自粛していくこととなる
史実とは違い、万単位で出たケルン市の犠牲者数はかなり抑えられました
理由としては戦闘機隊が殆どの機体に損傷を与えたことや、各編隊が全滅もしくは半減したことにより組織的な爆撃が成功しなかったためです