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とある貴族の望蜀  作者: 彼岸渡利
平穏という幻想
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会議の輪舞

 この王国では王政をとっているとはいえ貴族派の方々をないがしろにすると派兵拒否や兵站部隊の妨害といったなかなかに攻撃的な意思表示をしてくる貴族が多い。そのため貴族派まで巻き込まなければならないような有事に対してはこのように会議を執り行って他派閥にも配慮して政治を行っていく。


 「今回、皆に招集をかけたのは他でもない、聖王国、評議会に対して救援部隊を派遣するか、物資援助は行うのかなどを話し合っていきたい。」


 「ふむ、派兵すべきでしょうな。このような好機を逃すわけにはいきますまいよ。ご要望とあらば我が私兵を派遣しても構いませんぞ。」


 「派兵は見送るべきかと存じますぞ。以前の「大嵐」の傷も完全に癒えてはおりませぬ。地方になればなるほど未だにまともな営みが戻っていないところもある始末でございます。魔獣どももおとなしくしているわけではありませんから不用意に国内の戦力を減らすわけにはいきませぬ。」


 真っ先に口を開いて派兵宣言したのが貴族派閥筆頭のローゼン・アゼリウス侯爵、次に派兵反対を口にしたのが保守派筆頭のランバート・ライゼル侯爵でどちらもたっぷりとした髭を蓄えながら、ローゼン卿は最近貴族の間で流行っている眼鏡をしており、ランバート卿はしていないものの「大嵐」のときに受けた傷が印象的だ。貴族派は前回の「大嵐」の際にそこまで被害を受けていないこともあり、余力はあるのだが、この国特有な思想なのだが、消耗していないということは前線から逃げていたと取られるため、余力を持っているにも関わらず肩身の狭い思いをしている貴族がちらほらいる。そのことから今回の件で派兵して武功を挙げたいのであろう。


「しかしですなランバート卿、かの国からの救援要請があったようなものですぞ。これを機会にして地図の作成やら支援物資を出すという名目での経済圏への進出と出来ることは多いのですぞ。この時をみすみす逃すなど我が国への損失に他なりませんぞ。」


 「それをいうのでしたらローゼン卿、どこからその兵隊は捻出するのですか。城兵を出すわけにはまいりませんし、衛兵などもっての外です。兵士に至っては先の件で巡回出来ていない地域があるのですぞ。貴族の私兵を派兵したとして兵士の代わりをしていた私兵達がいなくなる貴族の領地はどうなりますか。支援物資と申しますがそれを作る前に自国の民に出さねばならぬ物資さえ不足しているのですぞ。卿は物資を供出してくださるのですかな。」


 派兵をして威信を取り戻したいローゼン卿、自国内政地盤を固めたいランバート卿となんとも面白い討論が続いている。聞いているだけなら国民を大切に思う保守派の意見が採用されるほうが良いのだろうが、舞台裏はそうでもない。

 保守派は武力よりも経済圏に食い込むことで貴族の矜持を保とうとした集団といっても良いほど各市場に根をはっている。だが、立ち回りのうまい貴族ばかりではないため、商人たちからは疎まれているものもいるのは事実である。

 貴族派は強い者が統治をすべきという考え方が多いので先ほどから私兵の派兵を訴えているように兵力そのものは持っているがそれを維持し続けるだけの経済力を持っているものはごく少数なため兵士や城兵に出向という形で貸し出しをしている貴族もいる。各派閥の特色から経済圏を守れればそれでよい保守派は戦時になれば確かに特需が見込むことが出来る。しかし、その特需の代わりに貴族たちの娯楽への費用が確実に減ることになる。売れれば大金が動くが売れなければただの綺麗な石ころや服を戦火がやむまで維持し続けるというのは非常に骨の折れる話だ。復興が中央は落ち着き娯楽に目を向けれるようになってきた今を長く続けたいのが保守派の思惑である。

 対して貴族派は先の「大嵐」では自領防衛に向けた貴族が多く、王太子の護衛の為に多くの兵力を損耗した保守派と違い兵力を持て余している。貴族の矜持を取り戻すためになりふり構っていないものもいるのだろう。


 「ならばランバート卿は王都を守護するとよかろう、我がローゼン家とその一族はかの国に救援に行かせていただく。国王、それでよろしいかな」


 平行線をたどる両者の問答に飽きたローゼン卿が強引に議論を打ち切ろうとしている。それを良しとするはずのない国王が口を開こうとしたとき、会議室の扉が乱暴に叩かれた。


 「なにごとか、国王の御前なるぞ」


 近衛兵が扉を叩いているものを咎めるが、それを無視して入室してきた兵士がとんでもない発言をしてくれた。


 「ご注進、緊急事態につき失礼します!南の荒野より多数の魔獣が王都に向けて向かっているとのこと!その中に人語を話す魔獣がおり即応した兵士や冒険者を惨殺!なおも進行中とのことです!」

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