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とある貴族の望蜀  作者: 彼岸渡利
平穏という幻想
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大会議

 状況を整理しよう、ウォール連邦とは聖王国や評議会よりさらに北の地に首都を構える国で、農耕地も少ないことから常に南に領土を広げることを考えている国だ。ドーツ帝国はこの大陸の最東にあるとされている皇帝を頭とした国で好戦的ではあるものの理由がないときには攻めてくることはないといった何かの線引きをしっかりとしている国だ。ロフィカ評議会はエルフが多く所属する国で国土の大半が森となっているため聖王国や帝国と隣接しているものの簡単には攻め込んだりできない地形となっている。この国としては目の前に国の重要人物がいるということもあり、恩を売るという面でも派兵はありえる話だが、どうでるのかは国王陛下の次の言葉で決まってもおかしくはないだろう。


 「これは、なんともこのような所で聞くとは思いませなんだな、いやはや猊下がいるとはいえ困ったものですな。」


 「ふむ、後ほどお話を伺いましょう。積もる話もありますしな、とかく今はこの場を楽しまれよ大司教殿。」


 国王の言葉とともに料理が運ばれてくる。見覚えのない料理が多いようだがこれはなんだろうか、基本茶色が多いため、見た目がお世辞にも綺麗とは言えない。


 「鶏や豚みたいなのがいてよかったわ!何度か失敗しちゃったけど若鶏のから揚げ、とんかつもどきができたわよ!この国のごはんあんまりおいしくないから料理長と試行錯誤をして二ホンと似たものを作ったわ!」


 鶏は時つげどり、豚はキノコイノシシだろうか時つげどりは卵を産むのだから、若い状態で絞めるというのはなんとももったいないことだが、そうか、妙な食材の買い方はこれが原因か、要するに勇者がどうのというよりも時つげどりのような食材を即座に用意することが出来て、死にかけではなく若鳥をそろえることが出来るということは大商家か後ろに何かついている商人の可能性が高いだろう。特定したいというよりも候補を絞りたいからということだろうか。

 そんなことを考えていると他の貴族たちが勇者御一行の故郷の料理に舌鼓をうっている。ふむ、油で揚げているのだろうか、かなり塩辛いこの料理を勇者殿たちは日常的に食べていると考えるとその世界はどのような貧富の差があるのだろうかとぞっとしてしまう。目先の利に執着しやすい典型的な貴族が今回のパーティに出ている料理に魅了されているなか、軍閥貴族や新興貴族は勇者に興味津々に話しかけに行っている。

 

 「さて、バーク卿、私はここらへんで退席させていただきます。良き夜を」


 「ふむ、私ももう少ししたら退席するとしよう。あの状態では勇者殿と話すことも難しいだろうしな。良き夜を、シャール卿」


 控室にいたテンタルと合流し、足早に我が館に帰還してから忙しいことになることは必死なのだが、帰途を急ぐのであった。

 

 翌日、冒険者組合に顔を出した勇者御一行はさっそく依頼を受けて依頼先に出向いているらしい。一行が受けた依頼は商家からの依頼で王都の市場で度々盗みが発生していて、兵士さえも手を焼いている一党が出没しているそうだ。確か3番の報告書にそう書いていたはずだ。なるほど、この問題に手を付けるのか、どのように解決してくれるのだろうか。

 私も久しく王都に居なかったこともあり、久々の貴族社会を四苦八苦しながら乗り切っていた。面白いことに、武闘派貴族が多いながらも周辺国に対する見栄もあるのか視覚的情報に金をかけることに勤しむものが一定数存在している。

主に貴族派の方々がそうなのだが、コーディネートは店に丸投げというのが多い。そのため有名な服飾店や宝石店に入れば話好きの方々がいらっしゃるのでそこで情報収集をさせていただいた。あの方は最近葡萄酒にはまっているやら赤い宝石を集めているご婦人がいるやらと話を聞いている中で勇者御一行の話も舞い込んでくる。やれ一党の末端を捕まえただ、それ貴族派の貴族が関わっているだといった話が聞けたが目的は達成できたので私は帰路につかせてもらう。


 「旦那様、お待ちしておりました。招集令が出ております。至急、王城へ向かわなければなりません。」


 館に帰ってくるとテンタルがこんなことを言ってきた。先ほど仕入れた情報をもとに手土産の用意を手配しつつ、王城行きの装いに身を包んで向かうことになった。

 王城内は前回のパーティ時とは打って変わって物々しい雰囲気に包まれていた。近衛、兵士、城兵と大会議室に向かうまでに様々なものと出会いその誰もが足早に駆け回っている。他国とはいえ、宣戦布告があったため我が国も備えをしなければならない。今回はそれらのことを会議することになるのだろう。

 大会議室に到着するとすでに何人かは到着しており、自身の席に着席をしている状態だった。私も着席し、徐々に人が増えていき伯爵家以上の家柄を持つものが集まる場所となった。程なくして、国王と各王太子が来られ、会議が始まった。


 「諸君、集まってくれたことに感謝の意を表させて貰う。それでは、今回の聖王国並びに評議国に対してなされた宣戦布告について、我が国の対応について大いに意見を出しあって欲しい。」

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