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とある貴族の望蜀  作者: 彼岸渡利
平穏という幻想
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終宴を告げる一報

拙作をクリックしていただきありがとうございます。

 壇上に立つ3人のうち2人は珍しい髪の色をしている。背格好だけ見ると近衛師団長と互角に戦えるとは決して思えない。そして、やはり我が国の貴族たちは皆どうしようもなく武闘家なのだろう。さっきから何名かが殺気を彼らに飛ばしている。そうこうしている内に彼らが話し始めた。


 「えっと、自己紹介をした方がいいのかな、僕はイリエカイトっていいます。この国の偉い人からは勇者の恩寵を授かっているらしいです。よろしくお願いします。」


 「次は私ね、私はイムラコスズ。恩寵は魔女って言われたわ。よくわからないけど私たちの力が必要なんでしょう。やってやるわよ!」


 「おっとこの流れは乗らないとか、俺はスズキツトムっていって恩寵はなんだったかな、聖騎士だったか、まぁそんな感じでよろしくぅ。」


 これは、なんとも貴族社会でも学び舎でしか出会わないような性格をしている勇者御一行といったところか。それにしても全員が強力な「恩寵」持ちとは厄介極まる。

 無意識の内にこの場からの退路を探っていると不穏な動きをしているものが何人かいる。新興貴族の誰かだろうか、そこまで我が国の貴族の顔を覚えているわけではないが、それにしても見たことがない連中だ。こんな場面で変なことをしないで欲しいものだが、事と次第によってはこのパーティが血なまぐさいものになりかねない。バーク卿と他何名かも気づいたようで動ける態勢をとっているものも何名かいる。壇上では王子たちと勇者御一行が和気あいあいとしているように見える会話をしているのが目の端に入ってくるが、正直それどころではない。

緊張が爆発しようとしているさなかに会場の大扉が開かれた。

 このタイミングでの到着とはなんとも狙っているとしか思われない時に「剣の大司教」が大扉を潜ってきた。傍らには聖王国を代表する真鍮の鎧と円筒状の兜を被っており、外套の裏地を藍色に染めている。紛れもない「聖騎士」の特徴だ。聖騎士達は我が国の近衛兵と似たような立ち位置だが、異なるところは独断行動をある程度許されているところだろう。すでに大扉の潜ってきた4人の聖騎士のうち2人は兜を外して酒を飲んでいる。

 

 「これは大司教殿、今回の席に来ていただき誠に感謝しますぞ。」


 「ポールト王におかれましてはご機嫌麗しく存じます。いえ、こちらとしても勇者召喚というのは一大事ですからな。ご協力させていただい甲斐があったというものです。」


 二人のそばにいるわけではないのにここまでしっかりと聞こえる声量で話をしているということは、聖王国との関係を内外に周知したいということだろうか、それにしても「協力」とはどういうことだろうか、王国の力を増強させて良いことなどないだろうに。いや、そういうことか、事実だとすると思いのほか「剣の大司教」も我が国の国王も外道ということになるが。情報が足りないしむやみに触れてよい話題でもないだろうから小さな事実を見つけていかなければならない。

 正直、勇者殿たちや国王が何やら喋っていることなぞ頭に入ってこないが、魔王なるものが北の地にある連邦のさらに奥の地域に魔王が出現する預言が出たやら聖女とともにその魔王を打ち倒すだのといった話だったと思われる。

 「魔王」これまたおとぎ話に出てくる悪い存在だが、その存在や何故そのようなものが現れるのかも不明な概念のようなものと思われる。この「魔王」が現れることで「大嵐」の発生頻度が上がったり、各地で魔獣を率いる隊長のような存在があらわれるらしい。少なくともおとぎ話になっているのだから近年は発生していないのだろう。確かに世界という大きな単位ならば問題なのだろうが、私のような地方領主には手の届く範囲の守護を優先するので手一杯になるだろう。和やかながらもどこかひりついている空気を打ち破る存在が現れた。


 「国王陛下、ご歓談中に申し訳ありません。御注進にございます。ウォール連邦国が聖王国に宣戦布告、それに呼応する形でドーツ帝国がロフィカ評議会に宣戦布告したとのことです。」


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