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とある貴族の望蜀  作者: 彼岸渡利
平穏という幻想
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王都の懐事情

 普段であれば特に表情を変えることもなく報告をしてくるリーリヤが、珍しく眉間にしわを寄せて神妙な顔つきで報告をしてくる。


 「搬入のされ方と言いますか、用意の仕方なのですが、通常パーティを行うのであれば新鮮な野菜や肉、上等な酒を御用商人から一括で買い上げるのが一般的です。ですが、今回は様々な商人から買っているのです。しかも野菜一つとっても最低2つの商家から。異物混入の恐れがありますから御用商人のような王城に卸す知識のないものも混じっております。続いて、妙なものですが、通常であれば食用としては使われていない薬草が何品か王城に搬入されております。毒物ではないようですが、使用用途は不明です。」


 御用商人を通していないというのは気になる。王家を存続させるためにも買い付ける商人を絞り、物品についても規制をすることで守護している。毎年厳正な審査を潜り抜けた商人たちのみで構成されているはずなのだが、王都に顔を出さない間に方針が変わったのだろうか。


 「ふむ、妙な動きならば短剣共がどうにかするだろうが、物品一つ一つを再検分する時間はないだろうな。薬草というのだからそう悪いものではないのだろうが、私はパーティに出ている品は食べない方が良さそうだな。」


 「えぇ、その方がよろしいかと存じます。私もテンタルも同行することは困難ですから。」


 基本的にパーティ会場には専用の使用人を主催者が用意するため、警備の面も踏まえて個々人の使用人は会場そのものに入ることはできない。もちろん、主催者の邸宅にそのまま宿泊するというのであれば最低限の人数を連れていくこともあるにはあるが、今回は王家主催ということもあり王家に連なるものでもなければ日帰りが基本となるだろう。私もそのつもりだし、今回のパーティと最低限の社交を終えれば即座に領地に引っ込むつもりだ。


 「それでは、他の報告は私が受けておきましょう、旦那様はお休みください。」


 テンタルがそのような提案をしてくれたのでお言葉に甘えることにした。執務室を辞して私室に戻った私は、数日前に王家の招待状と同時に来ていた封筒の中身を確認することにした。テンタルが「いつもの方」というのは他国と隣接している他の貴族の領地の情報を集めて貰っている一団の団長からのものだ。本業は冒険者のため余程深入りしない限りは情報収集をすることは出来ることが多いためだ。この国以上に魔獣との付き合いが長い国もそうないため、こちらの兵士のようなものを連れて国境付近を歩かない限りは何も言われないことが多い。

 手紙の内容は大まかに3つの報告が書かれていた。1つ目は聖王国との国境沿いに思いのほか多くの魔獣が出現していること、それに付随する形で2つ目の報告は信者達と魔獣との小競り合いが増えているというものだ。基本的に対人を想定していると思われる信者が対応しているというのが少し気になるところだ。

 3つ目は衝撃的な内容だった。このパーティに出席するためと思われる聖王国の一団が目撃されていたようで、そこには「大司教」が乗っていることを指すタペストリーが掲げられた馬車があったそうだ。「大司教」とはこの国の「魔皇卿」と同等の力を有しており基本的には聖王国の首都にある大神殿に務めているらしい。

 らしいというのは聖王国は基本的に聖騎士のみが前線に立つため、滅多に教会の中心人物が外に出てこないのだ。今回は「剣の大司教」が出てくる程のことが仮想敵国といってもいい我が国のパーティにはあるということだ。

 彼らが使う力は「法力」と呼ばれており、難しい話はよく分からないのだが我が国や他の国の「魔術」とは別体系のものなのだそうだ。魔術は自然現象の起点部分を人工的に創造することで発動し、法力は事象そのものを具現化させるだったか。まるで意味がわからないがそういうことなのだろう。

 そうこうしている内に食事の時間になったらしくテンタルが呼びに来たため食堂へ向かうと2番と3番が待っていた。

 

 「3番じゃないか、王都の情報収集はどうだ、面白い話は聞けたか。」


 「・・・・・・・・順調。」


ふむ、順調ということは何かこちらが欲している情報を得ているということだろう。3番は基本的に喋るのではなく報告書で全てを済ませようとするところがあるため、たまには話しかけないと本当に声を忘れそうになる。


 「それは重畳だ。ゆっくりと報告書を読みたいところだが、知っての通り重大なパーティが間近に迫っているのだ、最低限で構わないから口頭で頼めるか。」


 「・・・・・・物価そのものは安定している。・・・・・・少し木材が高騰を初めている。・・・・・・連邦からの輸入品が徐々に減っている。」


 「ということは市場そのものは変動をしておらず安定しているが、木材の供給減少もしくは消費拡大が生じていて、同時期に連邦からの品が減っているのか、減ってきている品物のリストはあるか。」


 3番から差し出されたリストをざっと見ると大きく分けて食品、木材、鉱石類の輸出量が減っているようだ。あからさますぎるのが逆に怪しいが厳しい北の冬に備えて木材、食品の流出を抑えているということも考えられる。正直、連邦とは聖王国や評議会を挟んでいることもあって直近の情報を得にくいのが難点だ。

これだけで判断することは危険なことは百も承知なため、引き続きの調査を3番に命じ、2番には連邦へと飛ぶように指示を出し、目の前にある冷めきった食事に手を付けるのであった。

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