祝祭は誰の為に
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短いですが、キリが良いと感じたので投下しております。
大陸の各国の情勢が安定していることもあり、ここ数年は小競り合い程度はあるものの本格的な戦争に繋がる戦闘は起こっていない。
民にとっては戦争がない方が良いことだということはよくわかるし、勇者というある種の究極兵器になりえるものがこの王国に現れたのだ、浮かれるなというほうが無理があることはわかっているが、あまりにも楽観視がすぎる。
「ここ最近は明るい話題が御座いませんでしたから、民達も久方ぶりの吉報にうかれているのでしょう。」
「ふむ、吉報かどうかは怪しいものだが話題が必要というのはその通りだな、いささか巡回している兵士の数が普段よりも多い印象は受けるが。」
我が王国では門や関所を守備する「衛兵」、街中や街道を巡回する「兵士」、王城や砦を守備する「城兵」、王家や王家に連なるものを守護する「近衛」と大まかに4つの軍人で構成されている。今私たちはタウンハウスに向かっているのだから兵士とすれ違うのは当たり前なのだが、祭りを楽しむわけでもなく短槍を持って3人1組で歩いている光景を先ほどから何度も見かけている。祭りという一種異様な状態にあるからこそ民達も気がそちらにいききっていないのだろうが、これはあまりにも物騒な状態だ。
「言われてみれば多いですね、彼らで何が出来るというわけでもありませんが、確かに数というのは恐ろしいですからね。彼の方々の切っ先がどこに向いているのか探らせてみますか。」
「やめておけ、王都内にも短剣が転がっているだろうからむやみに拾いに行く理由もないだろう。」
そうこうしている内に一応貴族席があるため見栄えにもある程度関心を持っておいた方が良いだろうと貴族街の中心部からは外れたところにある母屋を挟むように対称に建てられた塔を有した館についた。この対称性を気に入って購入したもののひと昔前に建てられたものらしく掃除と修繕が大変だったため思い入れもそれなりにはある。その館の入り口前に使用人服を着た数名が立っている。
リーリヤと使用人たちだ。タウンハウスの使用人は貴族を招くことも想定されたため、リーリヤ以外は騎士爵や準男爵の次女や三女といった政争に使うにしてもと貴族どもが尻込みする女性を集めて教育を施し、切り盛りをして貰っている。今では変わった様式以外でなければ対応可能な精鋭となっていて、魑魅魍魎跋扈する貴族社会という戦場の最前線で闘ってくれている。
「旦那様、お待ちしておりました。王都にタウンハウスを持っている方々はすでに多くが王都入りしており、各派閥が大きく蠢動しております。ご注意ください。」
「実に素晴らしい目覚めの挨拶だが、しっかりとした話は後程聞くとしよう。リーリヤ、早ければ2.3日後に王城で王家主催のパーティがあるだろうから、準備をしておいてくれ。」
「その件についても御耳に入れたいことが御座います。執務室にて報告させていただきます。」
出来れば良い報告であることを期待しながら遠くで聞こえる祝祭の喧騒に後ろ髪を引かれながら王都での我が家に歩を進めていくことにした。




