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第47話 お誘い

「聖都ですか……」


「ええ。今、ズッケーア大陸では五大悪氣が今までにないほど活性化しています。これから益々悪氣が増えていくでしょう。事態は喫緊してると言えます。その為、我々カトリーヌ教としましては浄化のできる優秀な聖職者を広く集めているのです。カミヒト様が東の大陸から布教の為にやって来たことは聞いています。カミヒト様にはカミヒト様の目的があるのでしょう。しかし、それを承知でお願いします。どうか我々と共に聖都へ来ていただけませんか?」


 まさかの改宗のお誘いだ。とは言え、カトリーヌ教の事はまだよく分かっていないし、僕にはセルクルイスでやらなければならない事がある。それに神正氣を集めるためには自身が崇められる必要があるので、入信することは出来ない。イーオ様自身も、謎なところがあるからな。同類ってどういう意味だろう。


「僕なんかを評価してくださって、ありがとうございます。しかし、僕には僕の使命があるので、申し訳ありませんがお誘いを受けることが出来ません」


「……そうですか。無駄だと分かって一応聞いてみたのですが、やはりダメでしたか。無理を言って申し訳ありません」


「いえ、それでも僕の力が必要ならいつでも仰ってください。出来得る限り力になります」


「ありがとうございます。その時は頼りにしております」


「イーオ様、そろそろ時間ですので。店主殿、これからはきちんと規則を守ってください。私があなたの店に立ち寄っていなかったら、この貴重な霊光石は廃棄されるところだったのですよ。それがカトリーヌ教にとってどれほどの損失かお分かりでしょう? 本来なら何かしらの処罰を与えなければいけませんが、イーオ様が不問になさってくれるそうです。イーオ様の寛大な御心に感謝なさい!」


「も、申し訳ありません! イーオ様、ご容赦くださりありがとうございます」


「カチョウ、そんなに責めてはいけませんよ。誰にも間違いはあるんですから。店主さん、次からは気をつけてくださいね?」


「は、はいぃ」


 にっこり微笑むイーオ様に店主のおじさんはデレデレだ。


「カミヒト様、せめてこちら金貨は受け取ってください」


 先程、前金といわれた袋を渡された。これは受け取ったほうがいいんだろうな。相手の面子を保つためにも。


「ありがとうございます」


「ふふ、またお会いしましょう。それでは皆様、御機嫌よう」


 イーオ様と秘書さんと護衛の騎士の人たちは部屋を出ていった。イーオ様の印象は初めて会った時と一緒で清楚かつ清純の、王道美少女だった。真っ赤なんだけどね。


「兄ちゃん、すまねえなあ」


「いえ、全く気にしていないのでお気になさらずに」


 おじさんには正直同情している。誰だってあんな汚い物が、大層な力を持ってるなんて思わないもんなあ……。当の僕だって、汚ないから売ったし。


「カミヒトさん、私に用があると聞いたのですが、部屋を替えて伺いましょうか?」


「いえ、大したことではないので。モンレさん、中央広場の廃教会なんですが、あそこの中って見る事はできませんか?」


「廃教会ですか……。理由を伺っても?」


「特に理由はないんですが、価値のある建造物だと聞いたので……」


 本当の理由は、鎖に巻かれた女の幽霊をみて凶兆を感じたから、その幽霊探している。あの廃教会は彼女に縁がありそうなので見てみたいのだ。しかし、正直に言っていいものか。不吉な兆候を感じたのは僕のただの勘だから。それに異世界での幽霊の立ち位置ってどうなんだろう。幽霊が見えます、なんて言ったら頭の残念な人の様に思われないだろうか。


「ええ、確かにあれは、セルクルイスがまだ村だった頃からある由緒ある教会ですから。しかしあの廃教会は中央教会と違い、セルクルイス領の管轄ですから、私の一存では中を見ることは出来ません。歴史的な価値があるのですが、だいぶ傷んでおりますので、領主殿に許可を取らなければなりません」


「どうにかお願いできませんか?」


「他ならぬカミヒトさんのお願いですから、明日にでも領主殿にお願いしてみましょう。彼とは懇意にさせてもらってますから、了解は得られるでしょう。案内のお供は付くと思いますが、よろしいですかな?」


「はい、ありがとうございます。突然無理を言って申し訳ありません。それともう一つ、僕が前回泊まった宿の同じ部屋に泊まることって出来ますか?」


 一番最初に女の幽霊に会ったのはあの部屋だから、もしかしたら今夜にでも尋ねてきてくれるかもしれない。その時はちゃんとドアをノックしてもらいたいな。怖がらせるような登場の仕方はNGだ。


「ええ、大丈夫ですよ。あそこは教会のお客様専用の部屋なので、一般の方が泊まることは出来ませんから、常に空き部屋になっています。今は誰も使っていないはずですから、お泊りになれますよ」


「ありがとうございます。助かります!」


「カミヒト殿、私からもお話があるのですが、よろしいですか?」


 そういえばアリエさん、イーオ様と一緒に出ていかなかったな。


「構いませんが、イーオ様の護衛はいいんですか?」


「その任は解かれましたので。別の部屋で二人で話したいのですが……」


「では、我々が出ていきましょう」


「ご配慮ありがとうございます、モンレ殿」


「いえいえ、お気になさらずに」


 モンレさん、ミモザさん、カナリさん、おじさんは出ていき、部屋には僕たち二人だけが残った。


「なにかお困り事があるのですか?」


「えっ?」


「先程お会いした時に顔を見て、ずいぶん気を張っているように見えたものですから。あの廃教会がなにか?」


 おう、まるっとお見通しされている。彼女には本当のことをいってもいいかな。でも信じてくれるかわからないし、巻き込んで迷惑かけたくないし。


「何か懸念されている事があれば、相談に乗りますが?」


「お気遣いありがとうございます。でも、アリエさんは僕に話があるんですよね? 先にそっちを伺いたいと思うのですが……」


「……そうですね。では」


 アリエさんはスゥーッと深呼吸して、真剣な眼差しで僕を見つめこう切り出した。


「カトリーヌ様の御霊みたまが少し前から行方不明になっています。カミヒト殿は何か知りませんか?」

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