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第14話 招かれざる客①

 煤子(すすこ)様の浄化を終えてから、僕は超越神社でまったりとしていた。今日はここに泊まるつもりである。理由は怖いから。異形の山の神を見た直後だからか、今日はどうしても結界が張ってある安全な超越神社で寝たいのだ。

 

 境内にある住居兼本殿には家具類がないので、おじさんに頼んで、近くのデパートで布団一式と小型の電気ヒーターと着替えやら歯ブラシやら日用品などを買うのを手伝ってもらった。費用はなんと、霊管が払ってくれた。やったね。

 

 買い物には天女あまめちゃんも付いてきて、初めてのデパートに大はしゃぎだった。今日は急いでいたので、今度来た時はゆっくり見て回ろう。

 

 ちなみに天女ちゃんはとんでもない美少女故に目立つので、湿原しめはらさんが芸能人お忍びセットを用意してくれた。でかいサングラスにマスク、パーカーにつばの長い帽子をかぶれば、どっからどう見ても普通の人。ではなかった。スタイルが抜群に良くて、オーラがあるから、どう見てもお忍びコーデの芸能人。

 

 それでも、ジロジロと見られたが、声をかけられることはなかった。厳ついおじさんも一緒だったからね。

 

 帰りは車でおじさんに送ってもらった。境内から住居兼本殿にも行けるのだが、今回は本殿に直接つながる私道から行くことにした。大きい荷物もあるし、家に行くのにわざわざ境内を縦断するのも面倒くさい。ちなみに私道の中程にはでっかい鳥居があって、この鳥居から先は神域となっている。車で鳥居をくぐった瞬間、おじさんが外界から隔絶された感が強い神秘的な空気に驚いていた。ビクンと反応していたのが面白かった。

 

 そして、おじさんと別れてから、3つある部屋の一室でゴロゴロしているわけである。天女ちゃんは境内に散歩しに行った。

 

 ふあ~あ。明日仕事かあ。だるいなあ。行きたくないなあ。

 

 コンコンとドアが叩かれた。天女ちゃんだ。

 

 「あの、カミヒトさん。なんか御神木さんに変なのが刺さってたんですけど……」

 

 「変なの?」

 

 はて、何が刺さっているんだろう?

 

 







 「なにこれ……」


 昨日ぶりに境内を訪れて、立派な御神木の所まで来てみたら、御神木に深々と藁人形を貫いてぶっとい五寸釘が刺さっていた。藁人形の顔の部分には顔写真が貼ってある。可愛らしい女の子で高校生くらいだろうか。これはもしかすると丑の刻参りというやつだろうか……。


 「何なんでしょうか、これ」

 

 「呪いの儀式かな……?」

 

 「の、呪いですか……?」

 

 これ、いつからあるんだろう? 昨日はなかったと思う。とすると昨夜に誰かが丑の刻参りをしたのだろうか……。御神木に刺さっている面は参道とは反対側だから今朝は気づかなかったな。

 

 寄りにもよってうちの御神木になんてことするんだ。水晶さんによるとこの御神木は超越神社の中でも超重要な役割を果たしているらしい。中核といってもいい。結界を貼ってるのはこの御神木で、神正氣もちょっとずつ生成してるらしい。つまりガチのガチで力を持った御神木だ。


 そんなすごい御神木だから当然天誅を下す力を持っているだろう。震えるがいい、不届き者よ。今に天罰が下るだろう。


 ということで不届き者への天罰は御神木さんに任せて、僕はマイホームでまったりすることにした。


 『お待ちなさい』


 水晶さんがバイブった。振動は強めだ。


 『不届き者への天罰はカミヒト様が行うのです』


 いやっすよ。だって現代日本で丑の刻参りする頭のおかしいやつと対峙しなきゃいけないってことでしょ?


 『超越神社は御神木も含めてカミヒト様のものですから、守るのもカミヒト様です』


 ……やはり僕がやらないとだめか。


 『懲らしめてやりましょう』


 「頑張ってください! カミヒトさん」

 

 こうして水晶さんと天罰会議をすることになった。もう今日は何もしたくないんだけどなあ……。







 水晶さんと相談した結果、そんなにひどいことをしないで、怖がらせる程度にすることにした。超越神社内では初犯だという事と御神木は釘を刺されたくらいでは何のダメージもない事を考慮した結果である。僕も手荒なことはしたくないので、ちょっとした心霊現象を体験してもらうことにした。


 やり方は至ってシンプル。僕が幽体離脱をして幽霊のふりをして不届き者を追い払おうという作戦だ。先程、練習がてら幽体離脱をしてみた。境内では自由に飛び回れて、人から僕の姿を見えるようにしたり消したり出来る。加えて、暗視スコープのように暗闇でも視る事ができる神術も作る事ができた。神術は源となる神正氣があればなんでもできるみたいだ。さすがだ。


 ちなみに水晶さんによると超越神社では外より低燃費で神術が使えるらしい。ここが僕のホームであるから一番力が発揮できるというわけだ。


 懸念があるとすれば、不届き者が幽霊に扮した僕に驚かず、逃げない可能性だ。丑の刻参りなんか実行する位だから普通の精神構造はしていないだろう。もしそうなったらおじさんに丸投げしようと思う。霊管という組織ならどうにかしてくれそうだ。と言うか最初から丸投げしたい。


 それを水晶さんに言ったら、自助努力がうんぬんかんぬんと説教をされてしまった。さらに、丑の刻参りとは誰にも見られずに七日間、藁人形に釘を打たなければならないようで、呪いを失敗させるために、きちんとこの目で呪っている最中の現場を目撃しないといけないみたいだ。でも素人が呪いの真似事をしても成功しないんじゃないかと疑問に思ったが、呪術の素質があればできてしまうこともあるらしい。


 というわけで最大限努力しなければならなくなってしまったわけだ。無念。


 水晶さんとの打ち合わせも1時間ほどで終わった。丑の刻まではまだ時間がある。丑の刻とはネットで調べたら午前一時から三時らしい。やることもないので水晶さんに、煤子様やおばあさんやおじさんから流れてきた力について聞いてみた。


 『あれこそが神正氣の源となる力です。通常は信仰心を持った者の祈り等で集まりますが、信仰心がない者でもカミヒト様に対して深い感謝の念があれば、それが信仰心と同様の効果を生みます』


 そういえばそんな事言ってた気がする。なるほど、あれがそうなのか。心の中が暖かくなって、力がみなぎっている感じ。とても心地よかった。


 疑問が解消されたので後は丑の刻までダラダラと過ごそう。

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