神の光景
どこまでも続く畦道に、一人の老人。
どこを見ているのか、目は虚ろ。
老人の少し後ろの方では、ひっそりとカメラを構えている青年と、数人のそれを補助するスタッフらしき人たちが、じっと身動きもせず老人の方をじっと見つめていた。
やがて老人は空を見上げ、手に持っていた水筒を口元に運び、一口二口と飲んでいた。
その飲みっぷりは情緒に溢れ、見るものを惹き付けた。
数秒後、一人の男が、
「カット!」
と大声をあげた。
その瞬間に、老人の周りの張りつめた空気と、老人の表情が緩んだ。
その光景を見ていた私の肩の力は抜け、気が緩み、
おしっこを少しちびってしまった。
それでも私は、そのまま身動きをせず、
いつまでもこの何とも言えない空気感を味わっていたかった。
夕日が射す。
私の影が延びる。
黄昏ている私のところに、気がついたら老人が近づき、そして老人は言った。
「おっぱいは好きかね」
私は、涙を流しながら、元気よく、
「はい!」
と、言った。
涙がほとばしった。
凝り固まっていた何かが、
一気に解放されたような気分になり、私は思わず老人を抱き締めた。
そして、そのまま老人の胸の中で、私は永遠の眠りについた。
【今回のお題】
高い演技
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